別添1 本事案に関係する県警察の職員については以下の表のとおりであり、特定の職員について言及する必要がある場合は当該表に記載された表記を用いることがある。 【表 関係する県警察職員】 令和6年6月~令和7年4月までの事案の経過  6月13日~7月5日 事案1(DV事案)  9月20日~11月22日 事案2(DV、つきまとい等事案)  12月9日~12月20日 事案3(被害者からの電話等)  12月22日~24日 行方不明認知時の初動対応  12月24日~令和7年4月30日 初動対応後の行方不明者発見活動 臨港署  署長  副署長   a1副署長 (~令和6年9月4日)   a2副署長 (令和6年9月5日~)  生活安全課   b1生活安全課長(~令和7年3月12日)   b2生活安全課長(令和7年3月13日~)   生活安全課員d(対処副責任者)   生活安全課員e(対処要員)   生活安全課員f(対処要員)   生活安全課員g(対処要員)   生活安全課員h(対処要員)   生活安全課員i(対処要員)  刑事課   c1刑事課長(~令和6年12月9日)   c2刑事課長(令和6年12月10日~令和6年12月31日)   c3刑事課長(令和7年1月1日~令和7年3月12日)   c4刑事課長(令和7年3月13日~)   刑事課員j(対処副責任者)   刑事課員k   刑事課員l   刑事課員m(対処要員)   刑事課員n(対処要員)   刑事課員o   刑事課員p(対処要員)   刑事課員q(対処要員)  警務課   警務課員r  警備課   警備課員s   警備課員t  地域課   地域課員u   地域課員v   地域課員w   地域課員x 本部  本部長(令和6年8月8日~)  生活安全部長   A1生活安全部長(~令和7年3月20日)   A2生活安全部長(令和7年3月21日~)  人身安全対策課   C1人身安全対策課長(~令和7年3月20日)   C2人身安全対策課長(令和7年3月21日~)   D1管理官(~令和7年3月12日)   D2管理官(令和7年3月13日~)   課員    E1警視(~令和7年3月12日)    E2警視(令和7年3月13日~)    F警視    G警部    H警部    I警部    J警部    K警部  刑事部長   B1刑事部長(~令和7年3月30日)   B2刑事部長(令和7年3月31日~)  捜査第一課   捜査第一課長(~令和7年3月20日)   課員    L警視    M警部  広報県民課   広報県民課長(~令和7年3月20日)   課員    N警視    O警視    P警部 行方不明事案認知前(令和6年6月13日~令和6年12月21日)の対応 【事案1(DV事案)(6月13日~7月5日)】  6月13日 (臨港署の対応(臨場時の対応))  令和6年6月13日午前3時30分頃、被害者から臨港署に対して、「被疑者とけんかになり、服を破られた」旨の電話による通報があり、当直員である生活安全課員gほか計6名が臨場した。  生活安全課員gらは被疑者及び被害者から事情聴取し、両者に対して口頭指導を行うとともに、被害者を祖母に引き渡した。  当該事案の内容と対応状況については、署長まで報告された。 (本部人身安全対策課への報告・同課による指導・助言)  同日、生活安全課員gは、臨場時に本部人身安全対策課にDV事案を認知した旨を報告(第一報及び第二報)し、同課は親族に対する連絡を行うよう指導した。  その後、同日中に対応状況についても同課に報告(第三報)し、同課は、今後、被疑者と被害者が交際を解消しているようであれば、ストーカー規制法の運用について検討するよう指導した。 7月5日 (臨港署の対応(事案1の結了))  7月5日、臨港署においては、その後(注釈 被疑者からは7月4日、被害者からは7月5日にそれぞれ聴取した。)