更新日:
2024年03月12日
犯罪による収益の移転防止に関する法律(以下「犯罪収益移転防止法」といいます。)に基づき、貴金属等の売買を行う古物商及び質屋の皆さんには、疑わしい取引の届出義務等が課せられます。
1 対象となる古物商及び質屋
犯罪収益移転防止法の対象となるのは、古物である貴金属等の売買の業務を行う古物商及び流質物である貴金属等の売却を行う質屋が対象となります。
2 貴金属等とは
犯罪収益移転防止法で対象となる「貴金属等」とは以下の物をいいます。
(1) 金、白金、銀及びこれらの合金(貴金属)
(2) ダイヤモンドその他の貴石、半貴石及び真珠(宝石)
(3) (1)及び(2)の製品
3 特定事業者とは
犯罪収益移転防止法では、古物商及び質屋が上記の「貴金属等」の売買を業として取り扱う場合に、特定事業者(以下「特定古物商等」という。)として指定しています。
4 特定古物商等の義務(買受け時、売却時対象)
(1)取引時確認義務
特定古物商等は、その代金の額が200万円を超える貴金属等の売買契約の締結を行うに際しては、本人特定事項(個人である場合は氏名、住所及び生年月日、法人である場合は名称及び本店又は主たる事務所の所在地)、取引を行う目的、職業(法人にあっては事業内容)及び法人の実質的支配者がある場合はその本人特定事項を確認する必要があります。
ア 個人の場合の確認書類
運転免許証、住民基本台帳カード(氏名、住居、生年月日の記載があるもの)、健康保険証、国民年金手帳、旅券、在留カード等
イ 法人の場合の確認書類
登記事項証明書、印鑑登録証明書(当該法人の名称及び本店又は主たる事務所の所在地の記載があるもの)等
(2)ハイリスク取引時の確認
なりすましの疑いがある取引等をハイリスク取引として、上記(1)の本人特定事項等の確認をより厳格に行い、200万円を超える取引である場合には、顧客等の資産及び収入の状況を源泉徴収票、預貯金通帳、貸借対照表、損益計算書等により確認しなければなりません。
(3)確認記録の作成義務等
特定古物商等は、上記(1)又は(2)の確認を行った場合には、直ちに当該確認に係る事項、確認のためにとった措置等に関する記録を作成し、7年間保存しなければなりません。
ア 確認記録の作成方法
文書、電磁的記録又はマイクロフィルムを用いて作成
イ 確認記録の記録事項
取引時確認を行った者の氏名、確認記録の作成者の氏名、取引時確認を行った取引の種類、本人特定事項の確認を行った方法等
(4)取引記録等の作成義務等
特定古物商等は、200万円を超える現金取引を行った場合には、直ちにその取引に関する記録を作成し、7年間保存しなければなりません。
ア 取引記録等の作成方法
文書、電磁的記録又はマイクロフィルムを用いて作成
イ 取引記録の記録事項
口座番号その他の顧客等の確認記録を検索するための事項(確認記録がない場合にあっては、氏名その他の顧客等又は取引等を特定するに足りる事項)、取引の日付等
(5)疑わしい取引の届出等
ア 特定古物商等は、「古物商及び質屋(宝石・貴金属等取扱事業者)における疑わしい取引の参考事例(ガイドライン)」等に該当する場合、
又は、
- 神奈川県公安委員会(各警察署生活安全(第一)課)
に届出を行わなければなりません。
疑わしい取引の届出内容
特定古物商等が、疑わしい取引の届出を行う際に必要な事項は以下のとおりです。
- 届出を行う特定事業者の名称及び所在地
- 届出の対象となる取引が発生した年月日及び場所
- 対象取引が発生した業務の内容
- 対象取引に係る財産の内容
- 特定事業者において知り得た対象取引に係る取引時確認に係る事項
- 取引の届出を行う理由
イ 特定古物商等は、国際連合安全保障理事会決議等に基づきタリバーン関係者等のテロリストを定めた外務省告示に掲載されている個人及び団体との関係が疑われる取引については、疑わしい取引として上記届出を行うようお願いします。同告示に掲載されている個人及び団体のリストについては、警察庁刑事局組織犯罪対策部犯罪収益移転防止管理官ホームページ中の「疑わしい取引の届出に関する要請など」(https://www.npa.go.jp/sosikihanzai/jafic/index_g.htm )に掲載されていますので確認をお願いします。
なお、当該届出は、犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則(第22条関係)により、届出の様式が定められています。
5 これらの義務に違反した場合
これらの義務に違反すると、神奈川県公安委員会は、是正命令を発することができます。
