○質物の保管設備の基準に関する規則の解釈基準の制定について  (平成4年1月14日 例規第1号 神防発第5号)  この度、質物の保管設備の基準に関する規則(平成4年神奈川県公安委員会規則第1号。以下「規則」という。)が同年2月1日から施行されることに伴い、「質物の保管設備の基準に関する規則の解釈基準」を次のとおり定めたので、適正に運用されたい。 記 1 制定の趣旨  この規則は、これまでの質物保管設備基準(昭和30年神奈川県公安委員会告示第22号。以下「旧基準」という。)が、施行当時の社会情勢を反映して土蔵造主体の告示として施行されたが、その後30余年を経過し、現代の建築様式にそぐわなくなったことから、旧基準の全面的な見直しを行い、近代的な質物の保管設備(以下「保管設備」という。)の基準に整備したものであるが、この規則の円滑かつ適正な運用を図るために解釈基準を制定したものである。 2 規則の要点  (1) 質物の内容に応じた保管設備  旧基準の土蔵造を中心とした画一的な保管設備の基準を排除し、質物の種類に応じた保管設備が設置できるよう基準の見直しを図った。  (2) 設置場所の緩和  保管設備の設置場所は、原則として営業所と同一敷地内とし、やむを得ない事情があり、質物の管理に支障ない場合には、営業所に近接する場所に設置できることとした。  (3) 防湿構造の合理化  保管設備の内壁、床等は、原則として防湿効果の高い板張りとし、防湿措置を必要としない質物については、除湿機等の使用をもって、防湿構造に準ずる扱いとした。  (4) 防火設備の統一  保管設備の主要構造部(壁、柱、床、はり及び屋根をいう。)は、建築基準法(昭和25年法律第201号)に定める耐火構造に統一した。  (5) 盗難予防設備の合理化  保管設備の開口部は、鉄格子に限定せずシャッター、鉄製扉等の設備も認め、更に保管設備の盗難予防の補助設備として、非常警報装置の設置を義務付けた。  (6) 防そ設備の合理化  保管設備の防そ設備は、従来のしんちゅう製金網に限定せず、ねずみの侵入防止のための設備であれば、金網、ねずみ返しなど種類、材質等を問わないこととした。  (7) 仮保管設備の新設  保管設備の建替え、補修等を行う場合は、基準を緩和した仮保管設備の使用を認めた。 3 運用上の留意事項  (1) 規則は、質屋営業法(昭和25年法律第158号)第7条の規定に基づいて施行されたものであり、この規則に基づく保管設備の設置が、質屋の許可要件であることに留意すること。  (2) 保管設備に関する書類の適正な審査  質屋営業法施行規則(昭和25年総理府令第25号)第2条又は第9条に規定する質屋の許可申請書又は保管設備の変更届出書を受理したときは、これらの条項に規定する保管設備に関する書類(以下「添付書類」という。)が適正か否かを的確に審査すること。  (3) 現地調査による確認  保管設備に関する現地調査は、添付書類の記載内容と保管設備の内容が一致し、更に規則に定める基準を満たしていることを確認すること。  なお、添付書類の記載内容に不備があり、又は不適合の保管設備を発見したときは、適切に指導し、修正又は改善の措置を講じたことを再確認すること。  (4) 知識技能の習得等  保管設備に関する解釈基準の知識を十分習得し、関係者等から相談等があった場合は、適切に指導すること。  (5) 旧基準の適用  附則において、規則の施行の際現に質屋営業を営んでいる者又は規則の施行時において、質屋の許可申請をしている者の使用に係る保管設備については、旧基準が適用されるので留意すること。  (6) 添付書類の簡素化  次に掲げる添付書類は、現状に即し内容が具備されているものであれば、申請者等が作成したものでも差し支えないこと。  ア 構造概要書(保管設備の仕様を記載したもの)  イ 図面(保管設備の平面を記載したもの)  ウ その他の書類(保管設備の立体図及び営業所と保管設備の関連を記した略図)  質物の保管設備の基準に関する規則の解釈基準 1 基本的な考え方  質物保管設備基準(昭和30年神奈川県公安委員会告示第22号。以下「旧基準」という。)は、質物の保管設備(以下「保管設備」という。)の床面積、容積等(以下「規模」という。)の数値を具体的に規定していたが、その理由は、旧来から、質屋の保管設備には「土蔵造」が多く、これには一定の規模を備えていたこと、取り扱う質物が戦後の一時期においては、衣類、道具類等大型の物品(以下「大型物品」という。)が多かったことなど、当時の社会的背景を考慮して、土蔵造を中心に規定されたものである。  その後、社会の変革によって質屋の営業内容も大きく変化し、このため旧基準は、現代の営業内容に応じ必要かつ十分な保管設備の規模を設けようとする場合の妨げとなり、反面基準を満たせば、現実に取り扱っている質物の保管に適応しないものであっても、適正な保管設備として認められる不合理もあったことから、規則は、保管設備の規模については、画一的な数値による矛盾を排除し、営業実態に即した合理的な規定の必要から、規則が定められたものである。 