、被疑者及び被害者に連絡し、トラブルが生じていないことを確認するとともに、被害者の父親等を交えた話し合いにより交際を解消した旨の申立てがあったことを踏まえ、危険性・切迫性が低下したと判断し、署長までの決裁を経て、事案1につき結了とした。 【事案2(DV、つきまとい等事案)(9月20日~11月22日)】 9月20日~10月23日 (臨港署の対応(臨場時の対応及び捜査の状況))  9月20日午後0時15分頃、被害者の父親から臨港署に対して、「被害者が被疑者から暴行を受けた」旨の電話による通報があり、生活安全課員d、刑事課員m及びpほか計6名が、被害者が所在する被害者祖母宅に臨場した。  生活安全課員dは、被害者から事情聴取したところ、被害者は、  ○ 被疑者と再度交際しているものの、9月17日にけんかとなり、被疑者に交際を解消したいことを伝えた  ○ 9月19日、被疑者に公園に連れて行かれ、顔を蹴られたり、手の甲を殴られたり、刃物を突きつけられたりした 旨を申し立てた。  当該申立てを踏まえ、刑事課員m及びpは被害者から暴行等の被害届の提出を受け、所要の初動捜査(注釈 具体的には、供述調書の作成、被害者の負傷部位等の写真撮影、実況見分等を行った。)を行い、被害者の父親に対し、これまでの対応状況や捜査方針を説明した上で、同人の自宅に被害者を避難させることを確認した。  10月4日、刑事課員m及びpは、臨港署において被疑者の取調べを実施したものの、被疑者は暴行等について否認し、被害者及び被疑者からの各聴取内容は整合しなかった。  臨港署は、初動捜査以降、強制捜査の実施に向けた捜査を進めていたが、犯行時の防犯カメラ映像等の客観証拠がないこと、被害者の供述と被疑者の供述が整合しないこと、被害者の供述の裏付けが取れなかったことなどから、同月8日までには、任意捜査を継続(注釈 被害者、被害者親族及び被疑者親族からの事情聴取、被疑者の取調べ、防犯カメラ映像の確認等の捜査を継続した。)し、慎重に捜査を尽くす方針に変更した。  同月23日、生活安全課員iは、臨港署において被疑者に対し、被疑者が被害者に接近することを防ぐため、ストーカー規制法における規制行為について指導書を用いて説明して口頭指導するとともに、被疑者は上申書を提出した(注釈 指導書は、ストーカー規制法における規制行為等が記載されており、口頭指導の効果を高めるため、県警察において実務上使用されている。上申書には、「被害者と復縁する気はなく、被害者に連絡をしたり、会ったりしない」旨が記載されている。)。 当該事案の内容と対応状況については、署長及びa2副署長(以下「署長等」という。)に随時報告され、署長は、生活安全課及び刑事課に指示(注釈 9月20日、生活安全課に対しては、緊急性等に係る更なる総合的な検討、被害者の安全確保及び適切な対応等を、刑事課に対しては、防犯カメラ映像の入念な確認等を指示した。)した。 (本部人身安全対策課への報告・同課による指導・助言)  9月20日、生活安全課員dは、臨場時に本部人身安全対策課にDV事案を認知した旨を報告(第一報)し、同課は、被害者の保護及び経過連絡を実施するよう指導した。  また、同日、生活安全課員hが臨場後、対応状況について同課に報告(第二報及び第三報)し、同課は、ストーカー規制法の適用を検討することや刑事課と連携して対処するよう指導した。 10月23日~30日 (臨港署の対応(被害届の取下げ))  10月23日、被害者から電話があり、刑事課員pが対応したところ、   ○ 被疑者からは平手打ちを1回された程度で、刃物を突きつけられていない   ○ 父親や祖母には大げさに言った   ○ 被害届を取り下げたい  旨を申し立てた。刑事課員pは、被害者に対し、被害届を本当に取り下げていいのかと申し向けるも、被害者はまた連絡する旨を申し立てて電話を切った。  同月29日、生活安全課員d及び刑事課員pは、警察車両内で被害者と面接し、同月23日に被害者が刑事課員pに申し立てた内容と同旨の事項について被害者から聴取した。