かんがえよう やっていいこと わるいこと おみせのなかで(低学年用) 作:神奈川県警察本部少年育成課 小島久美子 絵:神奈川県警察本部少年育成課 平野洋子 【 表紙 】 それでは、「考えよう。やって良いこと、悪いこと。お店の中で」の始まり始まり。 (ここで、表紙の〈考えよう。やっていいこと、わるいこと お店の中で〉をボードに貼る。) 【場面 1】 のび男君とすね太君は、同じクラスで仲の良い友達です。 休み時間、二人は、新発売になった「ドデカチョコ」のことを話しています。 すね太 「ねぇ、のび男君。新発売になったドデカチョコ、すっごく、おいしいよ。」 のび男 「あっ、あれね。この前、食べたけど、おいしいよね。」 のび男君が答えると、すね太君は、 すね太 「今日さぁ、学校が終わったら、一緒にコンビニに買いに行かない?」と誘いました。 のび男 「うーん。でも、今、お小遣い、あんまり持ってないんだ。」 のび男君は、迷っていましたが、すね太君は すね太 「安く売ってるかもしれないし、とにかく、行ってみようよ。」と、のび男君を無理やり誘いました。 こうして、学校が終わった後、二人は一緒にコンビニへ行く約束をしたのです。 【場面 2】 二人は、学校が終わった後、コンビニへ行きました。 新発売のドデカチョコは、棚に沢山並んでいます。 値段は五十円でした。 ところが、のび男君の持っていたお金は三〇円。すね太君は、昨日も買っていたので、十円しか持っていません。 のび男君は、がっかりして言いました。 のび男 「あーぁ。今日は、買えないや。仕方ないね。」 でも、すね太君は、 すね太 「僕、どうしても、食べたいよ。のび男君もそうだろ。」と、諦め切れないように言いました。 のび男  「うん。せっかく、来たのに、買えなくてがっかりだよ。」 のび男君も、残念そうに言いました。 【場面 3】 すね太君が言いました。 すね太 「のび男君。こんなに、沢山、置いてあるんだから、一個や二個、なくなったって、分からないよ。 ねぇ、今なら誰も見ていないよ。盗っちゃおうよ。」 すね太君は、万引きしようと誘ってきたのです。 のび男 「えっ。」 のび男君は、万引きなど、考えたこともなかったので、驚いてしまいました。 でも、すね太君は すね太 「大丈夫だよ。平気、平気。やろうよ。」 と強引です。のび男君は、怖くなり のび男 「でも、見つかったら、大変なことになっちゃうよ。」 と言いました。 のび男君は、心の中で、やらない方が良いと思いました。 でも、『すね太君の誘いを断るのは悪いなぁ。』と思っているうちに、すね太君の言とおり、『一個くらいなら盗っても平気かなぁ。』という気持ちになってきました。 すね太君は、いつまでも迷っているのび男君に、言いました。 すね太 「なんだよ。のび男君は、万引き、できないの。弱虫だなぁ。」 『万引き』というのは、お店の物をお金を払わず、盗ってしまうことで、ドロボウすることです。 ここで、文字画面 〈まんびき ドロボウ せっとう はんざい〉 をボードに貼る。) ドロボウのことを難しい言葉で窃盗と言い、窃盗は警察に捕まる犯罪です。 それでは、のび男君は、すね太君に誘われて、どうしたのか見てみましょう。 【場面 4】 店長 「こら。なにやっているんだ。万引きしたな。」 のび男君とすね太君は、万引きをしたのです。そして、店長さんに捕まってしまいました。 のび男君が言いました。 のび男 「あっ。ごっ、ごめんなさい。すね太君が、平気って言ったから、やったんです。許して下さい。」 すね太君が言いました。 すね太 「ごめんなさい。もう、二度とやりません。だから、お母さんには言わないで下さい。」 店長は、二人を睨みつけながら言いました。 店長 「何を言っているんだ。誰に誘われようが、万引きをすれば、それはドロボウだ。万引きはドロボウ、ドロボウは窃盗という犯罪だぞ。犯罪を犯せば、お母さんに怒られるだけじゃない。警察に捕まるんだ。二人ともこっちに来なさい。」 【場面 5】 のび男君のおとうさんとおかあさんが、警察署に行き店長さんとお巡りさんに謝っています。 お巡りさんが言いました。 警察官 「おたくのお子さんは、友達のすね太君と一緒に、「万引き」という犯罪を犯したので、警察署に来てもらいました。すね太君には、今、他の警察官が、厳しく話をしています。のび男君は、「すね太君に誘われて、一緒に万引きをした。」と言っていますが、どちらが言い出そうが、万引きをすれば、罪の重さは同じですよ。」 お巡りさんの話を聞き、お父さんが言いました。 お父さん 「申し訳ありません。家に帰って、どんなに悪いことをしたのか、子どもに教えます。ご迷惑をおかけしました。」 店長さんが言いました。 店長 「『ご迷惑をおかけしました。』では済みませんよ。私は、小学生でも許しませんよ。万引きは立派な犯罪です。万引きを許していたら、店は潰れてしまうんですよ。」 お母さんが言いました。 お母さん 「ごめんなさい。子どもが、万引きをしたのは、私達、親が、きちんと子どもに教えていなかったからです。私達、親の責任です。本当に、申し訳ありません。」 のび男君は、お父さんとお母さんが、自分のことで、お巡りさんや店長さんに怒られ、何度も、何度も頭を下げて謝っている姿を見て、悲しい気持ちになりました。 