考えよう やって良いこと 悪いこと −同級生のあいだで− (小学生高学年用) 作:神奈川県警察 小島久美子 絵:神奈川県警察 平野洋子 【 表紙 】 (子どもたちに語りかける。)  今日は、「やって良いこと、悪いこと。」について、皆さんと一緒に、勉強していきましょう。  これから、紙芝居をします。  話の途中で、皆さんに、   このようなとき、皆さんだったら、どのような気持ちになりますか。 とか、   このようなとき、皆さんだったら、どうしますか。 などと質問します。  皆さんは、良く話を聞きながら考え、手を挙げて答えてください。  それでは、「考えよう やって良いこと 悪いこと 同級生のあいだで」の始まり始まり。 【 場面 1】  ラレルちゃんは、元気に教室に入り、ヒガミちゃんたちに、 (元気な口調で) ラレル 「おはよう。」 と、挨拶をしました。  でも、ヒガミちゃんたちは、冷たい目でラレルちゃんを見たあと、返事もせずに、他の話をしています。  他の人も、ヒガミちゃんたちを気にして、気づかないふりをし、声をかけてくれません。  ラレルちゃんは、 (悲しそうに) ラレル 『今日も、誰も話をしてくれない。』 と、思いました。  もう、無視されることが、一週間も続いていますが、平気になったり、慣れたりすることはできません。  それよりも、悲しい気持ちが、どんどん大きくなっていきます。 【 場面 2 】  そのとき、カバウちゃんが近づいてきて、にっこり笑いながら、 (明るい口調で) カバウ 「おはよう。」 と、声をかけてくれました。 (驚いた口調で) ラレル 「おはよう。」 と、答えながらヒガミちゃんたちの方を見ると、カバウちゃんを睨みつけています。  ラレルちゃんは、思わず、 (心配そうな口調で) ラレル 「いいの?」 と、聞きました。自分に声をかけたことで、今度は、カバウちゃんが、いじめられてしまうと思ったからです。 【 場面 3 】 (優しく、次に文句を言うように) カバウ 「良いに決まっているじゃない。ラレルちゃんは、全然悪くないのに、みんな、挨拶もしないなんて、ひどいよ。それに、昨日は、机にマーガリン塗られていたし、その前は、椅子に画鋲が置いてあったし、ひどすぎるよ。」 (子どもたちに語りかける。) ◎ それでは、ここで、皆さんに質問します。   皆さんが、友だちに「おはよう。」と挨拶をしたとき、誰も返事をしてくれなかったら、どんな気持ちになるでしょうか。  1 腹がたつ。  2 悲しい。  3 何とも思わない。  4 その他の気持ち。   では、どれかに手を挙げて下さい。何回、手を挙げても良いです。  1 「腹がたつ。」という人。(挙手を求める。)  2 「悲しい。」という人。(挙手を求める。)  3 「何とも思わない。」という人。(挙手を求める。)  4 「その他の気持ち。」という人。 (挙手を求める。) ◎ (「4その他の気持ち。」に挙手した人がいた場合。)   では、どんな気持ちになるか発表してください。(2〜3人に考えを聞く。) ◎ ありがとうございます。(今、答えてくれたように)腹が立ったり、悲しい気持ちになったり、つらい気持ちになる人もいるでしょう。  では、どうして、こんなことになったのでしょうか。  話の続きを見てみましょう。 【 場面 4 】  ラレルちゃんが、いじめられるようになったのは、 (うれしそうな口調で) ラレル 「これ、お父さんが、お仕事でフランスに行ったお土産で買ってきてくれたんだ。かわいいでしょう。」 と、仲の良かったヒガミちゃんたちに、ストラップを見せたことがきっかけでした。 (いじわるな口調で) ヒガミ 「フランスのお土産だって。」 ヒガミちゃんが言うと、エガオちゃんも、 (頭にきたように) エガオ 「自慢しているよね。」  と、言いました。ピアノちゃんも (文句を言うように) ピアノ 「テストで百点をとると、わざと、みんなに見えるように置いているよ。」 と、言い出し、それからは、 (悪口を言うように) エガオ 「服とかも、新しいのを着てくると、直ぐに、何処で買ってもらったとか聞いていないのに、話しているよね。」 (いじわるな口調で) ヒガミ 「嫌な感じだよね。」 (いじわるな口調で) ピアノ 「威張りたいんだよね。」 と、ラレルちゃんの悪口を言い合いました。  