○神奈川県警察警備実施規程の運用について (昭和55年7月1日例規/神備発第179号) 最終改正 平成23年9月20日例規第26号 各所属長あて 本部長 神奈川県警察で行う警備実施は、神奈川県警備実施要領(昭和36年神奈川県警察本部訓令第18号。以下「旧要領」という。)により実施してきたところであるが、このたび旧要領を廃止し、新たに、神奈川県警察警備実施規程(以下「新規程」という。)を制定し、昭和55年7月1日から施行することとしたから、部下職員に徹底し、運用上誤りのないようにされたい。 おつて、次の通達は、廃止する。 1 神奈川県警備実施要領の制定について(昭和36年8月1日付 神備発第145号例規通達) 2 警備実施用標旗の使用ならびに取扱いについて(昭和36年11月20日付 神備発第210号例規通達) 記 第1 制定の趣旨  旧要領は、制定以来18年余を経過し、この間社会情勢及び警備情勢の変化により、警備実施は年々複雑、多様化し、かつ、警備部隊規模の増大等により実情に即しない面が生じてきた。よつて、旧要領を全面的に検討し、これを廃止し、新たに新規程を制定して、現況に即応した警備実施の効果的な運用に努めようとするものである。 第2 改正の要点 1 規程の名称  旧要領は、「神奈川県警備実施要領」という名称であつたが、旧要領を廃止し、神奈川県警察における警備実施に関する基本規程としての性格にしたことに伴い、名称もそれにふさわしく「規程」としたものである。 2 総則関係 (1) 章節の構成  旧要領は、8章10節50条で構成していたが、新規程は、警備実施要則(昭和38年国家公安委員会規則第3号。以下「要則」という。)に準じた構成に組み替えるとともに、警備実施の基本的事項を定め8章20節72条の構成とした。 (2) 定義規定の新設  新規程では、条文の中でひん繁に出てくる基礎的な用語の意義を規定し、解釈の統一を図つた。 3 警備本部関係 (1) 県警備本部関係 ア 幕僚の種別及び任務の明確化  神奈川県警察警備本部(以下「県警備本部」という。)に編成される幕僚として、担当別に総務幕僚、実施幕僚等9幕僚を定めるとともに、それぞれの任務を明確にした。 イ 警備連絡室設置規定の新設  警察本部長(以下「本部長」という。)は、警備実施に当たり、特に、連絡調整を行う必要があると認める場合は、警察本部に「警備連絡室」を設置することができるものとした。 (2) 署警備本部関係  本部長は、必要があると認める場合は、警察署警備本部(以下「署警備本部」という。)に幕僚その他の警備本部員を派遣し、当該署警備本部長の補佐その他特命事項の任に当たらせることとした。 (3) 現地指揮所設置規定の新設  警備本部長は、必要があると認める場合は、警備現場に近接した場所に幕僚その他の警備本部員で構成する「現地指揮所」を設置し、警備部隊の指揮統括に当たらせることとした。 (4) 合同警備本部規定の削除  旧要領で規定していた合同警備本部は、過去に設置、運用した実績がなく、また、2警察署以上の管内にまたがる警備事案に対処する場合は、県警備本部又はそれぞれに署警備本部を設置することで警備実施全般の指揮統括に支障がないところから、合同警備本部規定を削除した。 4 部隊関係 (1) 部隊本部規定の新設  原則として、大隊以上の部隊を編成した場合に、副官及び所要の部隊員で構成する部隊本部を設置し、当該部隊活動について部隊長を補佐することを任務とし、通信、広報、情報の収集及び伝達、補給等所要の隊内業務に当たらせることとした。 (2) 部隊編成基準規定の新設  一般部隊及び交通部隊の単位は、連隊、大隊、中隊、小隊及び分隊とし、その編成については、いわゆる3・3編成とするほか、特科部隊についても大隊、中隊及び班を単位に所要数をもつて編成することとし、部隊編成の基準を定めた。 5 招集及び参集関係 (1) 招集命令伝達要領の改正  旧要領では、招集命令の伝達を命ぜられた派出所、駐在所(以下「所管派出所等」という。)