○公害関係事案措置要綱の制定について (昭和48年12月21日例規/神環発第190号/神刑総発第414号/神勤発第349号/神公一発第218号/神交企発第634号)  各所属長あて 本部長  公害問題は複雑多岐にわたり、かつ、県民の日常生活に重大な影響を与え、大きな社会問題となつている。さらに取締り関係諸法令も整備強化され、公害対策において警察の果たすべき役割は一段と重要性を加えているところである。このような情勢から公害関係事案に対して、より積極的かつ適正に対処するため、公害関係事案措置要綱を制定し、昭和49年1月1日から実施することとしたので遺憾のないようにされたい。  なお、要綱第4に基づいてあらたに公害苦情処理票を作成して処理することとしたが、警察署主務課においては、公害苦情処理票編として編集保存(保存年限1年)するものとする。  おつて、次に掲げる通達は、廃止する。 1 公害関係事案に対する警察の基本方針について(昭和45年8月15日 神保二発第145号、神交企発第293号) 2 公害事犯特別捜査班の編成とその運用について(昭和46年5月14日 神保二発第168号) 3 光化学公害注意報等が発令された場合の措置について(昭和47年7月18日 神保二発第193号)  公害関係事案措置要綱 第1 趣旨  公害問題は、複雑多岐にわたり、かつ、県民の日常生活に重大な影響を与え、大きな社会問題となつている。これが解決のためには関係行政機関の積極的な施策が推進されなければならないが、公害関係諸法令の整備に伴い、公害対策において警察の果たすべき役割は一段と重要性を加えているところである。このような情勢から公害関係事案に対してより積極的かつ適正に対処する必要があるので、警察における公害関係事案に対する基本的な方針、事案処理の要領等を定め、その効果的な推進を図ろうとするものである。 第2 公害関係事案措置の基本方針  公害関係事案の処理にあたつては、次の基本方針に基づき関係行政機関と緊密な連絡を保ちつつ、それぞれの事案に応じ、指導、警告、検挙等の措置を積極的に講ずるものとする。 1 公害事犯の取締り強化  公害事犯の取締りにあたつては、県民の健康を害し、又は日常生活に直接被害を与える事犯及び関係行政機関の指導、命令等に反して行われる事犯に重点を指向し、事犯の内容、行政機関の措置状況等を勘案して悪質又は重要と認められる事犯については、検挙の徹底を図ること。 2 交通公害防止対策の推進  交通公害に対する措置については、特に夜間の自動車騒音等による交通公害及び都市部における自動車排気ガスによる交通公害を重点とし、必要な交通規制を積極的に推進するとともに、交通公害の発生に関係の深い整備不良車両の運転違反、積載物重量制限超過、速度超過等に対する指導取締りを強化すること。この場合において、関係機関の施策が先行又は併行して講じられることが適当であると認められるときは、積極的に要請して有効適切な施策の推進を図ること。 3 公害紛争に対する適切な処理  公害をめぐる紛争の処理にあたつては、事案が違法行為に発展するおそれがある場合は、紛争の原因、当事者の動向、行政機関の施策等を早期かつ的確には握し、必要に応じて関係機関当事者等に対し、指導、警告、申し入れ等の措置を行い、その未然防止に努めること。また、違法行為がひき起された場合においては、違法行為は放置しないという方針のもとに事態の推移を見極め、対象に応じた適正な措置を行うこと。 第3 公害関係事案措置の一般的留意事項 1 実態は握  警察本部主務課(以下「本部主務課」という。)及び警察署においては、平素から各種の公害の発生源となる工場、事業場等の実態をは握し、これを体系的に資料化し、いつでも活用できるよう整備しておくこと。また、公害関係事案が発生した場合には、発生に至つた経緯、当事者の動向、行政機関の対策等を早期かつ的確には握し、事案措置の適正を期すること。 2 上級幹部による指揮掌握の徹底  公害関係事案については、内容、被害の状況等が複雑多岐にわたり、かつ、公害の及ぼす社会的影響、世論の動向などを深く洞察する必要があるので、常に上級幹部において事案を掌握して合理的な判断を行い指揮の徹底を期すること。 