その際、生活安全課員d及び刑事課員pは、被害者に対し、   ○ 被疑者と再度トラブルになるおそれがあるため、被害届の取下げは考え直した方がいい   ○ 事件にできるならした方がいい  旨を申し向け説得するも、被害者は、   ○ 今回のことは大げさに話をした   ○ 被疑者から暴力を振るわれたり、刃物を突きつけられたりしていない  旨を申し立てたことから、刑事課員pは被害届の取下げを受理することとした(注釈 このとき、被害者からは、被疑者に脅されて被害届の取下げを強要されている旨の申立てはなかった。一方、被害者の親族は、臨港署から被害届の取下げの連絡を受けて以降、「被害者は被疑者に脅されて被害届を取り下げた、その旨臨港署に伝えた」と述べているが、警察で確認した結果、現在まで、被害者が被疑者に脅されて被害届を取り下げたという事実の確認には至っていない。)。  その際、生活安全課員dは、被害者に対し、被害者の方から被疑者に接触するのを防ぐため、ストーカー規制法における規制行為について指導書を用いて説明して口頭指導した(注釈 指導書は、記述注釈に記載の指導書と同様のものである。)。  被害届の取下げについては、署長等に報告され、署長は今後も対応を継続するよう指示した。 (本部人身安全対策課への報告)  被害届の取下げについては、10月30日に本部人身安全対策課に報告した。 10月31日 (臨港署の対応(臨場時の対応))  10月31日午後2時7分頃、被害者の姉から、「被疑者が自宅に入ったのではないか」という旨の110番通報があり、生活安全課員d、刑事課員n及びpほか計6名が臨場した。  生活安全課員d、刑事課員n及びpは、被害者から事情聴取したところ、   ○ 被疑者と復縁したが怖くなり、10月30日に姉宅に避難した   ○ 姉宅に1人でいたところ、居間の扉を開けると廊下に被疑者がいた   ○ 玄関の扉は閉まっており、玄関前の通路に面した部屋の窓から被疑者が入ってきたと思う  旨を申し立てた。  当該申立てを踏まえ、地域課員がマンションの防犯カメラ映像を確認したところ、被疑者とみられる人物がマンション敷地境界部分のフェンス様のものを乗り越えてマンション敷地内に入る様子、その後、被疑者及び被害者が一緒にマンション入口から外に出て行く様子が記録されていた。  被害者が申し立てた室内への侵入経路を刑事課員n及びpで確認したところ、   ○ 窓には格子が設置されており、その一部が外れていたが、人が通過できる隙間はなかった   ○ 窓の室内側にはテレビがあり、侵入するには当該テレビを移動する必要があるところ、当該テレビにはほこりが堆積しているものの指紋や足跡がなかった  ことから、侵入形跡は認められないと判断し、その旨を、姉宅に駆けつけた被害者の父親に説明した。  刑事課員mは、臨港署において被疑者から事情聴取したところ、被疑者は、   ○ 被害者から姉宅に迎えに来てほしいと言われたためマンションに行った   ○ 被害者姉宅玄関のインターホンを鳴らすと、被害者が扉を開けて中に入れてくれた  旨を申し立て、被害者及び被疑者からの各聴取内容は整合しなかった。  その後、被疑者、被害者及び被害者の父親の三者が生活安全課員d、刑事課員m、n及びpの立会いの下で話し合い、被疑者は被害者と別れる旨を申し立てた(注釈 このとき、生活安全課員dは、被疑者に対し、被害者と別れて距離を置くよう口頭指導した。)。こうした状況を踏まえ、事態は沈静化したと判断し、被疑者によるマンション室内への侵入の有無や侵入した場合のその方法は不明のままであったものの、インターホンの録画記録の確認や、被疑者及び被害者からの聴取の継続は行わず、10月31日以降、本件に係る捜査は行わなかった。  当該事案の内容と対応状況については、署長等に報告され、署長は、トラブルが継続する可能性があることから、しばらく対応を継続するよう指示した。 (本部人身安全対策課への報告)  本件の対応については、臨港署から本部人身安全対策課に報告しなかった。 