「何で、万引きをしてしまったんだろう。」と、やったことを悔やみました。 【場面 6】 お巡りさんと、次の日も警察署に行く約束をしたのび男君は、お父さんとお母さんに連れられ、ようやく、家に帰ってきました。 お父さんは、のび男君に聞きました。 お父さん 「のび男。どうして、万引きをしたんだ。」 のび男 「どうしても、ドデカチョコが食べたかったんだ。だけど、お小遣いが足りなくて・・・それに、すね太君に誘われて・・・」 のび男君が口ごもっていると、お父さんは、怒ったような、悲しいような顔をして言いました。 お父さん 「いいか。これから、のび男に、大切なことを三つ話すぞ。まず、ひとつ目だ。」 【場面 7】 (このとき、文字画面 〈万引き ドロボウ せっとう はんざい〉の下に文字画面 〈じぶんのものとほかの人のものをくべつする。〉 を貼る。) お父さん 「それは、『自分の物と他の人の物を区別する。』ということだ。のび男は、自分の物と他の人の物の違いは、分かるな。」 のび男君は、うなずきます。 お父さん 「お店には、沢山の品物が並んでいるけれど、それは、全部、自分の物ではない、お店の物だろう。のび男、他の人の物や、お店の物を勝手に持ってきたら、それは、ドロボウなんだよ。迷惑をかける、とても悪いことだ。のび男だって、自分が大切にしている物を他の人に持っていかれたら嫌だろ。」 のび男君は、お店の中で、一個位なら、盗っても良いような気持ちになったことを思い出し、恥ずかしくなりました。 【場面 8】 (このとき、文字画面 〈じぶんのものとほかの人のものをくべつする。〉の横に文字画面 〈じぶんでかんがえる。そして、ただしいこうどうをとる。〉を貼る。) お父さん 「のび男。二つ目は、『自分で考える。そして、正しい行動をとる。』と言うことだ。のび男は、すね太君に誘われたから万引きをしたと言ったが、それでは、自分で何も考えていないぞ。」 のび男君は、このとき、お店の中での自分の気持ちを正直にお父さんに話しました。 のび男 「おとうさん。僕、いけないことだとは思ったんだ。でも、すね太君とは友達だから、誘いを断ったら悪いと思ったんだよ。」 すると、お父さんは お父さん 「のび男。すね太君のせいにしてはいけないよ。友達の言葉で行動するのではなく、自分の頭で考え、そして正しい行動をとるんだ。悪い行動は、人から信じてもらえなくなるし、人に迷惑をかける。分かったな。」のび男君は、自分の考えをしっかり言えなかったことを後悔しました。 【場面 9】 (このとき、文字画面 〈じぶんでかんがえる。そして、ただしいこうどうをとる。〉の横に、文字画面 〈つよいこころをもつ。〉を貼る。) お父さん 「三つ目は、『強い心を持つ。』ということだ。」 のび男 「強い心?」 お父さん 「そうだよ。友達が悪いことを誘ってきたり、どうしても『欲しい。』と思ったときでも、自分は、絶対に正しい行動をとる強さ。そして、友達のためにも、『だめだよ。』と言って、悪いことはやめさせる強さ。それが『強い心を持っている。』ということなんだ。『強い心』と言うのは、『暗くても怖がらない。』とか、『けんかに強い。』ということではないんだよ。すね太君に注意ができないからと、一緒になって、悪いことをしてしまうのは、心が弱いからだ。」 のび男君は、「すね太君に注意ができず、万引きした自分は、弱虫だったんだ。」と、悔しい気持ちになりました。お父さんはのび男君に聞きました。 【場面 10】 のび男 「うん。僕、三つとも、できるよ。」 のび男君は、正しい行動をとることや、強い心を持つことは、とても大切なことだと思い、真剣な気持ちで答えました。お父さん 「そうか。じゃあ、この三つを守っていくこと、のび男とお父さんの約束だぞ。お父さんは、お前のことを信じているからな。」 お母さん 「お母さんも、のび男のこと、信じているからね。」 お母さんも、優しく言いました。 のび男君は、お父さんとお母さんに「信じる」と言われ、うれしく思いました。そして、万引きしたことを心から反省しました。 のび男 「お父さん、お母さん。僕、ずっと、信じてもらえるよう、絶対、約束は守るよ。今日は、本当にごめんなさい。僕、これから、すね太君を誘ってお店の人に謝ってくる。」 お母さんは、のび男君の頭をなでながら言いました。 お母さん 「のび男、大事なことに気付いたわね。店長さんに心から謝って、反省している気持ちを伝えましょう。そうすれば、きっと、お店の人は、『もう、のび男達に万引きされない。』って安心するわ。お母さんも、一緒に行って謝りましょう。」 お父さん 「お父さんも、一緒に行くよ。」 【場面 11】 お店には、のび男君、すね太君、それぞれのお父さん、お母さんの六人で謝りに行きました。 そして、次の日、のび男君とすね太君は、学校の休み時間に「これからは、絶対に悪いことをするのはよそう。」と約束しました。 【おしまい】 これで「考えよう。やって良いこと 悪いこと お店の中で」の紙芝居はおしまいです。 紙芝居を見て「万引きという、お店の物をお金を払わず持ってきてしまうことは、とても悪いことなんだ。」ということが、分かったでしょうか。 万引きは、、絶対にやってはいけません。 いつも、やって良いことか、悪いことかをしっかり考え、正しい行動をとっていきましょう。