○核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律等の施行について (平成元年9月4日例規第38号/神備発第300号/神保発第697号) 各所属長あて 本部長 この度、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和32年法律第166号)の一部が改正されたことに伴い、同法施行令、関係総理府(省)令、警察庁組織令等の一部が改正され、いずれも昭和63年11月26日から施行(一部規定は「核物質の防護に関する条約」が発効する昭和63年11月27日又は平成元年5月26日から施行)された。今般、新たに核燃料物質の防護に関する規定が追加整備されたが、このうち、国家公安委員会及び都道府県公安委員会に関係するものの要点及び運用上の留意事項は、次のとおりであるから誤りのないようにされたい。 記 第1 改正の趣旨 今回の核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(以下「法」という。)の改正は、「核物質の防護に関する条約」の加入に当たり、従来から行われていた災害防止上の措置に加え、国際的な責務を果たすために、万全の核物質の防護措置を講ずるために行われたものである。 第2 用語の意義 次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。 1 主務大臣 内閣総理大臣(科学技術庁長官)、運輸大臣及び通商産業大臣をいう。 2 核燃料物質 核燃料物質、核原料物質、原子炉及び放射線の定義に関する政令第1条に掲げるものをいう。 3 特定核燃料物質 法第2条第5項及び核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律施行令(以下「政令」という。)第1条に掲げるものをいう。 4 防護対象特定核燃料物質 特定核燃料物質のうち一定の要件(政令第1条の2に定めるもの)を満たすものをいう。 5 使用者等 使用者、製錬事業者、加工事業者、原子炉設置者、外国原子力船運航者、再処理事業者及び廃棄事業者並びにこれらの者から運搬を委託された者をいう。 6 事業者等 使用者、製錬事業者、加工事業者、原子炉設置者、外国原子力船運航者、再処理事業者、廃棄事業者等をいう。 第3 改正の要点 1 目的の改正 法の目的に、核燃料物質を防護して公共の安全を図ることが加えられた。(法第1条) 2 定義の新設 特定核燃料物質及び防護対象特定核燃料物質の定義が新設された。(法第2条第5項、政令第1条、政令第1条の2) 3 国家公安委員会の権限等 (1) 国家公安委員会は、 ア 防護措置、核物質防護規定及び核物質防護管理者の要件に関する主務省令の制定、改廃につき意見を述べること。 イ 事業者等が講ずる防護措置について、主務大臣に対し意見を述べること。 ウ 事業者等が策定する核物質防護規定及びその認可(変更の認可を含む。)について、主務大臣に対し意見を述べること。 エ 主務大臣が行う核物質防護規定の変更命令について、主務大臣に対し意見を述べること。 オ 主務大臣が行う核物質防護規定の認可(変更の認可を含む。)、変更命令に対して、認可等の事前又は事後に意見を述べること。 カ 事業者等が選任する核物質防護管理者について、主務大臣に対し意見を述べること。ができることとされた。(法第72条第1項) (2) 連絡の受理 主務大臣は、核物質防護規定の認可(変更の認可を含む。)をし、又は核物質防護管理者の選任若しくは解任の届出等を受理したときは、遅滞なく国家公安委員会に連絡しなければならないこととされた。(法第72条第2項) (3) 相互協力 国家公安委員会及び主務大臣は、特定核燃料物質の防護のための規制に関し相互に協力することとされた。(法第72条の2) 4 都道府県公安委員会の権限 (1) 運搬の届出受理及び証明書の交付 使用者等は、防護対象特定核燃料物質を運搬する場合にていても、従来の核燃料物質等の運搬と同様に都道府県公安委員会に届出て運搬証明書の交付を受けることとされた。(法第59条の2第5項、政令第17条の5) (2) 指示 都道府県公安委員会は、防護対象特定核燃料物質の運搬の届出があつた場合は、従来の災害防止上の指示に加え、防護のために必要な事項として ア 運搬には核燃料物質防護の責任者、核燃料物質の防護上の措置について知識と経験を有する者の同行 イ 事案が発生した場合に備え、荷送人、荷受人、運搬従事者間等の通報連絡体制の整備 ウ 輸送容器の施錠及び封印 エ 輸送計画に関する情報の分散防止等について指示することができることとされた。