2 設置場所について(第2条関係)  保管設備を設置する建物、敷地等が狭あい等やむを得ない事情があり、かつ、質屋を適正に営業し、質物の管理も適切であることを要件として、同一敷地でない場合であっても支障ないと認められるものについては、保管設備を営業所に近接する敷地内に設けることを認めたものである。  なお、適正な距離の範囲については、営業所及び保管設備が置かれている位置、規模、営業者の管理能力等の状況を総合的に勘案し、個々に決定しなければならない。  旧基準は、運用により営業所と保管設備は、原則として同一敷地内とした。その理由は、保管設備と営業所との間に距離がある場合には、盗難予防等の管理面に問題があったためである。 3 規模について(第3条関係)  「営業の内容に応じた適正なもの」とは、例えば貴金属、有価証券等小型の物品(以下「小型物品」という。)の質物を専門に取り扱う質屋については、耐火金庫(耐火性の要件を満たすものをいう。以下同じ。)を保管設備とすることができる。  耐火金庫を保管設備とする場合にあっては、容易に持ち運びができない重量のもの、又は建物の床面に固定する等盗難予防の措置を確実に講じなければならない。  持ち運び可能な耐火金庫については、盗難予防措置が不備であり、適正な保管設備とはいえない。移動可能なロッカー、キャビネット等の事務器等も同様である。  なお、小型物品を取り扱う質屋と称し、小型の耐火金庫のような保管設備を設け、現実は、当該保管設備に保管できない大型物品を取り扱っている場合にあっては、質屋営業法(昭和25年法律第158号)第7条第3項の規定に違反し、同法第25条第1項第4号の規定により行政処分の対象となる。 4 防湿構造について(第4条関係)  保管設備の内部は、原則として防湿効果の高い板張り構造とし、貴金属、有価証券等必ずしも厳格な防湿措置を必要としない物品の保管設備については、防湿機等の防湿機器の設置も、板張り構造同様の防湿構造と見なされる。また、防湿構造の措置が講じられていれば、保管設備を地下に設けることも差し支えない。  旧基準は、防湿構造の具体的な方法として、床が地盤面上に近接する場合は、防湿構造とするか又は地盤面から60センチメートル以上離し、内壁及び床の仕上げは、板張りとするか防湿上差し支えない構造と規定し、防湿構造が一律に規定されていた。 5 防火設備について(第5条関係) (1) 主要構造部(第1項)  第1号については、新たな質屋営業の許可申請に係る保管設備の主要構造部(壁、柱、床、はり及び屋根をいう。以下同じ。)は、耐火構造でなければならない。防火構造を認めた場合は、モルタル造等防火に弱い保管設備も含まれることから、保管設備の主要構造部については、すべて建築基準法(昭和25年法律第201号)第2条第7号に規定する耐火構造に統一したものである。  第2号については、旧基準の規定により防火設備を適用して設置された保管設備に係る質屋営業所を相続、譲渡等の事由によって取得した者が、当該保管設備を使用して質屋営業の許可を受ける場合は、前号にかかわらず当該保管設備の使用を認めたものである。  旧基準は、保管設備の壁体、屋根等は、建築基準法施行令(昭和25年政令第338号。以下「政令」という。)第107条の規定による耐火構造又は同第108条の規定による防火構造とし、更に横浜市、川崎市及び横須賀市にあっては、耐火構造又は土蔵造等地域によって異なる規定となっていた。  なお、土蔵造については、定義はなく政令第108条第2号ホの規定のとおり、固有の概念として使用されているものである。 (2) 開口部(第2項)  保管設備の開口部は、すべて政令第109条第1項に規定する甲種防火戸又は乙種防火戸でなければならない。  旧基準は、保管設備の開口部については、金庫扉又はこれに準ずる鉄製扉若しくは土蔵扉とし、構造等の数値を具体的に規定していたが、これらの種類、数値等は、現代の建築様式に必ずしも適合せず合理性に欠けていたものである。  なお、政令第110条第1項及び第2項の規定は、土蔵造の戸について「甲種防火戸は厚さ15センチメートル以上のもの」、「乙種防火戸は厚さ15センチメートル未満のもの」と規定している。 6 盗難予防設備について(第6条関係) (1) 開口部(第1項)  シャッター、鉄製扉等侵入防止に有効な設備又は堅牢な施錠設備等を設置しなければならない。  錠前、鉄格子等も人の侵入防止のために有効な設備である。侵入防止のために有効な設備とは、人の侵入を物理的に阻止できる物的設備をいうから、非常警報装置等の設備は、侵入防止のための有効な設備とはいえない。  旧基準は、保管設備の出入口の扉には堅牢な錠前を、出入口以外の開口部(窓、換気口等をいう。以下同じ。)には、堅牢な鉄格子を設けなければならないとし、鉄格子の直径等の数値も具体的に規定していた。 (2) 非常警報装置(第2項)  第1項の「侵入防止のための有効な設備」が十分施設されていても、これらの設備の管理方法等が不備であるため、質物が盗難に遭うことが予想される。  