の勤務員が招集受命者に、招集命令伝達票を交付して伝達したが、新規程では、所属の招集命令伝達責任者が加入電話を用いて直接自所属の招集受命者に伝達することとした。ただし、大震災等により電話が途絶した場合に限り、従来の伝達要領によることとした。 (2) 特別伝達区規定の削除  招集命令伝達要領を改正したことに伴い、特別伝達区制度を規定しておく必要がなくなつたので削除した。 (3) 招集事務関係書類等の一部廃止  招集命令伝達要領を改正したことに伴い、旧要領で規定していた招集命令伝達要図、招集命令伝達票及び招集票収納袋を廃止した。 6 警備実施関係 (1) 警備実施規定の新設  新規程は、警備実施を独立の章に置き、基本方針、事前措置、警備実施計画、警備活動、心得及び警備記録を節ごとに規定した。 (2) 実地調査の明確化  実地調査は、警備実施の事前措置として行われてきたが、新規程では、より徹底を期するため規定化した。 (3) 警備本部長、警備本部員等の心得規定の新設  警備本部長、警備本部員、部隊指揮官及び部隊員の基本的な心得を規定した。 第3 解釈及び運用上の留意事項 1 警備本部(第2章) (1) 県警備本部の設置(第5条関係)  「全般の指揮統括」とは、当該警備実施組織の全般について、的確な運営がなされ、かつ、管理されるために指揮することである。警備本部は、警備本部長以下の警備本部員の職能を総合的に発揮し、部隊活動を包括的に総合調整する機能をもつものである。設置を必要と認める場合の要件としては、大規模な警備事案、2警察署以上の管轄区域にわたる警備事案等が発生し、又は発生するおそれがあつて本部長が指揮統括の必要を認めた場合に、設置される。 (2) 県警備本部の組織(第6条関係)  県警備本部の組織は、当該警備事案の性格、規模、態様、期間その他社会的影響等から判断して、当該警備実施組織の連絡調整、指揮統制を的確に行える規模のものでなければならない。 (3) 警備連絡室(第8条関係)  「特に連絡調整をする必要があると認める場合」とは、当該警備実施に当たり県警備本部を警備事案管轄警察署等に設置した場合で、警察本部関係所属又は関係警察署の連絡調整を行う必要があると認める場合をいう。  なお、警備事案の状況により県警備本部にかえて、警備連絡室を設置することができる。 (4) 署警備本部の設置(第9条関係)  警察署長が、警備実施に当たり、当該警備実施を指揮統括する必要があると認めた場合に設置されるもので、警備事案の性格、規模、態様及び部隊の編成規模等を総合的に判断して決めることとなる。 (5) 現地指揮所の設置等(第13条関係)  第1項に規定する「必要があると認める場合」とは、警備現場の混乱その他の状況から現場に即応した的確な警備部隊の指揮運用が困難と認められる場合をいい、警備本部長の指定する幕僚をして、警備現場の近接で警備部隊の指揮統括を行う。 2 部隊(第3章) (1) 部隊の区分(第14条関係) ア 第2項に規定する「所要の隊付」とは、隊付特務、隊付現場対策及び隊付分隊をいう。 イ 「隊付特務」は、大隊長の指揮を受け、部隊の触角として対象集団の動向視察及び不法事案発生時の採証活動を任務とし、おおむね警部補を長として1個班を編成する。 ウ 「隊付現場対策」は、大隊長の指揮を受け、部隊活動に伴う紛議事案の未然防止を図るとともに、この種事案の発生に際し仲介、説得等により事案の早期解決を図ることを任務とし、おおむね警部を長として1個班を編成する。 エ 「隊付分隊」は、大隊長の指揮を受け、遊撃活動、負傷者の救出及び救護、部隊間の連絡等の支援活動を任務とするほか、予備隊としての二面性をもち、おおむね巡査部長を長として1個分隊を編成する。 (2) 部隊指揮の原則(第16条関係)  警備実施現場における警察措置は、警備方針に基づき、警備本部長を頂点に一貫した上下の指揮系統によつて、その脈絡が保たれているものである。