あいさつ 自己紹介 みなさんには夢はありますか? スポーツ選手やパン屋さん、学校の先生など。 それぞれいろんな夢を持っていると思います。 みなさんは大きくなったらどんなことをしたいですか? 薬物の乱用のお話は、今みなさんが持っている将来の夢をダメにしてしまう、とっても怖いものについてです。 今日は、この薬物乱用をするとどうなってしまうのかついて、みなさんと一緒に勉強をしたいと思います。 薬物乱用とは、法律で禁止されているような、危険な薬物を使用したりすること、薬局やスーパー等で売られているかぜ薬などの医療用の薬を、身体の具合も悪くないのに使用したり、また、一度に大量に使用したりと、決められた方法以外で使用することをいいます。 薬物乱用は、心や身体に悪い影響を与えるため、非常に危険で、絶対にやってはいけいない行為です。 今日は、危険な薬物を使用することが、何故危険で、絶対にやってはいけないのかを勉強していきたいと思います。 では、危険な薬物にはどんなものがあるのか紹介します。 危険な薬物には、白色の粉や無色の結晶の形をした「覚せい剤」、大麻草という植物を乾燥させた「乾燥大麻」、錠剤型の薬物で、カラフルな色合いとデザインされた刻印が特徴的な「MDMA」、切手のような紙状の「LSD」、麻薬成分を含んでいるキノコ類の「マジックマッシュルーム」、液体状の「シンナー」などがあります。 また、最近では「危険ドラッグ」という新しい薬物も出てきました。 この「危険ドラッグ」は、ちょっと前までは「合法ハーブ」とか「合法ドラッグ」、「脱法ドラッグ」と呼ばれていたものです。 「危険ドラッグ」は、お香やハーブ、アロマオイルなど、薬物ではない商品を装って販売されています。 「危険ドラッグ」の怖いところは、身体に悪い成分が含まれているおそれが高く、作っている人や売っている人にも、使用した場合に、身体にどんな影響が出るかが分からないというところです。 ですから、使用することで急に具合が悪くなって病院に搬送されたり、最悪な場合には死亡したという事案も発生しています。 見た目などに、騙されないよう気をつけてください。 では、タバコやお酒はどうでしょう? これって危険な薬物だと思いますか? タバコやお酒もみなさんにとっては、身近にある危険な薬物だと思ってください。 タバコやお酒には、気分をすっきりさせたり、気分をよくさせたりするといった効果がありますが、続けているうちにだんだんともっと強い効果が欲しくなってしまうようになります。 そして、その結果として、先ほど紹介したようなもっと危険な薬物に手を染めることになってしまうのです。 だから、タバコやお酒は危険な薬物に手を出す入り口になりやすいので、「薬物の入り口」という意味で「ゲートウェイ・ドラッグ」と呼んでいます。 では、なぜ薬物を乱用することが、いけないのでしょうか。 大きく三つに分けてみると、 一つ目は、薬物を乱用することにより健康に悪い影響があること 二つ目は、この悪い影響により、普通の生活ができなくなること 三つ目は、薬物乱用の悪い影響により、犯罪や事故が増えること が挙げられます。 それでは、一つ一つ順番に説明していきます。 一つ目の、人の健康に悪い影響があるということです。 まず、タバコを吸うと肺の病気の肺がん、脳の血管の病気の脳卒中や心臓の病気の心筋梗塞など命に危険がある病気にかかりやすくなります お酒も、病気にかかりやすくなる危険があるほか、脳に影響を与え、正常な判断をできなくさせたりします。 みなさんのような身体が成長する途中にある未成年者がタバコを吸ったり、お酒を飲んだりすると、きちんとした成長ができなくなる可能性もあります。 覚せい剤などの危険な薬物は、身体に悪い影響を与えるほか、脳を直接刺激して正常な判断ができなくなるなど、普通の生活ができなくなります。 タバコの煙には色々な有害物質が含まれています。 タバコを吸うと、自分だけではなく、一緒にいる人の健康にまで悪い影響を与えてしまう可能性があります。 また、タバコはやめようと思ってもなかなかやめられなくなります。 そして、タバコを吸うと色々な病気になりやすくなります。 たとえば、中学生のころからタバコを吸い始めると、大人になったときに肺がんになる確率は4倍になるそうです。 そして、病気にならなかったとしても、体力の低下や視力の低下、肌荒れ、口臭などの害があります。 次はお酒です。 お酒を飲むと、アルコールの影響で脳の働きが悪くなり、考える力や判断する力が低下します。 お酒もタバコと一緒で健康に悪い影響を与えます。 アルコール依存症という病気がありますが、中学生から飲酒を始めると、20歳以上で飲酒を始めた人に比べ、アルコール依存症になる確率は4倍になります。 