そして、その日から、ラレルちゃんと仲の良かったヒガミちゃんたちのグループは、ラレルちゃんを無視するようになったのです。  そして、他のクラスメートも、同じように、ラレルちゃんと話をしなくなってしまったのです。 (子どもたちに語りかける。) ◎ それでは、ここで、皆さんに質問します。  先ほどの質問で、皆さんが、友だちに「おはよう。」と挨拶をしたとき、誰も返事をしてくれなかったら、○○○(「1腹がたつ。2悲しい。3何とも思わない。」のうち一番挙手の多かった回答)という気持ちになる人が多いことが分かりました。  では、理由があれば、無視をすることは、やっても良いでしょうか。それとも、やってはいけない悪いことでしょうか。  ・ 無視は、やっても良いと思う人。(挙手を求める。)  ・ 無視は、やってはいけない悪いことだと思う人。(挙手を求める。) ◎ ありがとうございます。みんな、自分が無視されて、○○○(上と同じ)という気持ちになるのは嫌です。自分がさたら嫌なことを他の人にするのはやめましょう。  では、この話のクラスメートはどうしていくのでしょう。続きを見てみましょう。 【 場面 5 】  アザガくんが、教室に入ってくると、カバウちゃんは声をかけました。 (心配な口調で) カバウ 「あっ、アザガくん。おはよう。今日も、肩パンをやられたの。」  肩パンというのは、ジャンケンで勝った人が負けた人の肩をパンチするという悪い遊びです。  アザガくんは、 (あいまいに) アザガ 「うーん。」  と、あいまいに返事をしましたが、カバウちゃんは、 (教えるように) カバウ 「嫌なときは、はっきり、『やらない。』って、断らないとダメだよ。」 と、言いました。アザガくんは、 (言い訳を言うように) アザガ 「言えないよ。言ったら、仲間はずれにされちゃうよ。」 と、言うので、カバウちゃんは、 (強い口調で) カバウ 「アザガくんは、ジャンケンに勝っても、パンチするのは嫌なんでしょう。いつも、仕方なく、肩に触っているだけじゃない。」 と、言いました。すると、アザガくんは、あわてて (あわてた様子で) アザガ 「パンチなんかしたら、何倍にもなって返ってきちゃうよ。」 と、答えました。 【 場面 6 】  カバウちゃんは、二人に向かって言いました。 (文句を言うように) カバウ 「この前も、アザガくんは、学校の帰り、ランドセルを六個も、持たされていたじゃない。嫌なことは『嫌。』って言わないとダメだよ。 (説得するように) 言えないなら、先生に相談しなよ。もっと、ひどいことをされちゃうよ。ラレルちゃんも、先生に相談したほうが良いよ。」  でも、ラレルちゃんは、 (優柔不断な様子で) ラレル 「マーガリンとか、画鋲とか、誰がやったか分からないし、わざとじゃないかもしれないから、先生には言えないよ。」 と、言い、アザガも、 (きっぱり断るように) アザガ 「言いつけるみたいなことをしたら、もっと、いじめられちゃうよ。」 と、言いました。それでも、カバウちゃんは、二人に言いました。 (説明するように) カバウ 「先生に注意してもらって、みんなに、『自分たちは間違っていた。』って、早く気付かせることだって、大事なことなんだよ。」 (子どもたちに語りかける。) ◎ それでは、ここで、皆さんに質問します。  嫌なことがあったり、やめて欲しいことをされているとき、皆さんだったらどうしますか。答えてくれる人は、手を挙げてください。 (2〜3人に考えを聞く。) (※手が挙がらないときは、次の質問をする。) ◎ では、もう一問、質問します。  話のように、嫌なことがあったり、やめて欲しいことをされているとき、先生やおうちの人など、まわりの大人に相談したほうが良いでしょうか。それとも、相談はしないほうが良いでしょうか。  ・ 相談したほうが良いと思う人。(挙手を求める。)  ・ 相談しないほうが良いと思う人。(挙手を求める。) ◎ ありがとうございます。  先生やおうちの人など、まわりの大人に相談することは、良いことです。  自分や友だち同士で解決できないときは、大人に頼って、悪いことを正してもらい、みんなが、安全に楽しく過ごせるようにしていくことは、とても大切なことだということを覚えておいてください。  では、話の続きを見ていきましょう。 【 場面 7 】  ヤリスギくんが、カバウちゃんたちの話に割り込んできました。 (文句を言うように) ヤリスギ 「カバウちゃん、なに、でしゃばっているんだよ。 (強引な口調で)アザガくんだって、肩パン、楽しいんだよ。なっ。」 と、アザガくんの顔を見ました。アザガくんは、下を向いて、何も言いません。  ヒガミちゃん、エガオちゃん、ピアノちゃんも言いました。 (いじわるな口調で) ヒガミ 「カバウちゃんは、いつでも、一人で良い子ぶるんだから。」 (嫌味な感じで) ピアノ 「カバウちゃんって、『正義の味方』みたいになるの、好きだよね。」 (嫌味な感じで) エガオ 「そういうのって、みんなに嫌われるよ。」  ラレルちゃんは、ヒガミちゃんたちに、自分まで文句を言われたくないと思い、下を向いたアザガくんを見て黙っています。  その日、カバウちゃんは、誰からも話をしてもらえませんでした。 【 場面 8 】  カバウちゃんは、家に帰り、お母さんの顔を見ると、大粒の涙があふれてきました。お母さんに、学校での出来事を話すと、お母さんは言いました。 (やさしい口調で) お母さん 「カバウは、良いことをしたわね。ラレルちゃんとアザガくんは、うれしかったと思うわ。」  カバウちゃんは、涙を流しながら、 (訴えるように) カバウ 「ラレルちゃんは一人ぼっちだし、アザガくんは、肩に大きなあざができているの。二人とも、すごくかわいそうなのに・・・」 と、言いました。お母さんは、 (やさしく教えるように) お母さん 「カバウみたいに、『お友だちを無視するのは嫌だ。』と思っている人は、他にもいるはずよ。 それに、悪口を聞いたり、暴力を見るのが嫌な人もいると思うわ。だから、他のお友だちに『自分がされたら嫌なことをするのはよそう。』って話をしてみたら。」 と、アドバイスをしました。でも、カバウちゃんは、涙をぬぐいながら言いました。 (悲しそうに) カバウ 「誰も、私の話なんか、聞いてくれないかもしれない。今日だって、誰も、私と話をしてくれなかったんだよ。私、明日からは、一人ぼっちになってしまうかもしれないの。」  お母さんは、言いました。 (明るく元気な口調で) お母さん 「お母さんは、ラレルちゃんやアザガくんを助けようとしているカバウを、とっても立派で、偉いと思うわ。良いことをしているのだから、自信を持って、カバウらしく笑顔で元気に過ごしましょう。 必ず、分かってくれる人はいるはずよ。」  カバウちゃんは、お母さんの笑顔を見ていたら、 (うれしそうに) カバウ 『誰も分かってくれなくても、お母さんだけは、私の味方だ。』 と、分かり、少しだけ勇気が出てきました。 【 場面 9 】  お母さんは、カバウちゃんの頭をなでながら、考えています。 (心配そうな口調で) お母さん 『アザガくんの肩に大きなあざができているって言っていたけど、大丈夫かしら。心配だわ。カバウは、今、泣いているから、明日、もう一度、よく話を聞こう。そして、必要なら、アザガくんのお母さんに教えてあげるか、学校の先生に連絡しよう。』  そう、思いました。 (子どもたちに語りかける。) ◎ それでは、ここで皆さんに質問します。  アザガくんは、肩パンという遊びで、肩にあざができてしまいました。  アザガくんは、本当は、肩パン遊びが嫌なのですが、相手に「嫌だ。」、「やらない。」とは、はっきり伝えていません。  この場合、「嫌だ。」と言っていないし、遊びなので、肩にあざができたことは、仕方がないことで、あざを作った肩パン遊びの相手は、悪くないでしょうか。それとも、肩パン遊びの相手は、悪いことをしたことになるでしようか。  ・ 肩パン遊びの相手は、悪くないと思う人。(挙手を求める。)  ・ 肩パン遊びの相手は、悪いと思う人。(挙手を求める。) ◎ ありがとうございます。  答えは、「悪いことをした。」ということになります。  遊びとはいえ、怪我をさせるほどのパンチは、許される行為ではありません。 ◎ そして、はっきり「嫌だ。」、「やらない。」と断らないからと、相手が「肩パン遊びはしたくない。」と思っていることを知りながら、遊び続けた場合、犯罪になることがあります。  その理由は、肩パンが暴力だからです。  自分は遊びのつもりでも、暴力を振るえば、犯罪になることがあるのです。 ◎ 「遊びでやった。」とか、「ふざけてやった。」