11月5日~14日 (臨港署の対応1(臨場時の対応))  11月5日午後3時10分頃、被害者の姉から臨港署に対して、「被疑者がマンションの駐輪場にいた」旨の電話による通報があり、生活安全課員h及びi並びに刑事課員m及びpほか計7名が臨場した。  生活安全課員h及びiは、その場にいた被害者から、   ○ 外出先から姉宅のマンションに帰ってくると被疑者がいた   ○ 被疑者が復縁したいと言ってきた  旨を聴取し、被害者に避難を申し向けるも承諾を得られなかったため、被害者の父親に連絡するとともに、被害者に対し、被疑者と連絡をしないよう口頭指導し、被害者から上申書(注釈 上申書には、「被疑者のことは好きではないので、絶対に自分から連絡をしたり会ったりはしない」旨が記載されている。)の提出を受け、被害者を姉に引き渡した。  刑事課員m及びpは、臨港署において被疑者から事情聴取したところ、被疑者は   ○ 最後に本音で話がしたかったので被害者に会いに行った   ○ 被害者祖母宅等の被害者関係場所を自転車で回っていたところ、被害者姉宅で被害者に会い、話をした  旨を申し立てた。その際、生活安全課員h及びiは被疑者に対して、今回の行為がストーカー規制法違反になり得る旨を口頭指導し、被疑者から上申書(注釈 上申書には、「今回の行為がストーカー行為に該当することはわかっていた」旨が記載されている。)の提出を受けた。あわせて、被疑者及び被疑者の親族に対し、依存症の治療を受けさせることについて助言し、病院名を教示するなどした(注釈 その後、被疑者が依存症の治療を受けたことは確認できなかった。)。  当該事案の内容と対応状況については、署長等に報告され、署長は、被疑者の親族にも継続して指導するよう指示した。 (臨港署の対応2(警告・禁止命令等に向けた対応及び被害者の所在不明事案))  11月7日、生活安全課員iは、被害者の父親に電話し、同月5日の被疑者の行為についてストーカー規制法に基づく警告又は禁止命令等を行うために被害者に電話で説明したい旨を申し向けた。  被害者の父親との調整の結果、同月11日に被害者に説明する機会を設けることとなったが、同月10日から19日まで被害者が所在不明となったため(注釈 被害者は11月22日に、この間、被疑者と一緒にいた旨申し立てた。)、被害者に説明する機会を設けることができず、警告又は禁止命令等に向けた対応は中断した。  なお、11月10日、被害者の父親から電話を受け、「被害者が行方不明になった」旨を聴取したことで、被害者の所在不明を認知したが、その際、父親は、被害者が自分の意思でいなくなったと判断しているので、行方不明者届は提出しない旨を申し立てた。  同月11日、被害者姉宅マンションの防犯カメラの映像を確認したところ、同月10日に被害者が1人で同マンションを出て行く様子が記録されていた。  同月14日、生活安全課員d、h及びiは、被疑者宅に赴き、被害者の所在につき被疑者を聴取するも、「被害者からの連絡はなく、自宅にいない」旨を申し立てたため、被疑者に対し、被害者に近づかないよう口頭指導した。  被害者が所在不明となったこと等については、随時署長等に報告され、署長は、被疑者に連絡がつかないなら親族に電話するよう指示した。 (本部人身安全対策課への報告・同課による指導・助言)  11月5日、生活安全課員iは、臨場時に本事案を本部人身安全対策課に報告(第一報及び第二報)し、同課は、被害者へ経過連絡し、避難措置を講じるよう指導した。  翌6日、生活安全課員iは、対応状況について同課に報告(第三報)し、同課は、被害者の父親への経過連絡をするよう指導した。  また、生活安全課員hは、11月6日頃、同月5日の被疑者によるマンション駐輪場での待ち伏せ行為につき、禁止命令等の実施可否を本部人身安全対策課に相談した。同課は、要件を満たしていることが確認できれば、当該行為での禁止命令等の実施も可能である旨を回答するとともに、まずは、被害者の意向の確認をするよう指導した。  