その不備を補うため、盗難予防設備と併用して、保管設備には非常警報装置の設置を義務付けたものである。この項の非常警報装置とは、機械警備のように高度なものの必要はなく、非常時に警報を発するベル、サイレン、ブザー等のような簡易な装置をいう。  なお、この非常警報装置が保管設備に近接する営業所、自宅、他店舗等に設置され、保管設備に設置されたものと同様の効果を有するものと認められる場合には、保管設備に設置する必要はない。 7 防そ設備について(第7条関係)  金網等ねずみの侵入を防止するための有効な設備であれば、金網、ねずみ返し等設備の種類、材質、数値等は問わない。  防そ設備は、物理的にねずみの侵入を防止する設備をいうから、捕獲器、侵入防止センサー、防そ剤等は含まない。  旧基準は、出入口以外の開口部には、しんちゅう製の金網を設置することとし、当該金網の網目や網目線の径の数値が具体的に規定されており、この土蔵造の旧基準が質屋に対し、無用の負担を課す規定となっていたものである。 8 特例措置について(第8条関係) (1) 仮保管設備の特例措置は、保管設備の補修、建替え等に要する2年以内の期間に限り、その使用を認めたものである。  仮保管設備は、本則の保管設備の基準を除外し、次のような特例がある。 ア 第3条の規模の規定は、適用しない。 イ 火災警報装置等の防火上の措置が講じられている場合は、第5条第2項の防火戸の規定は、適用しない。 ウ 通常の施錠設備があれば第6条第1項の鉄製扉等侵入防止のために有効な設備の設置の規定は、適用しない。 エ 第7条の防そ設備の規定は、適用しない。 (2) 仮保管設備の形態  想定される仮保管設備は、他の質屋が所有する保管設備、主要構造部が耐火構造である鉄筋コンクリート造のビル、マンション、アパート、倉庫等(以下「利用施設」という。)がある。  なお、これらの利用施設については、当然非常警報装置の設置は必要であり、また開口部に甲種防火戸又は乙種防火戸が設けられていない限り、火災警報装置の設置が必要である。 9 附則について (1) 既存の保管設備の保護(2関係)  規則が施行された際、現に質屋営業の許可を受けている者が設けている保管設備及び質屋営業の許可を申請している者の当該申請に係る保管設備については、これらの保管設備が改修されるまでの間は、第2条から第7条までの規定は適用されず、現状のままで使用することができる。  「改修」とは、保管設備の主要構造部について、除去、修繕、模様替え等の工事がその過半を超え又は主要構造部のすべてに対する改築、新築、移築を行った場合をいい、その過半を超えない範囲においての工事は、改修には含まれない。 (2) 改修に至らない保管設備の基準(3関係)  前号が適用される改修に至らない保管設備は、旧基準が適用される。 参考資料 旧質物保管設備基準 1 目的  この基準は、質物を火災、盗難、水害、そ害等から安全に守るため、保管設備の構成その他について定めるものとする。 2 規模 (1) 保管設備の大きさは、有効に使われる部分の床面積が11平方メートル、容積は30立方メートル以上であること。 (2) 前号の床面積の計算には、柵及びこれに似たものは含まないこと。 3 構造 (1) 外周部を構成する壁体、屋根等は、建築基準法施行令(以下「政令」という。)第107条の規定による耐火構造(鉄筋コンクリート造、れん瓦造、石造、コンクリートブロック造をいう。以下同じ。)又は政令第108条の規定による防火構造(土蔵、鉄鋼、モルタル塗、しっくい塗等で規定の塗厚のあるものをいう。)とすること。ただし、横浜市、川崎市及び横須賀市にあっては耐火構造又は土蔵造とし、建築基準法の適用がある建物については、その定めるところによること。 (2) 床は、地盤面上に近接する場合は、防湿構造とするか、又は地盤面から60センチメートル以上離すこと。 (3) 内壁及び床の仕上げは、板張りとするか又は防湿上差し支えない構造とすること。 4 開口部の扉 (1) 外側部に出入口、換気口その他の開口を設けるときは、次の構造とすること。  ア 金庫扉 イ その性能が金庫扉に準ずるもの(厚さ1.5ミリメートル以上の鉄製扉又は15センチメートル以上の土蔵扉)と認められるもの (2) 扉を常時設けることができない開口部には、非常の際、すぐに閉鎖できる別の施設を設けること。 (3) 扉と壁体との密着部は、防火気密になるように設備すること。 5 出入口扉 (1) 出入口の扉には、堅牢な「錠前」を設けること。 (2) 出入口以外の開口部には、その部分の扉の開閉に差し支えない堅牢な鉄格子を設けること。 (3) 前号の鉄格子の鉄棒の径は、1.5センチメートル以上でかつその間は12センチメートル以下とすること。 6 防そ設備 (1) 開口部には取り外し又は開閉できるしんちゅう製の金網を設けること。 (2) 前号の金網は、網目径1.5センチメートル以下とし、網目線の径は0.7ミリメートル以上とすること。 7 水害防止  水害のおそれのある地域に設ける場合は、外壁、床及び開口部は、耐水水密とすること。