(法第59条の2第6項、府令第4条第2項) (3) 運搬に関する検査  警察官は、防護対象特定核燃料物質を運搬する場合についても、従来の災害防止上からの検査に加え、核防護の面から車両を停止させて検査を行うことができることとされた。この場合、道路における安全と円滑に支障を及ぼすおそれのない場所を選ぶとともに、災害の防止及び防護について細心の注意をしなければならないこととされた。(法第59条の2第11項、府令第10条) (4) 報告の徴収 都道府県公安委員会は、防護対象特定核燃料物質の運搬の届出をした事業者等に対し、従来から報告を要する盗取又は所在不明、交通事故、異常な漏洩等のほか ○ 運搬の妨害 があつた場合、報告を求めることができることとされた。(法第67条第1項、政令第22条第6項、府令第11条第3号) (5) 立入検査 都道府県公安委員会は、防護対象特定核燃料物質運搬の届出をした事業者等の事務所等に対し、運搬に関する事項について災害防止上からの立入に加え、核防護の面から警察職員を立入らせ ア 書類の検査 イ 関係者に対する質問 等ができることとされた。(法第68条第1項) 5 罰則の整備 (1) 特定核燃料物質をみだりに取り扱うことにより、原子核分裂の連鎖反応を引起し、又はその放射線を発射させて、人の生命、身体又は財産に対する危険を生ぜしめた者は、10年以下の懲役に処することとされた。(法第76条の2) (2) 特定核燃料物質を用いて人の生命、身体又は財産に害を加えることを告知して、脅迫した者は、3年以下の懲役に処することとされた。(法第76条の3第1項) (3) 特定核燃料物質を窃取し又は強取することを告知して、脅迫し、義務のない行為をすること又は権利を行わないことを要求した者は、3年以下の懲役に処することとされた。(法第76条の3第2項) 第4 経過措置 (1) 運搬に関する確認及び運搬の届出等については、昭和63年11月26日以降に核燃料物質等を運搬するものについて適用することとされた。 (2) 事業者等は、平成元年5月26日から90日以内に核物質防護規定を定め、主務大臣の認可を受けなければならないこととされた。 第5 核燃料物質等に係わる事務 警察庁組織令が改正され、警察庁警備課において核燃料物質の防護に係わる事務を所掌することとなつたので、警備部警備課(以下「警備課」という。)においても同様の事務を所掌することにしたが、その内容は次のとおりである。 1 核燃料物質の運搬の届出をした使用者等からの防護に関する報告の徴収 2 核燃料物質を運搬する場合の核燃料物質を防護するための指示 3 国家公安委員会が、主務大臣に対して行う意見陳述を要する事項についての警察庁警備課への申報 4 核燃料物質の運搬の届出をした事業者等の事務所等への運搬に関する事項について、防護の面からの立入検査 5 核防護に関する各種犯罪、違反の取締り 第6 運用上の留意事項 1 職員に対する教養の徹底 核防護に関する警察の役割の重要性を十分認識して、職員に対する法の改正の要点等について教養を徹底し、円滑な運用に努めること。 2 届出等の事務処理  運搬の届出受理、届出使用者等に対する指示(防護に関するものは、警備課と協議して)、他都道府県警察に対する通知及び意見の回答等の事務は、銃器対策課において従来どおり行うこととなるので、管内の関係使用者等から照会があつた場合、その旨を指導すること。 3 防護措置の徹底 今回の法改正は、従来の災害防止上の措置に加え、事業所等及び運搬中の核燃料物質の防護措置の万全を期して公共の安全を図るためのものであることから、事業者・使用者等に適切な防護措置等を講じさせ、核ジャック等の事故防止に努めること。 4 関係各課(署)の連携の強化 防護に関する事務は警備課で所掌することとなつたが、その他の事務については、従来どおり銃器対策課が所掌することとなるので、関係各課・警察署は、相互に緊密な連携をとり、事業者・使用者等に適切な指示等を行えるよう配意すること。 5 意見陳述を要する事項の連絡 平素から管内の事業所等の実態把握に努め、適切な防護措置を講ずるよう指導するとともに、主務大臣に対する防護措置の変更等、意見陳述を要する事項がある場合は、警備課に連絡すること。 第7 添付資料 資料 核防護に関する国家公安委員会と主務大臣との関係規定の概要