また、ちょっとした飲酒から急性アルコール中毒を引き起こし、死んでしまう人もいます。 危険な薬物を使用すると、見えないものが見えたり、聞こえないものが聞こえたりという幻覚や幻聴が現れたり、妄想を抱いたりして普通の行動ができなくなります。 また、気持ちが悪くなる、頭痛がするなどの症状が現れ、心臓や肝臓などの機能不全を起こしたり、意識不明や全身痙攣を起こすこともあります。 そして、危険な薬物には、死亡する危険があります。 二つ目の、悪い影響により普通の生活ができなくなるということについてです。 薬物を乱用すると、脳が薬物の影響を受けることにより手が震えたりして文字が書けなくなったりします。 そして、幻覚が見えたり、幻聴が聞こえることによって、現実との区別がつかなくなってしまいます。 また、依存症により薬物をやめることができず、いつでも薬物が欲しいと思うようになってしまいます。 薬物は脳を直接刺激して色々な作用を引き起こします。 人間の脳には、色々な気持ちになったり、物事を考えたり、人を思いやったりと様々な働きがあります。 また、呼吸をしたり、歩いたり、話をしたりなど、皆さんが、日常の生活の中で普通に行っていることも、脳が正常に働いているからこそできるものです。 薬物を乱用するということは、この大切な脳を直接刺激して壊してしまうということです。 脳が壊れてしまうと、言葉を上手く発することが出来なくなったり、手の震えが止まらなくなったりと、今まで普通に出来ていたことができなくなってしまいます。 そして、一番怖いことですが、一度壊れてしまった脳は、二度と元には戻りません。 危険な薬物には「依存性」があります。 使用すると、やめたいと思っても自力ではなかなかやめられなくなります。 薬物の効果がきれるとイライラしたり、落ち着かなくなったりします。そして、薬物が欲しいという気持ちを抑えることが出来ず、自分の意志によるコントロールがきかなくなります。 さらに薬物への欲求は激しくなり、脅迫的な使用へとつながってゆきます。 中には、薬物をやめることができなくて自殺をしてしまう人もいます。 薬物を始める人のほとんどが、「一回だけ。」「ちょっとくらい大丈夫。」という気持ちで始めていますが、薬物の「依存性」と「耐性」によって使用する量や回数がどんどん増えていき、どうしようもない悪循環に陥ります。 「耐性」とは、薬物を繰り返し使用することによって効果が弱くなり、使用する量が増えていくことです。 薬物を乱用すると、薬物の効果で一時的にスカッとした気持ちになりますが、効果がきれるとガクッとなったり、気持ちが落ち着かずイライラするようになります。 そして、その状態から解放されるためにまた乱用してしまい、この悪循環を繰り返すことによって「依存性」や「耐性」に支配されていくのです。 そうなるともう自分の意志だけではやめることはできません。 覚せい剤などの危険な薬物は、たとえ1回だけの使用でも乱用になり、同時に犯罪になります。 三つ目の悪い影響により犯罪や事故が増えるということについてです。 薬物を乱用することで幻覚や妄想が現れ、その影響で殺人や傷害などの重大な犯罪を引き起こしたり、薬物を買うお金を手に入れるため、泥棒や恐喝、強盗などの犯罪を起こしてしまう人もいます。 事件だけではなく、薬物を乱用して車を運転し、人を殺してしまうような悲惨な交通事故を起こした人もいます。 このように、薬物を乱用すると自分だけではなく、まわりにいる人まで巻き込んでしまうのです。 薬物乱用による事件や事故としては、薬物を使用して車を運転しているときに「誰かに追われている。」と思い、運転していた車を暴走させて6件の交通事故を起こしたというものや路上で裸になって暴れだした後、突然意識不明となり、病院に搬送されたものの死亡した事案があります。 また、自分が使用する大麻を買うお金を得るため、薬物を売る人の手下となって働くこととなり、自分の友だちに大麻を勧めて売り、薬物とは何の関係もなかった友だちを薬物の世界に引きずり込んだ高校生もいました。 ではなぜ、悪い物だ、怖い物だとわかっていながら薬物を乱用してしまうのか。 薬物乱用者の多くは、ほんのちょっとした好奇心から、「1回くらいなら大丈夫。」「ちょっとくらいなら平気。」と安易に使い始めています。 不安な気持ちがなくなるかもしれない、自分だけは危険なことにはならない、一緒にいる仲間がやっているので自分もやった方が良いと考えてしまったという人もいます。 中には、なんとなく面白そうだからという人もいます。 そして、みなさんのような子どもで一番多いのは友だちや先輩から誘われて断り切れずに使用してしまうというものです。 先輩や友だちは、「ダイエットに最高!」「眠気が取れて勉強ができるよ!」などと甘い言葉をかけ、「とりあえず、試してみない。