という言い訳で、許される行為かどうかを考えて行動しないといけませんね。  では、話の続きをみていきましょう。 【 場面 10 】  次の日、カバウちゃんが学校に行くと、ラレルちゃんが駆け寄ってきて、 (明るくうれしそうに) ラレル 「カバウちゃん、おはよう。昨日は、ありがとう。」 と、言いました。アザガくんも近くに来て、 (明るくキッパリと) アザガ 「カバウちゃん、おはよう。僕、これからは、勇気を出して、嫌なことは『嫌。』って言うよ。」 と、言いました。ラレルちゃんは言いました。 (説明するように) ラレル 「昨日、アザガくんと話し合って、今までのことを先生に話したの。」 アザガくんが続けました。 (うれしそうに) アザガ 「そうなんだ。先生に肩のあざを見せたら、『こんなになるまで、我慢していたの。辛かったね。先生に相談してくれてありがとう。』って、言ってくれたんだ。」 二人は、カバウちゃんに、昨日の職員室でのことをうれしそうに説明しました。 (うれしそうに) ラレル 「先生は、『ラルレも、アザガくんも、他のみんなも、楽しく学校生活を送るためには、どうしたら良いか、一緒に考えていこうね。』って、言ってくれたの。」 (照れた様子で) アザガ 「先生に言ったら、いじめがひどくなるなんて、考え過ぎだと思ったよ。」 (感謝の気持ちをこめて) ラレル 「カバウちゃんの言うとおり、先生に相談して、ほんとうに良かったって思ったの。昨日は、いろいろとありがとう。」  カバウちゃんは、『今日から、一人ぼっちになってしまう。』と心配していたので、二人に話しかけられたとき、うれしい気持ちで一杯でした。  そして、ラレルちゃんもアザガ君も、先生に相談したことを喜んでいて、自分に感謝してくれるので、胸が一杯になりました。 【 場面 11 】  先生が教室に入ってきました。 (元気にやさしく) 先生 「おはようございます。」 (元気に) みんな 「おはようございます。」  挨拶が終ると、さっそく、先生が言いました。 (説明するように) 先生 「それでは、授業をはじめます。今日は、自分のことについて考えてみましょう。その前に、まず、隣に座っている友だちの良いところを見つけてください。」 (子どもたちに語りかける。) ◎ それでは、皆さんもやってみましょう。  今、隣に座っている友だちの良いところを見つけてみましょう。  (間を置く。)  見つかりましたか。  では、先生は、次にどうするのでしょう。  話の続きを見ていきましょう。  先生は、次に (説明するように) 先生 「では、今、隣の友だちの良いところを見つけたように、今度は、自分の良いところを見つけてみましょう。自分の大好きなところ、大切にしてきたこと、身につけてきたこと、頑張ってきたことなど、自分の良いところを見つけてください。見つかったら、発表してください。」 (子どもたちに語りかける。) ◎ では、皆さんもやってみましょう。  今度は、自分の大好きなところ、大切にしてきたこと、身につけてきたこと、頑張ってきたことなど、自分の良いところを見つけてください。  (少し、間を置く。)  発表するのは、少し恥ずかしいかもしれませんが、皆さんは、それぞれ、自分の大好きなところや頑張ってきたことなど、いっぱい、見つかったと思います。  では、紙芝居のみんなは、どんな良いところを発表するのでしょうか。話の続きを見てみましょう。 【 場面 12 】  ヒガミちゃんが言いました。 (堂々とした感じで) ヒガミ 「私の良いところは、リーダーシップがとれるところです。」  クラスのみんなは、うなづきました。  ヤリスギくんが言いました。 (元気に) ヤリスギ 「僕は、いつも元気一杯なことが良いところです。 (恥ずかしがりながら)  ピアノちゃんが言いました。 ピアノ 「私は、頑張ってきたことで、ピアノが上手に弾けるようになりました。」  ヤリスギくんが、 (ひやかすように) ヤリスギ 「一日、二時間も練習しているんだよな。」 と、ひやかすように言うと、先生は言いました。 (褒めるように) 先生 「これまで、一生懸命に頑張ってきた成果で、素晴らしいことですね。(説明するように)みなさんも、友だちの頑張りを真似ることで、自分の素敵なところ、頑張ってきたことを増やしていくことができます。たとえば、『自分は、本が好きだから、二時間、続けて読んでみよう。』