3 法令の多角的な運用  公害関係事案は、各種の法令が競合する場合が多いので、その運用を誤まらないよう留意するとともに法令を多角的に運用し、警告、指導、検挙等の措置を効果的に行うこと。 4 関係行政機関との連絡協調  公害関係事案を適正に処理するため、平素から関係行政機関と緊密な連絡を保持し、積極的に資料の交換などを行うこと。 5 関係行政機関に対する措置の要請  公害関係事案は、その及ぼす社会的影響、公害行政施策の状況等を総合的に判断し、関係行政機関の措置に委ねることが適当と認められるものについては、措置要請を適切に行うとともに、措置結果を確認すること。 第4 公害関係事案に対する苦情の処理 1 一般的留意事項 (1) 親切、丁寧な受理  苦情の届け出があつた場合は、届出者の住所、氏名、年齢、連絡先等を確認したうえ、親切、丁寧に受理すること。この場合特に不用意な言動によつて新たな紛議を起すことのないよう留意すること。 (2) 現場確認と迅速な処理 ア 大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、騒音、振動、地盤沈下及び悪臭に係る苦情を受理したときは、速やかに実態を確認し、迅速、適確に処理するとともに、公害苦情処理票(第1号様式)を作成し、処理結果を明らかにして警察署長に報告すること。 イ 廃棄物に関する苦情その他前ア以外の苦情を受理したときは、廃棄物等環境事犯苦情相談受理報告書(第2号様式)により、本部主務課長に速報すること。 (3) 届出者への結果の連絡  苦情を処理したときは、届出者に処理結果を必ず連絡すること。 2 具体的な措置要領 (1) 警察署の地域警察その他の警ら警察活動に従事する警察官(以下「地域警察官」という。)が受理した場合 ア 交番その他の派出所又は、駐在所等の地域警察官が受理したときは、事案の概要を地域警察幹部に即報すること。 イ 地域警察幹部は、事案の内容を検討し、速やかに次の措置をとるものとする。 (ア) 事案の内容が、大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染、振動、地盤の沈下及び悪臭である場合には、主務課に連絡し、事後の措置を依頼すること。 (イ) 事案の内容が騒音である場合には、次により措置すること。  A 個人住宅、アパート等の家庭騒音  人声、楽器、テレビ、ラジオ等による騒音については、指導、警告等の措置をとるものとし、近隣に著るしく迷惑を及ぼし、かつ、警察官の警告、制止に応じないものについては、検挙すること。  B 風俗営業等の営業騒音  風俗営業、深夜飲食店等の人声、楽器等による騒音については、指導、警告等の措置をとるものとし、近隣に著るしく迷惑を及ぼしているものについては、主務課に連絡し、検挙すること。  C 工場、事業場等の騒音  工場、事業場、建築現場及び道路工事等の騒音については、指導、警告し、騒音防止について協力を求めること。騒音の発生源が機械音等である場合には主務課に連絡し、関係行政機関による措置を要請すること。  D 拡声機の騒音  商業宣伝のための拡声機の騒音については、指導、警告等の措置をとるものとし、指導、警告に従わないものについては、主務課に連絡し、関係行政機関による措置を要請すること。  E 自動車等の騒音  整備不良車両の運転等による騒音については、事案に応じ、指導、警告、検挙等の措置をとること。 (2) 警察署の主務課員が受理した場合  警察署の主務課員が受理し、又は地域警察官から通報を受けたときは、事案に応じて指導、警告、検挙の措置を積極的に行うとともに、関係行政機関による措置を必要とする事案については、速やかに措置要請を行うこと。 (3) 通信指令室で受理した場合  110番通報事案については、関係警察署に通報するとともに、別に指定する特異又は重要な事案については、本部主務課に連絡すること。 第5 公害事犯捜査推進上の留意事項 1 重点取締りの推進  公害事犯の取締りは、その罪質、罪情、被害の状況、住民感情等からみて悪質又は重要と認められる次に掲げる事犯に重点をおくものとする。 (1) 法令に定める人の健康の保護及び生活環境の保全に係る基準を著るしく超えて、有害物質等を排出し、又は騒音を発している事犯 (2) 有害物質等を含有し、又は悪臭を発する廃棄物等を不法に処分する事犯 (3) 無許可(無届)で行われる事犯及び関係行政機関による指導措置、改善命令等に反して行われる事犯 2 適正捜査の推進  公害事犯の捜査にあたつては、有害物質等の科学的証明及び因果関係を明らかにする必要があるので、内偵捜査を徹底するとともに、必要な情報、資料を収集して証拠の保全を図り、捜査を合理的に推進すること。また、検挙に際しては事件の擬律判断、価値判断、着手の時期、捜査体制等を検討し、捜査の適正を期すること。 3 告訴、告発の処理  告訴、告発を受理した場合は、その動機、背景等事犯の真相を究明するとともに、捜査着手の時期等について慎重に配意し、取締りが紛争等に利用されないよう留意すること。 第6 体制の整備 1 専従捜査体制の強化  公害事犯の捜査を推進するため、警察本部及び取締り重点警察署の専従捜査体制を強化し、その積極的な運用を図るものとする。 2 公害事犯特別捜査班の編成とその運用特異重要な公害事犯が発生した場合には、警察本部及び警察署の関係部門をもつて公害事犯特別捜査班を編成し、強力な捜査を推進するものとする。 3 器資材の整備  公害事犯の適正かつ強力な取締りを推進するため、積極的に取締り器資材及び鑑識用器資材の充実整備を図るものとする。 4 鑑定検査体制の確立  公害事犯の捜査にあたつては、排水、排出又は投棄された物質内に含有する有害性物質量を科学的に立証することが要求されるので、これらの鑑定検査が適切に実施できるよう体制を確立するものとする。 5 教養の徹底  公害事犯専従捜査員に対しては専門的知識、技能を習得させるため、大学への委託研修をはじめ、捜査講習会、ブロック別検討会の開催、教養資料の発行等を推進して捜査能力の質的向上を図るものとする。その他の警察職員に対しても、公害の現状、公害事犯の端緒は握、苦情の処理等について必要な教養を積極的に行うものとする。 6 関係部門との連携強化  公害関係事案は、捜査推進方策、紛争の解決方策、資料の収集などについて多くの部門が関連するので、各部門間の有機的な連携強化を図り、常に総合力が発揮できるよう配意するものとする。 第7 光化学公害警報等が発令された場合の措置 1 光化学公害警報等の伝達  神奈川県環境科学センターから光化学公害警報等(以下「警報等」という。)が発令された旨の通報を受理したときは、本部主務課長は速やかに広報課長、通信指令課長、交通規制課長及び発令適用地域を管轄する警察署長にその旨連絡すること。解除の通報を受理したときも同様とする。 2 警察署長の措置 (1) 広報板の掲出  警察署長は、警報等の種類により「光化学公害予報発令中」、「光化学公害注意報発令中」、「光化学公害警報発令中」又は「光化学公害重大警報発令中」の広報板を、警察署、交番その他の派出所及び駐在所に掲出して広報に努めること。 (2) 被害情報の収集  光化学公害による被害者を救護した場合、又は被害を受けた旨の届け出を受理したときは、被害発生の日時、場所、被害者の住所、氏名、年齢、性別及び被害の内容を警察本部長(本部主務課を経由。以下同じ。)に報告すること。 (3) 被害者の救護活動 ア 酸素吸入器の活用  気分が悪い等の訴えを受理したときは、酸素吸入器を活用し、被害者の救護活動に努めること。 イ その他の応急措置  目、のど、鼻に刺激や痛みを訴えている場合は、次の応急措置をとらせること。 (ア) 目に刺激や痛みを感じている人は、目を水で洗わせる。 (イ) のど、鼻に刺激や痛みを感じている人は、うがいをさせる。 第8 報告  警察署長は、次の事項について迅速かつ適確に警察本部長に報告すること。 1 特異な公害関係事案等 (1) 特異又は重要な公害事犯及び取締りの及ぼした影響、効果 (2) 公害問題をめぐる諸般の動向 (3) 法令の改正等主管行政庁に対し、要請、申し入れ等の必要があると認められる事項 2 月報  公害苦情処理票、110番受理簿等の資料に基づき、公害苦情受理(処理)状況(第3号様式)及び騒音苦情の受理及び処理状況(第4号様式)により、翌月5日までに報告すること。