警備現場が混乱すると、とかく指揮系統の脈絡からはずれた指揮、命令が出されがちとなるが、こうした場合には、部隊指揮の混乱を招くばかりではなく、部隊行動が遅疑しゆん巡する結果となるので注意する必要がある。部隊指揮は、第67条に規定する場合を除き、原則として指揮系統によらなければならない。 (3) 服装等の基準(第17条関係) ア 警備実施に従事する警備要員の服装、携行品及び携行装備を部隊の区分に応じて基準を定めたもので、警備要員の招集、部隊編成及び部隊出動を迅速にし、警備体制を早期に確立し、事態に即応させるものである。 イ 一般部隊の服装等の基準表に定める使用区分(以下「規定の服装」という。)は、次のとおりである。 (ア) 1号及び2号 治安警備実施に当たる警備要員の服装 (イ) 3号 災害警備実施に当たる警備要員の服装 (ウ) 4号 治安警備実施又は雑踏警備実施に当たる警備要員の服装 (エ) 5号 治安警備実施、災害警備実施又は雑踏警備実施で交通整理、被災者の誘導等に当たる警備要員の服装 ウ 警備実施の状況により、規定の服装と異なる服装等を必要とするときは、その都度指示することとし、通常「○号の服装のほか何々を携行」、「○号の服装から何々を除く。」等と示すこととなる。 エ 一般部隊の服装等の基準表に定める個人カードは、第1号様式のとおりとする。 (4) 標識及び信号の使用(第18条関係) ア 標識は、警備実施(警備訓練を含む。)における警備実施組織の活動を円滑、適正にするために用いるものであり、その使用については警備本部長及び部隊指揮官の判断で決定する。 イ 標識の種類及び使用区分は、次のとおりである。 (ア) 1号標識(腕章)  警備本部長、幕僚その他の警備本部員の職位及び職能を明確にするものである。 (イ) 2号標識(災害用腕章、災害用ヘルメツト)  災害用腕章は、警察職員の身分を明確にする必要がある場合に着用する。  災害用ヘルメツトの指揮官標示は、所定箇所に黄色線又は灰色線で表示し、警備本部長、各級部隊指揮官等の識別を明確にするものである。 (ウ) 3号標識(標旗)  総合警備訓練等に参加する警備部隊の識別を明確にするほか、機動隊の入(除)隊式等の儀式に使用する。 (エ) 4号標識(出動旗)  警備部隊の集結位置及び警備現場における部隊の各級指揮官の位置を表示するものである。 (オ) 5号標識(標識灯)  夜間の警備実施の際に4号標識に替えて使用するものである。 (カ) 6号標識(ヘルメツト用部隊識別標示)  ヘルメツトの後面及び両側面に表示し、警備部隊の所属を明確にし、部隊指揮官の指揮掌握及び部隊員相互の連係強化を図るためのものであり、その表示箇所は、次のとおりである。 ウ 別表第4のうち2号標識、4号標識、5号標識及び6号標識中に示した機動隊、管区機動隊、特別機動隊、女性警察官特別機動隊及び一般部隊は、第21条第1項に規定する一般部隊の区分である。 (5) 部隊本部の組織及び所掌事務(第20条関係) ア 部隊本部の組織は、通常、当該警備事案の種別、態様、警備部隊の編成規模、警備部隊の活動予定範囲等に照らして定められるものであるが、一般的には、大隊編成した場合に副官及び所要の部隊本部員で組織し、副官には警部を、部隊本部員には警部補以下の警備要員を充てるものとする。 イ 部隊本部にいかなる班を組織するかは、当該警備事案の状況等に応じて判断することとなり、第3項に規定する実施班、情報捜査班及び補給班以外にも必要に応じて、随時設けることができる。 (6) 一般部隊の単位及び編成基準(第21条関係)  一般部隊の編成は、いわゆる3・3編成を基準とすることを明確にした。3・3編成とは、単位の部隊3をもつて直近上位の部隊1を編成するという意味である。また、分隊は、分隊長及び10人の分隊員をもつて編成する。しかし、これは原則であつて、必要によつてはいわゆる2・2編成とすることも、分隊長以下8人の編成とすることもできる。 (7) 部隊の呼称(第24条関係)  第2項に規定する「必要により」とは、多数の警備部隊を運用する場合において、第1〜第3の部隊呼称に代えて部隊指揮官の姓を冠して呼称することが、他の部隊との区別を明確にし、部隊指揮、通信の運用等の適正が期せられると警備本部長が判断した場合をいう。 3 平素における措置(第4章) (1) 教養訓練(第25条関係)  部隊活動に関する教養訓練の種別及び内容は、次のとおりである。 ア 基本訓練 部隊要員に対して、各々その任務に応じ、警備実施の際にとるべき基本的活動について習熟せしめることを目的とする訓練をいう。 イ 幹部訓練 部隊の各級指揮官に対して、部隊運用、部隊指揮要領等を体得せしめ、警備実施において部隊指揮官として必要な指揮能力のかん養を図ることを目的とする訓練をいう。 ウ 総合訓練 警備実施計画等に基づき、発生が予想される警備事案の想定及び状況を設け、警備本部及び警備部隊の運用並びに活動を総合的に演練することを目的とする訓練をいう。 エ 合同訓練 一般部隊に対して、合同で部隊活動の基本訓練及び応用訓練を演練し、部隊相互間の有機的連係活動と警備実施技術の練度の向上を図ることを目的とする訓練をいう。 オ 図上訓練 部隊の各級指揮官に対して、警備実施に必要な状況判断及び部隊運用についての能力の向上を図ることを目的として、警備現場を想定し、地図、こま等を用いて行う訓練をいう。 (2) 基礎調査(第27条関係) ア 基礎調査資料は、警備実施を的確に行うために年間情勢判断と並んでその根幹をなすものであり、この両者に基礎をおいて、各種の基礎計画が作成されるものである。 イ 具体的な警備実施に当たつては、当該警備事案に対する情勢判断に基づくとともに、基礎計画を活用して、警備実施計画が作成されるものである。 ウ 第1項に規定する「基礎的事項」とは、通常次のようなものが例示的に考えられる。 (ア) 管内の立地条件 (イ) 管内の警察組織の構成及び分布状況 (ウ) 警備装備品等の配備状況 (エ) 関係機関との連絡協力関係の態様 (オ) 警備実施の対象として捕らえるべき施設、場所等の実態及び警察との連絡関係の態様 (3) 基礎計画の作成(第29条関係) ア 基礎計画は、警備実施に必要な事項について、平素から作成しておくことになじむものについて作成する計画である。部隊編成計画、自衛警備計画等は、基礎計画の典型的なものであつて、必要があるときはそれ以外の基礎計画を作成しておかなければならない。 イ 第2項に規定する「部隊編成計画」とは、神奈川県警察警備実施基本計画(以下「基本計画」という。)をいう。 ウ 所属長は、基本計画に基づき、所属の警察職員をもつて所定の部隊を編成しなければならない。この場合において、基本計画により編成された警備部隊は、県内の警備事案に対処するほか、県外の援助部隊としての二面性を持つもので、援助部隊出動後の一般治安及び自衛警備体制の確保に必要な所属単位の最大編成可能数を算出し、基本計画に基づかない警備部隊の編成に配意しなければならない。 4 招集及び参集(第5章) (1) 招集(第30条関係)  第2項に規定する招集の種別に基づく発令の区分は、次のとおりである。 ア 1号招集  本部長が、当該警備事案の処理を指揮統括する必要があると認めた場合に、2所属以上の警察職員に対して同時に発令する招集をいう。例えば、神奈川県警察災害警備実施計画の制定について(平成23年9月20日 例規第25号、神危発第355号。以下「災害警備実施計画」という。)第3条に規定する災害が発生した場合等が、これに該当する。 イ 2号招集 (ア) 警察署長が、当該警備事案の処理を自署体制で対処するため、所属警察職員に対して発令する場合 (イ) 警察本部の所属長の判断で、所属警察職員を当該警備事案管轄警察署に援助のため派遣する場合 (ウ) 機動隊長が、警備部長の出動命令を受け、当該警備事案管轄警察署に所属警察職員を招集する場合 (2) 招集事務責任者(第31条関係)  招集事務責任者は、招集事務に関して総括の責に任じ、招集命令伝達事務の効率的運用に配意するものとする。 (3) 招集命令伝達責任者(第32条関係)  招集命令伝達責任者は、招集が発令された場合における招集命令伝達の直接の責任者であると同時に、平素から所属警察職員の身上異動及び出勤状況等をは握するとともに、次の事項について配意するものとする。(当直主任たる招集命令伝達責任者を除く。) ア 部下職員を指揮して、招集命令伝達の基礎となる関係書類の正確な記載及び整備保管 イ 招集命令を迅速、的確に伝達するための招集命令伝達実施要領等の研究、検討 (4) 招集免除者(第33条関係) ア 第3号の「入校中の者」とは、警察教養規則(昭和29年国家公安委員会規則第12号)及び神奈川県警察教養規程(平成5年神奈川県警察本部訓令第16号)に規定する学校教養中の警察職員をいう。 イ 第4号の「遠距離に公務出張中の者」とは、原則として県外(国外を含む。)に出張中の者をいうが、交通機関の発達により、県外への出張中の者を一律に招集免除者とすることは、実情にそぐわないところから、所属長は、当該警備事案の状況等を判断して、弾力的な運用に配意するものとする。 ウ 第5号の「特別な理由があつて所属長が免除した者」とは、国外私事旅行中の者、警察庁等他官庁に派遣中の者又は第1号に該当しない病弱者等で招集を免除することが、真にやむを得ないと所属長が認めた者をいう。 (5) 招集命令の伝達(第35条関係)  本条に規定する招集命令の伝達系統を図示すると、別図のとおりである。 (6) 応招場所(第37条関係) ア 第2項に規定する「最寄りの警察署」とは、居住地の管轄警察署に限らず、応招者の現在する位置から、最も近い距離に所在する警察署をいう。 イ 最寄りの警察署に応招した者の自所属長に対する報告及びその指揮を受けるに当たつては、通信機能のふくそうすることが十分に予想されるところから、その使用に当たつては、神奈川県警察通信運用規程(昭和52年神奈川県警察本部訓令第1号)第9条に規定する管理主任者の指示を受け、通信の運用を阻害することのないよう留意しなければならない。 (7) 参集(第38条関係) ア 参集は、一定の事実の認知が同時に招集の命令伝達を受けた場合と同一の効果を生ずるもので、警察職員に対して、あらかじめ参集を義務づけたことにより、当該警備事案に対し、より迅速な対応を期待するものである。 イ 第1項に規定する「重要な警備事案」を例示すると次のとおりである。 (ア) 警察法(昭和29年法律第162号)第71条に規定する緊急事態の布告が発せられたとき。 (イ) 災害警備実施計画第3条に規定する災害が発生したとき。 ウ 警察職員が、何らかの警備事案を認知し、参集要否の判断に迷う場合には、積極的に所属長の指揮を受ける配意が必要であり、このことは前にも触れたとおり、警備事案に対する迅速な対応という趣旨からすれば、極めて重要な意義がある。 (8) 応招者及び参集者の受付及び部隊編成(第39条)  第3項に規定する本部長に対する報告は、招集の発令30分後を第1回とし、以後30分ごとに行う定時報告では、応招又は参集者数を、また、随時報告として分隊、小隊、中隊及び大隊の単位ごとの部隊編成完了時間及び部隊の各級指揮官名その他応招又は参集についての特異事項について報告することとなる。 5 援助の要求及び派遣(第6章) (1) 援助の要求(第40条関係)  警察署長が、本部長に対して行う援助の要求は、突発的な警備事案等、やむを得ない場合を除き、事前に、所定の事項を明らかにして行うことを原則としたのは、警察力の総合的運営と援助事務の適正化を図るためのものである。なお、援助の要求は、警備部長(警備課経由)に行うこととし、事態が急迫してそのいとまがないときは、警備部長は事後速やかにその旨を本部長に報告するものとする。 (2) 援助(第42条関係)  援助を命ぜられた所属長が、本部長及び援助先警察署長に対し報告し、又は通報する事項は、次のとおりとする。 