とか・・・」  先生の話を聞くと、ヤリスギくんが、 (質問する感じで) ヤリスギ 「そういう自慢するような話は、悪いことだと思っていました。」 と、言いました。先生は、 (説明するように) 先生 「先生は、みんなの良いところ、大切に思っていること、頑張ってきたことを、他の友だちにも知って欲しいんです。そして、友だちの素敵なところを一緒に喜んだり、認めたりできる、優しい心、広い心を持って欲しいと思っています。」 【 場面 13 】  先生の話を聞くと、次々に手が挙がり、剣道が得意なこと、野球のボールを遠くまで投げられること、絵が上手なこと、電車の駅名を沢山言えることなどを発表しました。  エガオちゃんが、 (照れた様子で) エガオ 「私は、自分の大好きなところですが、それは笑顔です。」 と、言うと、先生は、うれしそうに、 (褒めるように) 先生 「先生も、エガオちゃんのにこやかな顔は、いつも素敵だと思っています。」 と、言いました。もう、誰も、ひやかしたり、からかったりはしません。  アザガくんも発表しました。 (うれしそうに) アザガ 「僕は、星が大好きなので、星座のことに詳しいです。」  カバウちゃんも、手を挙げ、 (明るく) カバウ 「私は、誰にでも優しくできる自分が、大好きです。」 と、発表しました。ラレルちゃんも、 (恥ずかしそうに) ラレル 「私は、素直なところが良いところだと思います。」 と、発表しました。  先生は、どの答えにも、『素敵ですね。』、『良いことですね。』、『頑張ってきましたね。』などと褒めてくれました。そして、 (説明するように) 先生 「ここにいる、全員が、それぞれ、違う素晴らしさを持っていることが分かりました。みなさん。みなさんは、他の人とは違う自分自身を大好きになってください。そして、自分に自信と誇りを持ち、生活していきましょう。それから、自分とは違う、友だちの素晴らしさを素直に認めることができる心も、とても大切です。」 【 場面 14 】  先生の話を聞くと、ピアノちゃんが、困った顔をして質問しました。 (困った様子で) ピアノ 「私は、いつもお母さんから、『何でも、一番になれるように頑張るのよ。』って言われています。だから、テストの点数とかで負けると悔しいので、一緒に喜んだり、「偉いね。」なんて、認める気持ちにはなれません。それは、間違えているのですか。」 (子どもたちに語りかける。) ◎ それでは、ここで皆さんに質問します。  友だちよりテストの点数が低かったときや、運動で負けたとき、悔しいと思うことは、良いことでしょうか。悪いことでしょうか。では、どちらかに手を上げてください。  ・ 悔しいと思うことは、良いことだと思う人。(挙手を求める。)  ・ 悔しいと思うことは、悪いことだと思う人。(挙手を求める。)  ありがとうございます。  先生は、どのように説明するのでしょうか。  話の続きを見ていきましょう。 【 場面 15 】  先生は、優しい目でピアノちゃんを見ながら、話しました。 (説明するように) 先生 「負けたことを悔しく思う気持ちや、次は負けないように頑張る、そういうことは、とても大切で良いことです。ただし、悔しいと思った気持ちが、その人の悪口や無視、暴力を振るうことなどになってしまえば、それは悪いことですね。誰でも、自分が、悪口を言われたり、無視をされたり、暴力を振るわれたら嫌ですよね。自分がされたら嫌なことは、他の人にしない、『思いやりの心』を持つことは、とても大切なことです。」  ピアノちゃんは、まだ、よく分からず、先生に質問しました。 (納得できない様子で) ピアノ 「では、やっぱり『すごいね。』とか『偉いね。』って、褒めるべきなのですか。」  先生は言いました。 (説明するように) 先生 「悔しくて、褒める気持ちになれないこともあります。そういうときでも、『頑張ったんだな。』と、友だちを認めましょう。 (文字を示す。「まわりの人の気持ちを考えて行動する、思いやりの心を持つ。」) 頑張った人の気持ちなど、『まわりの人の気持ちを考えて行動する、思いやりの心』を持てば、友だちを認めることは、難しくありません。そして、次は、自分も負けないように頑張りましょう。」  ピアノちゃんも、みんなも、うなづきました。 【 場面 16 】  先生が言いました。 (説明するように) 先生 「ただ、皆さんは、友だちの行動や言葉から、『嫌だな。』とか、『やめて欲しい。』という気持ちになることもあると思います。たとえば・・・」  そこまで言うと、ヤリスギくんが、ニヤニヤしながら、ヒガミちゃんを見て、 (からかうように) ヤリスギ 「たとえば、友だちの悪口を言うとか・・・」 と、言いました。ヒガミちゃんは、ヤリスギくんを睨みながら、言いました。 (怒った口調で) ヒガミ 「プロレスごっこの相手をさせられることも、嫌な人はいると思います。」  先生は、みんなに質問しました。 (質問する口調で) 先生 「今、言ってくれたように、『嫌だな。』とか、『やめて欲しい。』という気持ちになったとき、皆さんは、どうしますか。」 (子どもたちに語りかける。) ◎ それでは、ここで、皆さんに質問します。  友だちに、やめて欲しいことをされたとき、皆さんだったらどうしますか。  1 「やめて。」と言う。  2 我慢する。  3 先生やおうちの人など、大人に相談する。  4 その他の方法をとる。  何回、手を挙げても良いです。一回以上、手を挙げてください。  1 「やめて。」と言う人。(挙手を求める。)  2 「我慢する。」という人。(挙手を求める。)  3 「先生やおうちの人など、大人に相談する。」という人。(挙手を求める。)  4 「その他の方法をとる。」という人。(挙手を求める。) ◎ (「4その他の方法をとる。」に挙手した人がいた場合。)  では、どんな方法をとるか発表してください。(2〜3人に考えを聞く。) ◎ ありがとうございます。  紙芝居のみんなは、どんな意見を出すのでしょうか。  話の続きを見ていきましょう。 【 場面 17 】  ヤリスギくんが言いました。 (真面目な口調で) ヤリスギ 「悪口を言ったりしないで、嫌なところを本人に教えてあげる。」  ヒガミちゃんは、ラレルちゃんが、ストラップの自慢をしたことを思い出しながら言いました。 (考えを言うように) ヒガミ 「自分が『悪いことをしている』って、思っていないかもしれないから、教えるだけじゃなくて、話し合うことも必要だと思います。」 【 場面 18 】  アザガくんは、肩パンが嫌だと思っていることを考えながら言いました。 (困ったように) アザガ 「直して欲しいとか、やめて欲しいと思っても、人の悪いところを言うのは、勇気がいるので、なかなか言えないと思います。」  ラレルちゃんは、自分が無視されていることを考えながら言いました。 (訴えるように) ラレル 「でも、言葉で伝えないと、どうして、嫌われているのか、どうしたら、仲良くできるのか分からないから、話をすることは大切だと思います。」  カバウちゃんが、無視や、肩パンをしている人たちの顔を見ながら言いました。 (真剣な口調で) カバウ 「やめて欲しいことや、嫌なことを言われたときでも、怒ったりしないで、素直に聞いて、反省することが大切だと思います。」 【 場面 19 】  ピアノちゃんは、先生が、『まわりの人の気持ちを考えて行動する、思いやりの心』と説明した話を思い出しながら言いました。 (模範生のように) ピアノ 「誰にでも、欠点はあるから、許してあげる『思いやりの心』が大切です。」  カバウちゃんは、ラレルちゃんや自分を無視したピアノちゃんが、『思いやりの心が大切』と言うので、納得できずに発言しました。 (怒った口調で) カバウ 「許すと言っても、わざと悪いことをしていれば、許すことはできないと思います。」  すると、ヤリスギくんが言いました。 (大人ぶった口調で) ヤリスギ 「まずは、悪いことはしない、それから、友だちが悪いことをしていても、一緒になってやらないことが大事っていうことだね。」 (文字を示す。「悪いことはしない…」)  アザガくんは、ヤリスギくんに『自分に肩パンをしていることは、悪いことだった。』と気づいて欲しく、言いました。 (はっきり強い口調で) アザガ 「それより前に、やって良いことか悪いことか、ちゃんと判断できないと、だめだと思います。」 (文字を示す。「やって良いことか…」)  先生が言いました。 (説明するように) 先生 「今の意見は、みんなが楽しく学校生活を送るために、大切なことですね。  ・ やって良いことか、悪いことか、判断する力を持つこと。  ・ 悪いことはしない、悪いことに流されない、強い意思を持つこと。  ・ まわりの人の気持ちを考えて行動する、思いやりの心を持つこと。 素晴らしい意見をありがとうございます。」 ヤリスギ 「えっへん。」  ヤリスギくんが、自慢げな顔をして、咳払いをしました。 (子どもたちに語りかける。) ◎ 皆さん、今、先生が話したように、 (三枚の文字を指しながら説明する。)  ・ アザガくんが発表した「やって良いことか、悪いことか、判断する力を持つこと。」  ・ ヤリスギくんが発表した「悪いことはしない、悪いことに流されない、強い意思を持つこと。」  ・ ピアノちゃんが発表した「まわりの人の気持ちを考えて行動する、思いやりの心を持つこと。」  この三つのことは、皆さんが、楽しく、安全に学校生活を送るため、とても大切なことです。是非、身につけてください。 【 場面 20 】  先生が、 (質問する口調で) 先生 「それでは、『嫌だな。』とか、『やめて欲しい。』という気持ちになったときは、どうすれば良いかをまとめましょう。」 と、言うと、ラレルちゃんが言いました。 (真面目な口調で) ラレル 「話をして気持ちを伝えたり、相手の気持ちを聞いて話し合うことです。」 ラレルちゃんの言葉に付け加えるよう、カバウちゃんが、 (真面目な口調で) カバウ 「そして、自分たちだけで解決できないときは、先生やおうちの人に相談することも大切です。」 と、言いました。 【 場面 21 】  先生は、二人の発言を聞き、真剣な顔をして言いました。 (説明するように) 先生 「そのとおりです。ここで、大事なことを皆さんに話します。自分は、『ふざけただけ』、『正直な気持ちを言っただけ』のつもりでも、友だちのからだや心を傷つける暴力や悪口などは、警察に捕まる犯罪になることがあります。お金や物を要求する行為も同じです。  犯罪になるとか、ならないというだけでなく、暴力や悪口、それから無視などをされた人の心は、とても深く傷ついてしまうことがあります。自分がされたら嫌なことは、他の人にしてはいけません。」 (子どもたちに語りかける。) ◎ 皆さん、今、先生は、暴力や悪口などは、警察に捕まる犯罪になることがあると説明していましたね。  刑法では、他人に暴力を振るえば暴行罪、暴力を振るった結果、怪我をさせたら傷害罪に、また、物を盗めば窃盗罪、人を怖がらせて物を取り上げれば恐喝罪などになると定められています。  また、悪口は、名誉毀損罪や侮辱罪になることがあり、暴力を振るわなくても、いじめが原因で心の病気にさせたら、傷害罪になることがあります。 ◎ それでは、ここで、皆さんに質問します。  犯罪にならなければ、悪口や無視、暴力は、やっても良いでしょうか。それとも、やってはいけないでしょうか。  ・ やっても良いと思う人。(挙手を求める。)  ・ やってはいけないと思う人。(挙手を求める。) ◎ ありがとうございます。  犯罪になる、ならないに関係なく、人の心を傷つけてしまうような行為は、絶対にしてはいけません。  また、友だちはふざけているつもりでも、『自分の心は、傷ついている。』ということも、あると思います。 ◎ 友だちの中から、犯罪者を出さないためにも、『嫌だな。』とか、『やめて欲しい。』という気持ちになったときは、話し合ったり、先生やおうちの人など、大人に相談をして、問題が大きくならないうちに解決をしていきましょう。 【 場面 22 】  授業が終ると、ヒガミちゃん、エガオちゃん、ピアノちゃんが、ラレルちゃんとカバウちゃんのところに行きました。そして、まず、ヒガミちゃんが言いました。 (反省した様子で) ヒガミ 「ラレルちゃん、無視をしたり、ひどいことをして、ごめんね。お土産のストラップを見せびらかしているみたいで、嫌だったの。きちんと話をして、気持ちを伝えるべきだった。  カバウちゃんのことも、無視して、本当にごめんね。カバウちゃんは、良いことをしていたのに・・・」  ピアノちゃんも言いました。 (申し訳なさそうに) ピアノ 「私も、頑張っても、なかなかテストで百点を取れないのに、ラレルちゃんは、いつも良い点数で、その答案用紙が見えると、ラレルちゃんが自慢しているように思えて、悪口を言ってしまったの。ごめんね。」  エガオちゃんも、二人の話に頷きながら、 (素直な口調で) エガオ 「辛い思いをさせて、ごめんね。」  