この是正命令に違反した場合は、2年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処せられ、又はこれを併科されることとなります。
詳しくは、
「警察庁 刑事局 組織犯罪対策部 組織犯罪対策第一課 犯罪収益移転防止対策室」のホームページ(https://www.npa.go.jp/sosikihanzai/jafic/index.htm)
を参照してください。
問い合わせ先 | 神奈川県警察本部生活安全総務課営業第一係 045−211−1212(代表) |
---|
古物商及び質屋(宝石・貴金属等取扱事業者)における疑わしい取引の参考事例(ガイドライン)
1 全般的な注意事項
2から4までの事例は、事業者が「犯罪による収益の移転防止に関する法律」第8条に規定する疑わしい取引の届出義務を履行するに当たり、疑わしい取引に該当する可能性のある取引として特に注意を払うべき取引の類型を例示したものであり、個別具体的な取引が疑わしい取引に該当するか否かについては、顧客の属性、取引時の状況その他事業者の保有している当該取引に係る具体的な情報を総合的に勘案して事業者において判断する必要があります。
したがって、これらの事例は、事業者が日常の取引の過程で疑わしい取引を発見又は抽出する際の参考となるものですが、これらの事例に形式的に合致するものがすべて疑わしい取引に該当するものではない一方、これに該当しない取引であっても、事業者が疑わしい取引に該当すると判断したものが届出の対象となることに注意する必要があります。
2 顧客からの買取り時に着目した事例
(1) 同一人物が、短期間のうちに多数の宝石・貴金属等の売却を行う場合
(2) 同一人物が、短期間のうちに同一種類の宝石・貴金属等の売却を繰り返す場合
(3) 顧客の収入、資産、取引を行う目的、職業等に見合わない高額の宝石・貴金属等の売却を行う場合
(4) マネー・ローンダリング対策に非協力的な国・地域又は不正薬物の仕出国・地域に拠点を置く者が宝石・貴金属等の売却を行う場合
(5) 売却する宝石・貴金属等が顧客の所有物であることに疑いがある場合(例えば、男性が女性物の宝石・貴金属等を多数持ち込む場合)
(6) 売却することを急ぎ、市場価格を大きく下回る価格での売却でもいとわない場合
(7) 多数の店舗において宝石・貴金属等を売却し、又は売却しようとしていることがうかがい知れる言動がある場合
3 顧客に対する売却時に着目した事例
(1) 多額の現金により購入する場合
(2) 1回当たりの購入額が少額であっても頻繁に購入を行うことにより、結果として多額の購入となる場合
(3) 顧客の収入、資産等に見合わない多額の購入を行う場合
(4) 数人で同時に来店し、別々の担当者に多額の現金取引を依頼する場合
(5) 短期間に多数の宝石・貴金属等を購入するにもかかわらず、各々のデザイン等に対してほとんど関心を示さない場合
4 その他の事例
(1) 取引時確認の際に顧客が提示した身分証明書等が偽造である疑いがある場合
(2) 暴力団員、暴力団関係者等が取引に関わる場合
(3) 顧客が取引の秘密を不自然に強調する場合及び届出を行わないように依頼、強要、買収等を図った場合
(4) 法人の実態がないとの疑いが生じた当該法人の関係者が取引に関わっている場合又は本人確認書類等に記載された本人特定事項(名称、所在地等)に虚偽の疑いがある場合
(5) 法人である顧客の実質的支配者その他の真の受益者がマネー・ローンダリングに関係している可能性がある場合
(6) 自己のために活動しているか否かにつき疑いがあるため、真の所有者の確認を求められたにもかかわらず、その説明や資料提出を拒む場合
(7) 自社従業員の知識、経験等から見て、取引の態様が不自然な場合又は顧客の態度、動向等が不自然な場合
(8) 犯罪収益移転防止管理官(※)その他の公的機関等から、犯罪収益に関係している可能性があるとして照会や通報があった取引を行う場合
(※) 警察庁刑事局組織犯罪対策部犯罪収益移転防止管理官(JAFIC)
届出先 | 総務省の電子政府窓口(https://shinsei.e-gov.go.jp) 又は 各警察署生活安全課 |
---|
警察庁ウェブサイト「古物営業・質屋営業について」に、特定古物商等に関する情報が掲載されていますので、詳しくは
「警察庁 生活安全局 古物営業・質屋営業について」のホームページ
(https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/kobutsu/index.html)
を参照してください。
情報発信元
神奈川県警察本部 生活安全部生活安全総務課
電話:045-211-1212(代表)