〇神奈川県警察被疑者取調べ監督実施要綱の制定について (令和2年5月27日例規第28号/神総発第81号) 改正 令和3年9月1日例規第38号神総発第173号 各所属長あて 本部長 この度、別添のとおり神奈川県警察被疑者取調べ監督実施要綱を制定し、本日から施行することとしたので、運用上誤りのないようにされたい。 別添 神奈川県警察被疑者取調べ監督実施要綱 1 趣旨  この要綱は、被疑者取調べ適正化のための監督に関する規則(平成20年国家公安委員会規則第4号。以下「規則」という。)に定めるもののほか、神奈川県警察における被疑者取調べの監督に関し、必要な事項を定める。 2 基本的配意事項  被疑者取調べの監督に当たっては、規則第2条の留意事項を厳守するとともに、保秘を徹底しなければならない。 3 定義等  被疑者取調べの監督における用語の意義は、それぞれ次のとおりである。 (1) 被疑者取調べ  取調べ室(これに準ずる場所を含む。以下同じ。)において警察官が行う刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)に基づく被疑者又は被告人(以下単に「被疑者」という。)の取調べをいい、被疑者の身柄拘束の有無及び年齢を問わない。触法少年に係る事件の調査は、刑事手続ではないから被疑者取調べに当たらない。 (2) 取調べ室  警察施設内に設置された施設であって、取調べ室又はこれに類する呼称を付され、主として被疑者取調べのために使用されているものをいう。 (3) これに準ずる場所  取調べ室の不足等の理由により、一時的に取調べ室の代用として使用する警察施設、拘置所等の施設内の応接室、会議室、警察車両内等をいい、犯罪捜査規範(昭和32年国家公安委員会規則第2号)第182条の2第1項に規定する「これに準ずる場所」と同義である。 (4) 被疑者取調べに携わる警察官  取調べ官、取調べ補助者のみならず、直接、被疑者に対して取調べができる立場にある捜査幹部や一時的に動静監視をしている警察官、通訳人をいう。 4 監督対象行為  規則第3条第2号に規定する監督対象行為への該当性を判断するに当たっての留意事項は、次のとおりである。 (1) 監督対象行為は、不適正な被疑者取調べにつながるおそれがある行為というにとどまるものであって、これが行われた場合の被疑者取調べが直ちに不適正であることを意味するものではない。 (2)「身体に接触すること」には、被疑者を殴打する行為はもとより、例えば、寝ている被疑者の肩に手を掛ける行為や被疑者と握手する行為も該当する。 (3)「やむを得ない場合」には、例えば、暴れ出した被疑者を制圧する場合や急病の被疑者を救護する場合が該当する。 (4) 被疑者の身体に接触する場合以外の「直接又は間接に有形力を行使すること」には、例えば、被疑者に対してノート類を投げつけたり、誰も座っていない椅子を蹴り上げたりする行為が該当する。 (5)「殊更に不安を覚えさせ、又は困惑させるような言動」には、例えば、被疑者に対して「自白しないと家族を逮捕する。」などと申し向ける行為が該当する。 (6)「一定の姿勢又は動作をとるよう不当に要求すること」には、例えば、被疑者に対して取調べ中に床に正座をするよう要求することが該当する。 (7)「便宜を供与し、又は供与することを申し出、若しくは約束すること」には、例えば、「自白すれば逮捕しない。」などと約束したり、身柄拘束中の被疑者に取調べ室内で携帯電話により外部と連絡させたりする行為が該当する。 (8)「人の尊厳を著しく害するような言動」には、例えば、被疑者やその家族等の身体的特徴をあげつらったり、その信条や思想を侮辱したりする行為が該当する。 5 取調べ監督官 (1) 規則第4条第1項の規定により指名する取調べ監督官は、警察本部にあっては警察本部長(以下「本部長」という。)が指名する神奈川県警察取調べ監督室(以下「取調べ監督室」という。)の警部以上の階級にある警察官とし、警察署にあっては警察署長(以下「署長」という。)が指名する警察署警務課の警部の階級にある警察官とする。 (2) 取調べ監督官は、規則第4条第2項に規定する職務のほか、警察職員に対する被疑者取調べ監督制度に関する指導教養を行う。 6 監督補助者 (1) 取調べ監督官の職務を補助する者(以下「監督補助者」という。)は、総務課長(以下「総務課長」という。)が取調べ監督室の警部、警部補及び巡査部長の階級にある警察官のうちから適当と認められる者を本部長に上申する。 (2) 神奈川県警察鉄道警察隊、神奈川県警察第一交通機動、神奈川県警察第二交通機動隊及び神奈川県警察高速道路交通警察隊(以下「本部執行隊」という。)の監督補助者は、各所属の長が自所属の警部及び警部補の階級にある警察官のうちから選任し、本部長(総務課長経由)に上申する。 (3)本部長は、前2号の上申に基づき監督補助者を指名する。 (4)警察署の監督補助者は、警察署警務課の警部補及び巡査部長の階級にある警察官のうちから適当と認める者を指名する。 (5) 当直時間帯における警察署の監督補助者は、当直主任をもって充てる。 (6) 本部執行隊の監督補助者の指名に関する事務は、取調べ監督室で行う。 7 連絡  取調べ監督官と捜査主任官(犯罪捜査規範(昭和32年国家公安委員会規則第2号)第20条に規定する捜査主任官をいう。以下同じ。)は、被疑者取調べの監督について、相互に緊密な連絡を保たなければならない。 8 取調べ状況の確認等 (1) 規則第6条第1項の規定により取調べ監督官が行う被疑者取調べ状況の確認は、全ての被疑者取調べを対象とする。 (2)規則第6条第1項に規定する「その他の方法」には、取調べ室の外部からの視認等がある。ただし、視認については、別に定める例外的な場合に限り行う。 (3) 取調べ監督官は、取調べ室の外部から視認を実施した場合は、その結果について、別に定めるところにより監督所属の長(警察本部の取調べ監督官にあっては総務課長、警察署の取調べ監督官にあっては署長。)に報告する。ただし、特異事項がない場合は、監督所属の長への報告を要しない。 (4) 取調べ監督官は、(1)の確認を行った際に監督対象行為があると認めた場合には、当該被疑者取調べに係る捜査主任官に対し、被疑者取調べの中止その他の措置を求めることができる。この場合において、捜査主任官は、速やかに必要な措置を講ずるものとし、その結果を当該取調べ監督官に通知するとともに、通知を受けた取調べ監督官は、別に定めるところにより監督所属の長に報告する。 (5) 取調べ監督官は、規則第6条第4項の規定により自ら被疑者取調べの中止その他の措置を講じたときは、速やかにその旨を捜査主任官に通知するとともに、別に定めるところにより監督所属の長に報告する。 (6) 取調べ監督官は、(1)の確認を行った結果、監督対象行為に該当するか判然としない行為(以下「要確認行為」という。)を認めたときは、捜査主任官に当該確認の結果を通知するとともに、別に定めるところにより監督所属の長に報告する。 (7) 監督補助者は、(1)の確認を行った結果、監督対象行為又は要確認行為を認めたときは、取調べ監督官に当該確認の結果を報告し、報告を受けた取調べ監督官は、(4)から(6)までの所要の措置を講ずる。 9 苦情の通知 (1) 警察職員は、被疑者取調べに係る苦情又は要望、意見等(以下「苦情等」という。)について、捜査員が申出を受けたときは捜査主任官に、留置担当官が申出を受けたときは留置主任官に、その他の警察職員が申出を受けたときはその上位の職にある警察職員に、それぞれ報告することとし、報告を受けた者は、速やかに、自所属の取調べ監督官にその旨及びその内容を通知する。当該通知を受けた取調べ監督官は、当該通知が他所属の取調べ室における被疑者取調べに係るものであるときは、当該他所属の取調べ監督官にその旨及びその内容を通知する。 (2) (1)の通知を受けた取調べ監督官は、速やかにその旨及びその内容を所属の長に報告するとともに、所属の長は、苦情等の申出内容について、速やかに総務課長及び当該苦情等に係る事件の捜査を主管する本部の所属の長(以下「主管所属長」という。)に通知する。 (3) (2)の通知を受けた総務課長は、当該所属の長及び主管所属長と連携を図りながら、事実関係の確認を行う。 10 巡察 (1) 規則第8条第1項に規定する巡察官は、取調べ監督室の警部の階級にある警察官のうちから本部長が指名する。 (2) 8(3)から(6)までの規定は、巡察官が行う巡察について準用する。 11 取調べ調査官  規則第10条第1項に規定する取調べ調査官は、取調べ監督室の警視の階級にある警察官のうちから本部長が指名する。 12 監督実施状況の報告  本部長は、被疑者取調べの監督の実施状況を毎年1回以上、神奈川県公安委員会に報告しなければならない。ただし、必要があると認めるときは、その都度速やかに報告する。 13 都道府県警察間の協力  都道府県警察間における被疑者取調べの監督業務に関する協力については、相互主義の観点から適切に行う。 附則 附則(令和3年9月1日例規第38号神総発第173号)