神奈川県警察自動車運転免許試験場整備等事業を「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」(平成11年法律第117号。以下「法」という。)第7条の規定に基づき特定事業として選定しましたので、法第11条により特定事業選定における客観的評価の結果を公表します。 平成26年6月27日 神奈川県知事 黒岩 祐治 特定事業の選定について 1 事業概要 (1)  事業の名称 神奈川県警察自動車運転免許試験場整備等事業(以下「本事業」という。) (2)  計画地 神奈川県横浜市旭区中尾一丁目1−2(旧がんセンター及び元衛生研究所跡地) 神奈川県横浜市旭区中尾二丁目3−1(現運転免許試験場) (3)  事業の目的  昭和38年に運用が開始された現在の神奈川県警察自動車運転免許試験場は、建設から50年余が経ち、老朽化が著しいばかりでなく、増築を重ねてきた結果、利用者の動線の混乱、バリアフリー化の遅れなど、職員を含めた施設利用者にとって、利便性の悪い施設になっている。また、運転免許に係る行政処分者講習等の業務の一部が横浜市神奈川区六角橋にある交通安全センターで行われているなど、業務が分散化され、非効率となっている。一方、一部に耐震化基準を満たしていない建物等もあり、早期の建て替えが必要となっている。  この他、駐車場不足に起因する駐車待ち車列による交通渋滞を解消するための恒久的な対策が求められている。  そこで、神奈川県(以下「県」という。)は、これら二俣川地区の課題への対応として、二俣川地区県有地利活用計画を策定し、神奈川県立がんセンターの総合的整備と併せ、新たに神奈川県警察自動車運転免許試験場(以下「本施設」という。)の整備を行うこととした。  この計画では、当時の技能試験コース等の敷地に新がんセンター施設を移転整備した後、旧がんセンター敷地等に本施設を整備することとしている。  新たに整備する本施設は、 ・今後の時代のニーズに即した、すべての利用者にとって「使いやすく」「わかりやすい」やさしい施設であること。 ・明るく、清潔感・開放感のある施設であること。 ・来場者数の変動にフレキシブルに対応できる施設であること。 ・地域環境に優しく、ライフサイクルコストの削減を考慮した施設であること。 ・道路交通法改正に即した、適正かつ合理的な技能試験コースであること。 ・適切なセキュリティを確保した施設であること。 ・災害対策等の安全・安心を考慮した施設であること。 ・周辺への環境に配慮した施設整備であること。 を基本理念とし、PFI事業として、民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して効率的かつ効果的に整備及び維持管理等を行うとともに、サービスの向上やライフサイクルコストの削減を図り、施設を早期に整備することを目的として本事業を実施するものである。 (4)  事業の概要  県と特定事業契約を締結し本事業を実施する事業者(以下「PFI事業者」という。)は、平成27年7月(特定事業契約締結後)から平成33年12月までの6年6か月間において、新たに整備する本施設について、設計、工事監理、建設(本館棟、待合棟及び雨水貯留槽等並びにこれらに関連する業務)を行う。建設後は、維持管理(本館棟、待合棟及び雨水貯留槽等)を平成31年2月から平成51年3月の20年2か月間、運営支援は平成31年3月から平成51年3月の20年1か月間行う。 ア 事業内容 (ア)設計業務 a 事前調査業務 b 各種申請業務 c 環境対策業務 d 基本設計業務及びその関連業務 e 実施設計業務及びその関連業務 (イ)工事監理業務 a 本館棟等の建設に係る工事監理業務 b 待合棟等の建設に係る工事監理業務 c 雨水貯留槽等の整備に係る工事監理業務 (ウ)建設業務 a 本館棟等の建設業務及びその関連業務 b 待合棟等の建設業務及びその関連業務 c 雨水貯留槽等の整備業務及びその関連業務 (エ)維持管理業務 a 点検・保守・経常修繕業務 b 規模修繕業務 c 外構等管理業務 d 境衛生管理業務 e 清掃業務 f 駐車場管理業務 g 一般備品管理業務 (オ)運営支援業務 a 総合案内業務 (カ)附帯事業 a 飲食喫茶施設の運営業務 b 売店の運営業務 c 自動販売機による飲食物の販売業務 d 各種証明用無人写真撮影機による写真の撮影、販売業務 e 事業者からの提案による本施設に有用な業務 イ 事業スケジュール (ア)PFI事業者との事業契約締結(議会の議決)平成27年7月 (イ)施設整備 a 設計業務 平成27年7月〜平成28年10月 b 本館棟等の建設及びその関連業務 平成27年7月〜平成31年1月 c 本館棟等の引き渡し・所有権移転 平成31年1月 d 待合棟等の建設及びその関連業務 平成31年2月〜平成33年1月 e 待合棟等の引き渡し・所有権移転 平成33年1月 f 雨水貯留槽等の整備業務及びその関連業務 平成33年2月〜平成33年12月 g 雨水貯留槽等の引き渡し・所有権移転 平成33年12月 (ウ)維持管理及び運営支援 a 本館棟等の維持管理 平成31年2月〜平成51年3月 b 運営支援 平成31年3月〜平成51年3月 c 待合棟等の維持管理 平成33年2月〜平成51年3月 d 雨水貯留槽等の維持管理 平成34年1月〜平成51年3月 e 附帯事業 平成31年2月〜平成51年3月 (5)  事業方式  BTO(Build Transfer Operate)方式とし、PFI事業者は本施設を設計・建設し、県に所有権を移転した後、本施設の維持管理・運営支援業務を遂行する。 