ア 部隊指揮官名 イ 部隊編成の単位及び人員 ウ 部隊の出発日時 エ 部隊の輸送経路及び通信連絡の方法 オ 到着予定日時 カ 帯同警備装備品等の種別及び数 キ その他必要な事項 (3) 援助の要求(第44条関係)  第1項に規定する「援助の要求を行おうとするとき」とは警察法第60条の規定に基づき、警察庁又は他の都道府県警察に対して、援助の要求を行うときのことを、「所要の手続」とは援助の要求に関する県公安委員会への報告及び承認並びに警察庁及び管区警察局に対する報告又は援助先都道府県警察に対する連絡等一連の事務手続をいう。 (4) 部隊及び警備装備品等の援助(第46条関係) ア 第1項に規定する「所要の手続」とは、援助要求に関する県公安委員会への報告及び承認並びに警察庁、管区警察局等に対する援助に関する報告、調整等をいう。 イ 第2項に規定する「援助先都道府県警察に必要な事項を連絡」とは、おおむね次に掲げる事項をいう。 (ア) 部隊指揮官名 (イ) 部隊の編成単位及び人員 (ウ) 部隊の出発日時及び場所 (エ) 到着予定日時及び場所 (オ) 帯同警備装備品等の種別(車両については車種、車両番号)及び数 (カ) 部隊の輸送経路及び通信連絡の方法 (キ) 輸送途上における給養(宿泊を含む。)、車両の給油等についての希望の有無 6 警備実施(第7章) (1) 実地調査(第51条関係) ア 実地調査は、当該警備実施の円滑適正を期するための事前の措置として、地形、地物の現状をは握するためのものである。 イ 実地調査を行う場合に焦点とすべき事項は、警備事案の種別によつて異なるところから、当該警備事案の種別に対して合目的に行うべきことはいうまでもなく、治安警備実施を行うに当たつては警備部隊の運用を適切に行つて警備事案を処理するためのものであり、災害警備実施を行うに当たつては被害の拡大防止を図るため、発生が予想される具体的災害に対処するためのものであり、雑踏警備実施を行うに当たつては予想される雑踏現象に対する事故防止上の諸条件をは握する等に留意して実施すべきものである。 (2) 関係機関との協力(第52条関係) ア 関係機関との連絡協調を図ることの目的は、警備実施を的確に行うためのもので、警備事案の規模が大きい場合又は警備事案の性格が特異である場合には、このことが一層強く要求されるところである。 イ 「必要な措置」とは、当該警備実施を行うに当たり、地方公共団体、自衛隊、海上保安庁、消防、交通運輸、医療、各種施設の管理者等の関係機関のもつ能力に応じて、予想される個々具体的な警備事案に照らして、警察措置上必要な事項について要請し、協力を得ることである。 (3) 警備実施計画の内容(第54条関係) ア 警備実施計画は、具体的な警備実施に対処するため、警備実施方針、警備体制(警備本部の運営、警備要員の招集、部隊の編成等)、警備措置要領(警備部隊の運用等)等、必要な内容を定めた計画である。 イ 警備実施計画は、当該警備実施の基礎又は指針となるものであるから、計画策定に当たつては、衆知をあつめて的確なものとすることが必要であり、また、実際に役立たせるものであるから、情勢の変化に応じて適時補正を加える必要がある。 ウ 警備実施計画に盛り込むべき内容で、計画上特に留意すべき事項は、次のとおりである。 (ア) 警備方針は、客観的な情勢判断に基づき、目的を明確にして公正妥当なものであること。 (イ) 警備体制は、不測の事態にも対応できるよう余裕のあるものであること。 (ウ) 警備措置は、警備部隊の能力に適合する無理のないものであること。 (4) 警備会議(第55条関係) ア 警備会議は、警備実施に当たり、警備情勢及び警備実施計画を周知徹底し、当該警備実施の円滑適正を期するため、警備本部長、幕僚、警備本部員及び部隊の各級指揮官により開催するものである。 