みんなやっているよ。」と言ってみなさんに危険な薬物を勧めてきます。 もしみなさんが、大切な友だちや先輩から誘われたらどうしますか? 誘われた場合に、しっかりと断ることができるかできないかが、みなさんの人生の大きな分かれ道となります。 殆どの人が、先輩や友だちとの関係を壊したくないと思い、理由をつけて断ろうとしますが、色々と言い返されてしまい、結局断ることができなくなってしまいます。 断り方のテクニックは、色々と理由をつけて断ろうとせず、「自分はしたくない。」とはっきりと断ってください。 それでダメなときは、話題を薬物のことから別のことに変えてください。 それでもダメなときは、もうその場を離れてください。 そこに残り続ければずっと誘われてしまいます。 近くに誰かがいれば、助けを求めてください。 そして、お父さんやお母さん、学校の先生など、皆さんの身近にいる信頼できる大人の人に相談をしてください。 ではここで断り方について実際に練習してみましょう。 (残り時間に応じて何人か選出し、ロールプレイ形式でタバコやお酒、薬物を断る練習をしましょう。) 【事例1】 中学の先輩が小学生にタバコを勧める。 【事例2】 親戚のおじさんが小学生の甥(姪)にビールを勧める。 ロールプレイ台本 事例1 中学生が後輩の小学生にタバコを勧める。 配役:中学生(指導者)、小学生(児童) 設定:塾の帰り道に公園にいたスポーツチームの先輩に声をかけられる。 指導者:よう、○○。久しぶりだな。 児童:あいさつ 指導者:最近どうよ。元気にしてるか。 児童:回答 指導者:スポーツもがんばってるのか。 児童:回答 指導者:俺さ、中学行って部活に入ったんだけど、最近先輩に勧められてタバコ始めたんだよね。そうだ、お前もタバコ吸ってみない。(タバコを進める) 児童:回答 指導者:なんで。タバコ吸うとさ、イライラとかなくなるし、気分もすっきりするし、良いことだらけだよ。吸ってみなよ。 児童:回答 指導者:以下は児童の回答に応じて誘ってください。 ・恐いの?みんなやってるから大丈夫、怖くないよ。 ・ビビってんの?かっこ悪いな。 ・みんなやってるからさ、お前もやれよ。 ・とりあえずさ、試してみなよ。 ・俺の言うことがきけないの。 ・マジメだなー。(マジメかよ!) ・マジ?そんなんじゃ、中学で友だちできないよ。等々 適当なところで終了してください。 ○○くん(○○さん)どうもありがとうございました。(拍手) 事例2 親戚のおじさん(おばさん)が甥(姪)にビールを勧める。 配役:おじさん、おばさん(指導者)、甥(姪)(児童) 設定:親戚のおじさん(おばさん)が遊びにきていて、晩酌をしている。 指導者:あー、うまい!ビール最高!おう、○○ちゃん、久しぶり。元気だったか。 児童:あいさつ 指導者:○○ちゃんはいくつになったの? 児童:回答 指導者:おおそうか、もう大人だね。どう、ちょっと飲んでみる。(ビールを勧める) 児童:回答 指導者:そんなこと言わないでさ、ちょっとだけ飲んでみなよ。これ、おいしいし、気持ち良くなるよ 児童:回答 指導者:ちょっとくらい良いじゃん。ねっ、飲んでみなよ。 児童:回答 指導者:以下は児童の回答に応じて誘ってください。 ・お母さん(お父さん)には内緒にしとくからさ。 ・とりあえずさ、試しに飲んでみなよ。 ・おじさん(おばさん)も○○ちゃんくらいのころには飲んでたよ。 ・おじさん(おばさん)の言うことがきけないの。 ・家で飲む分には大丈夫だからさ。等々 適当なところで終了してください。 ○○くん(○○さん)どうもありがとうございました。(拍手) 薬物の始まりは、生活リズムの乱れからです。 今、みなさんは薬物とは全く縁のない生活を送っていると思います。 それは、みなさんが夜は家に帰って、家で夕飯を食べ、自分の布団で寝て、次の日は朝起きて学校に行くという生活をしているからです。 この生活リズムが乱れたときが危険信号です。 夜遊びなどから始まり、今までとは違った友だちができ、そこでタバコやお酒を勧められ、薬物へと手が伸びてしまうのです。 だから、薬物から自分の身を守るためには、まず今の生活のリズムを絶対に乱さないようにしてください。 最後に薬物乱用しないためにみなさんに持って欲しい4つの力のお話をします。 やって良いことか悪いことかを判断する力、危険が有るのか無いのかを判断する力である判断力。 やってはいけないことはやらないという我慢をする自制力。 自分の行動に対して自分で責任をとる責任力。 これをやったらどうなるんだろうと考える想像力。 この4つの力をぜひ身に付けてください。 「薬物乱用はダメ、ぜったい!」と心に決めて、自分の将来、家族や友だちを守りましょう。 これで、今日のお話を終わりにします。