と、謝りました。ラレルちゃんは、三人を見ながら、 (驚き反省した口調で) ラレル 「そうだったんだ。私、みんなの気持ちに、全然気づいていなかった。私こそ、嫌な気持ちにさせてごめんね。これからは、気をつけるね。」 と、言いました。カバウちゃんも、ニコニコしながら、みんなに、 (明るくうれしそうに) カバウ 「これからは、仲良くしようね。」 と、言いました。 【 場面 23 】  アザガくんは、ヤリスギくんのところに行き、真剣な顔をして言いました。 (はっきりした口調で) アザガ 「僕は、これからは、肩パン遊びはしないよ。痛いから、嫌なんだ。」  ヤリスギ君は、アザガ君を見ながら、反省した様子で、 (反省した様子で) ヤリスギ 「遊びだと思ってやっていたけど、アザガくんは嫌だったんだよね。なんとなく、分かってはいたんだ。はっきり言ってくれて、ありがとう。  今まで、調子に乗って、思いっきり叩いていたから、犯罪者になっちゃうところだったよ。怪我、していない。」 と、聞きました。アザガくんは、ヤリスギくんが分かってくれたので、ホッとして、 (優しく明るく) アザガ 「肩にあざができたけど、それは、もう良いよ。」 と、言いました。ヤリスギ君は、申し訳なさそうに、 (反省した様子で) ヤリスギ 「ごめんね。これからは、ジャンケンで負けても、ランドセルを沢山持たせたりはしないよ。」 と、謝りました。 【 場面 24 】  そのとき、アザガ君のところに、ホシズキ君が来て、言いました。 (うれしそうに) ホシズキ 「アザガくん、星座のこと、詳しいんだね。僕も、星、大好きなんだ。今日、一緒に帰ろうよ。」  アザガ君は、うれしそうに (楽しそうに) アザガ 「うん。一緒に帰ろう。今度、僕の家で一緒に遊ばない。」 と、ホシズキ君を誘いました。ヤリスギ君は、その会話を聞き、 (確認するように) ヤリスギ 「アザガくん、一緒に帰ったり遊んだりしなくても、ずっと、友だちだからな。僕のこと、無視するなよ。」 と、言うと、アザガ君は、 (明るく元気に) アザガ 「あたりまえじゃないか。ヤリスギくんこそ、挨拶したら、ちゃんと返してくれよ。」 と、言い、二人は笑顔をかわしました。 【 まとめ 】 (子どもたちに語りかける。) ◎ ここまで、紙芝居を見ながら、悪口や無視、暴力について、考えてきました。 ◎ 生活を送る中で、嫌なことや、やめて欲しいことがあったときは、話をして、相手に気持ちを伝えたり、相手の気持ちを聞いて話し合うことが大切だということが、分かりましたか。  頭にきたときなども、悪口や無視、暴力は使わず、また、黙って我慢をするのではなく、相手に気持ちを伝えていきましょう。  そして、皆さんだけで問題を解決できないときは、必ず、先生やおうちの人など、まわりの大人に相談して、犯罪になる前に解決していきましょう。 ◎ 話の中にもあったとおり、皆さんは、他の人とは違う良いところを持っています。  自分に、自信と誇りを持ちましょう。ここにいる全員が、「かけがえのない、大切な存在である。」ということを忘れないでください。  そして、自分と同じように、友だちの素晴らしさを認めていきましょう。 ◎ 皆さんが、楽しく学校生活を送るために大切な三つのこと  ・ やって良いことか、悪いことか、判断する力を持つこと。  ・ 悪いことはしない、悪いことに流されない、強い意思を持つこと。  ・ まわりの人の気持ちを考えて行動する、思いやりの心を持つこと。  これは、大人になっても大切なことです。しっかり、身につけていきましょう。  では、みんなで、この三つのことを声を合わせて読んでみましょう。 (指導者が読み上げた後、子どもたちが読む。)  ・ やって良いことか、悪いことか、判断する力を持つ。  ・ 悪いことはしない、悪いことに流されない、強い意思を持つ。  ・ まわりの人の気持ちを考えて行動する、思いやりの心を持つ。  ありがとうございます。  「考える力」、「意思の強さ」、「思いやりの心」、この三つを身につけ、いつも正しい行動がとれ、他の人に優しくできる、素敵なお兄さん、お姉さんになってください。 【 おしまい 】 (子どもたちに語りかける。) ◎ それでは、これで「考えよう。やって良いこと 悪いこと」の勉強をおわりにします。 おしまい