イ 警備会議は、通常、当該警備事案が大規模又は特異な場合で、事前に開催されるべきものであり、それ以外でも警備実施中、警備情勢の変化に伴い警備実施計画の枢要部分に変更が生じた場合には、その都度、会議を招集し、警備事案に的確に対処するためのものである。 (5) 出動(第56条関係)  部隊指揮官は、警備部隊の出動に当たり、特に、不測の事態が予測される場合には、輸送経路の変更、遊撃部隊の運用等、奇襲に備えた細心の配慮をしなければならない。 (6) 統括指揮(第57条関係)  「特定の部隊指揮官に他の部隊を配属して」とは、警備情勢又は警備現場が急変し、所定方針に基づく部隊運用を急拠変更した場合又は部隊の上級指揮官に欠損を生じた場合等のため、他の部隊指揮官の指揮下に入れることをいう。 (7) 部隊運用の基本(第58条関係) ア 部隊運用の基本は、警備力の重点的な運用及び予備隊の確保にある。特に、予備隊の確保は、警備実施の円滑適正を期するために必須のものであるところから部隊運用の基本の一つとして位置づけたものである。 イ 「所要の予備隊」とは、不測の事態及び事態の推移に応じる程度の規模をいうのであつて、予備隊を設ける余裕のないようにみえる場合であつても、要度の少ない部位から抽出して、予備隊として編成し、縦深の体制を確保しなければならない。 (8) 通信の確保(第59条関係) ア 警備実施に当たつては、当該警備実施組織における通信連絡の手段、系統及び方法を確定して、通信機能を最大限に発揮しなければならない。 イ 「通信連絡の手段」とは、有線通信(警電、加入電話等)、無線通信等をいい、警備実施における部隊指揮及び報告、連絡の迅速適正を期するために不可欠の要素である。通信連絡手段の適否は、即警備力の総合的発揮に大きな影響を招来するところから、一手段に故障等を生じた場合の代替え手段を明確にしておかなければならない。 ウ 「通信連絡の系統」とは、警備本部と部隊間、部隊相互間、警備本部と他の機関との通信連絡の発信、受信の系統をいうもので、特に、無線通信系は、警備本部と部隊間及び部隊相互間の指揮命令、報告、連絡並びに警備情報の伝達と傍受に不可欠のものである。このため警備実施中は、他の無線通信系と切り離し、警備実施専用の通信系を確保しなければならない。 エ 「宰領通信」とは、統制局が、同一通信系内のすべての無線電話局の行う通信手続を管理することで、通信統制の一方法である。大規模な警備部隊の運用又は警備現場の混乱が予想される場合に、通信系内の通信のふくそう又は混信による通信の混乱を回避し、通信連絡の円滑適正を期するものである。 (9) 被疑者の検挙(第62条) ア 部隊活動による現場検挙は、あらかじめ定められた警備方針又は検挙方針に基づき、原則として現場指揮官の統制指揮のもとに行われる。しかし、悪質重大な犯罪で現場指揮官の指揮を受けるいとまがないときは、別命をまつことなく現場検挙を行うべきである。 イ 「一般部隊及び特科部隊の連係」とは、現場指揮官の統制指揮のもとで各部隊が緊密に連係し、一般部隊による所要の援護、実力規制及び特科部隊による検挙活動が有機的に一体となつて行われることをいい、被疑者を検挙する際における群衆の巻き込み、検挙妨害及び危害を防止し、検挙活動の実効を期するものである。 ウ 「被疑者及びその犯行の確認」とは、現場検挙に当たつては、たとえ現場が混乱状態の中においても冷静に犯罪行為、特に、犯行と被疑者との結びつきを確実に特定してから行い、公判廷における立証を不動のものとすることである。 エ 「証拠資料の収集」とは、記録、写真等による採証活動を十分に行い立証資料を確保するほか、逮捕時における捜索、差押えの徹底により、証拠隠滅の防止を図ることである。 オ 参考人の確保に当たつては、現場における違法行為の目撃者、被害者等、犯罪を立証する者を1人でも多く確保しなければならない。 (10) 部隊指揮官の心得(第67条関係)  第2項に規定する「不測の事態」とは、本来の警備実施計画に予定されていない事態の発生ないし事案の推移をいうのであつて、それが急速な措置を要し、かつ、指揮を受けるいとまがない場合とも関連して、急迫性を伴つている場合をいう。