2 県が直接事業を実施する場合とPFI事業として実施する場合の評価 (1)  特定事業の選定基準  本事業をPFI事業として実施することにより、県が直接事業を実施する場合と比較して、効率的かつ効果的に事業が実施されると評価できる場合に特定事業として選定する。  具体的な判断基準は次のとおりである。 ア 事業期間を通じた県の公共負担額の軽減・縮減が期待できること。 イ 県の公共負担額が同一の水準にある場合においても公共サービスの水準の向上が期待できること。 (2)  評価方法  前提条件を整理し、条件をもとに、本事業を県が直接事業を実施した場合の公共負担額と、PFI事業として実施する場合の公共負担額を、事業期間にわたり年度別に算出し、現在価値換算後の合計額で比較する。  なお、事業内容のうち、「附帯事業」はPFI事業者が当該業務で得た収入により施設運営を行うことから、県が直接事業を実施する場合との比較において、公共負担額の比較を選定理由とすることになじまないため、定性的評価は附帯事業を含めて行うが、定量的評価については、附帯事業を除いて行うこととした。 (3)  コスト比較による定量的評価  県が直接事業を実施する場合の公共負担額とPFI事業として実施する場合の公共負担額の比較を行うに当たり、その前提条件を次のとおり設定した。なお、これらの前提条件は、県独自の仮定で設定したものであり、実際の民間事業者の提案内容を制約するものではなく、また一致するものでもない。 ア 県が直接事業を実施する場合の前提条件 (ア)算定対象とする経費は、設計費、工事監理費、解体除却工事費、建設費、外構整備費、備品等整備費、県債利息等、維持管理費及び運営支援費(総合案内業務等)とした。 (イ)施設整備費の財源には、対象となる経費について地方債が75%充当されるものとし、償還条件は、償還期間30年とし、起債の利率は地方債貸付利率の過去10年の平均値、1.392%とした。 (ウ)維持管理費及び運営費は、関係者からの参考見積り及びヒアリング、参考文献並びに現在の運転免許試験場の業務実績を参考に算出した。 イ PFI事業として実施する場合の前提条件 (ア)算定対象とする経費は、設計費、工事監理費、解体除却工事費、建設費、外構整備費、備品等整備費、建中金利、維持管理費、運営支援費及びSPCの設立・運営に係る経費、並びにPFI事業として実施することで本事業の実施に関連して発生する経費(アドバイザー費、モニタリング費及び税収)、県債利息とした。 (イ)各費用については、県等が実施したPFI事業の先行事例や関係事業者からの参考見積り及びヒアリング等を参考に算出した。 (ウ)サービス購入料の算定に当たっては、PFI事業者及び出資者にとっての収益性が十分に見込まれる事業となるよう配慮した。 ウ その他の前提条件  割引率は、10年物国債の利回りの過去10年の平均値、1.230%とした。 エ 定量的評価結果  上記アからウまでの前提条件で、県が直接事業を実施する場合の公共負担額とPFI事業として実施する場合の公共負担額を比較すると、次表のとおりである。 項目 金額(現在価値) 県が直接事業を実施する場合の公共負担額 25,929,463千円 PFI事業として実施する場合の公共負担額 22,718,473千円 公共負担軽減額 3,210,990千円 (数値は割引率を用い、現在価値に換算したものである。) (4)  民間事業者に移転するリスクに係る評価  本事業においては、導入可能性調査で実施した民間事業者ヒアリングにおいて、「本事業は、非常にリスクの小さい事業であると考えられ、リスク調整に伴う費用等は特に想定しない」との意見が多数得られていることから、本事業におけるリスク調整に伴う費用は、考慮しないものとする。 (5)  その他の質的な評価(PFI事業として実施することの定性的評価)  本事業をPFI事業として実施することにより、定量化は困難であるが、次に示すようなサービス水準の向上を期待することができる。 ア 施設整備と維持管理・運営支援を一括発注及び性能発注することで、民間事業者が有する専門的な知識やノウハウを活用でき、LCCを考慮した施設整備、維持管理が可能となり、コスト削減効果が期待できる。 イ 施設の維持管理において、民間のリスク管理の考え方から、常に適切なメンテナンス等を行うことにより、良好な施設環境が確保され、サービス水準向上が期待できる。 ウ リスクを適切に民間に移転することで、契約期間中の県の支出を想定することができるため、施設修繕等に伴う突発的な県の支出の減少が期待できる。また、性能発注により、事業全体のリスクマネジメントに要する費用の低減が期待できる。 (6)  総合的評価  本事業は、コスト比較において、PFI事業として実施することにより、県が直接実施する場合と比較して、公共負担軽減額3,210百万円、削減率12.38%の公共負担削減効果が認められる。  また、定性的評価においても、民間事業者のノウハウの発揮等により、コスト削減、サービス水準の向上等が期待できる。 以上により、本事業を特定事業として実施することが適当であると認め、ここに法第7条に基づく特定事業として選定する。