「急速な措置」とは警察措置として、当然その発生した時点においてとるべき適正妥当な措置をいう。  「指揮を受けるいとまがないとき」とは、地理的条件又は時間的条件からみて指揮を受けていては、その措置に時機を失するような場合をいい、本来、警備実施は上下の指揮系統によつて脈絡が保たれているが、このような系統により得ない場合を捕えて条件付けをしているものである。  「自からの判断」とは、指揮官自身が、そのときにおいて下すべきことが要求される判断のことで、これは健全、円満な常識による事態の直感と警備方針及び警備本部長の意図の明察とが併せて要求されるものである。  「所要の措置」とは、その事態に即して、直ちにとるべき最も効果的な警察措置をいう。  「事後速やかに状況を報告し」とは、急迫性を脱した時点に、その行動、警察措置を報告することをいう。 (11) 警備実施記録(第69条関係) ア 警備実施記録は、警備実施に当たつて、事案の概要、部隊運用の状況等、当該警備実施について参考となるべき事項を確実に記録することにより、後日、問題が提起された場合の疎明資料及び将来の警備実施技術の向上に資するものであるから、記録に当たつては、これらの要請をみたすものでなければならない。 イ 警備実施の記録用紙は、警備本部にあつては警備実施状況記録(第2号様式)を、警備部隊にあつては警備実施部隊記録(第3号様式)を使用するものとする。 第4 関連通達の改正 1 風水害警備実施要綱(昭和51年6月1日付 神備発第170号)の一部を次のように改正する。  第3の8の(2)中「神奈川県警備実施要領(昭和36年神奈川県警察本部訓令第18号)第22条第4項に定める2号標識(腕章)」を「神奈川県警察警備実施規程(昭和55年神奈川県警察本部訓令第9号)第18条に規定する3号標識(災害用腕章、災害用ヘルメツトライナー)」に改める。 2 神奈川県警察大震災警備計画(昭和48年8月7日付 神備発第359号)の一部を次のように改正する。  第1の2中「神奈川県警備実施要領(昭和36年神奈川県警察本部訓令第18号)」を「神奈川県警察警備実施規程(昭和55年神奈川県警察本部訓令第9号)」に改める。  第3の3の(4)中「神奈川県警備実施要領」を「神奈川県警察警備実施規程」に改める。 3 東海道新幹線鉄道事故発生時における警察措置要領(昭和41年11月9日付 神備発第277号)の一部を次のように改正する。  第3の3の(2)のエ中「警備実施要領第22条の4号標識」を「神奈川県警察警備実施規程(昭和55年神奈川県警察本部訓令第9号。以下「警備実施規程」という。)第18条に規定する4号標識」に改める。  第3の4の(3)のア及びイ中「警備実施要領第22条の2号標識」を「警備実施規程第18条に規定する3号標識」に改める。  第3の4の(4)中「小隊長以上」を「中隊長以上」に、「警備実施要領第22条の4号標識」を「警備実施規程第18条に規定する5号標識」に改める。 4 雑とう警備実施要領について(昭和31年2月18日付 神備三発第27号)の一部を次のように改正する。  通達の前書き中「神奈川県警備実施要領」を「神奈川県警察警備実施規程(昭和55年神奈川県警察本部訓令第9号)」に改める。 5 神奈川県警察独身寮運営管理要綱(昭和42年12月25日付 神厚発第256号、神務発第921号)の一部を次のように改正する。  第13条の見出し中「非常招集等」を「招集等」に改め、同条第1号及び第2号を次のように改める。 (1) 神奈川県警察警備実施規程(昭和55年神奈川県警察本部訓令第9号。以下「警備実施規程」という。)第30条又は第36条の規定に基づく招集又は待機命令の伝達を受けたとき。 (2) 警備実施規程第38条の規定に基づく参集を必要とする重要な警備事案が発生し、又は発生するおそれがあると認めたとき。