なお、同月10日に被害者が所在不明となった点については、臨港署から本部人身安全対策課に報告しなかった。 11月19日~同月22日 (臨港署の対応(事案2の結了))  11月19日、被疑者から生活安全課員iに対して電話があり、被疑者及び被害者の両者が、「現在一緒におり、復縁した」旨を申し立てた(注釈 このとき、被疑者及び被害者に対し、交際関係を継続するのであればトラブルを起こさないよう口頭指導した。)ことから、同月22日の来署を求めた。  同日、被害者及び被疑者が臨港署に来署し、生活安全課員h及びiが対応した。その際、被害者は、   ○ 11月10日に被疑者に会い、復縁し、以後被疑者宅にいる   ○ 同月14日に警察が被疑者宅に来た際は2階の部屋の押し入れに隠れていた   ○ 警察が被疑者宅に来たので隠しきれないと思い、被疑者が同月19日に警察に電話した   ○ 被疑者から、電話の前日である18日に私(被害者)が被疑者宅に行ったことで話を合わせようと言われた   ○ 被疑者と今後も交際したい  旨を申し立て、被疑者も同旨の内容を申し立てた。  生活安全課員h及びiは被害者に対し、被害者が自ら被疑者に連絡を取っていることからストーカー規制法に基づく禁止命令等を実施することはできない旨を説明し、被害者は了承した。その後、生活安全課員h及びiから、被害者及び被疑者に対し、交際の解消等 について助言し、その上で両者に今後の方針を尋ねるも、双方共に交際を解消する気はない旨を申し立てた。  また、生活安全課員hは被害者の父親に電話し、被害者及び被疑者からの聴取内容を伝達(注釈 被害者の父親は、この電話の際、被害届の取下げだけを聞いたが、被害者と被疑者が復縁する話は後日聞いたと思う旨述べている。)したところ、警察に対する要望はない旨申し立てた。  11月19日及び同月22日、上記の経過については、署長等に報告されるとともに、   ○ 被害者及び被疑者に対して交際解消等を説得するも両者において復縁の意思は変わらなかったこと   ○ 被害者の父親にも両者が復縁した旨を連絡し、特段の要望がなかったこと  を踏まえ、事案2を結了とする方針で署長等に指揮伺いがなされた。署長は、これまで被害者の父親の意向が確認できていなかったため、事案2を継続としていたが、父親も納得し、復縁の申立てもあることをもって結了を了承した。 (本部人身安全対策課による指導・助言)  事案2の結了に際し、臨港署は本部人身安全対策課からの事前の指導・助言は受けていなかった。 【事案3(被害者からの電話等)(12月9日~12月20日)】  12月9日から同月20日にかけて、被害者から臨港署に対し、以下に図示したとおり計9回の電話があった(注釈 令和7年4月3日、被害者の親族らが臨港署に対して、被害者が臨港署に9回電話をかけた通話履歴を提示したことによって、本件9回の電話が判明した。)。ただし、事案3については第3の3のとおり記録が作成されていないため、以下の内容については関係者からの聴取結果に基づくものであり、うち3回の電話内容については、どの警察官が受理したのかも含め、判然としなかった。 【図:12月9日~20日の被害者からの電話状況(注釈 被害者の親族らから提供を受けた資料を基に、警察において調査の上作成したもの。)】 1 12月9日  通話時間 18時35分~18時54分  受理者 生活安全課員i  電話内容   ・被疑者から連絡がくる   ・自分が居住している祖母宅の周りを被疑者がうろついていた   ・被疑者に対して自分から連絡をした方がいいのかどうか 2 12月9日  通話時間 19時7分~19時19分  受理者 生活安全課員i  電話内容   ・被疑者に連絡しない方がいいことはわかった   ・現在は警察から被疑者に話をしなくていい   ・警察署には行けない 3 12月10日  通話時間 5時6分~5時8分  受理者 警備課員t  電話内容(概要)  ・生活安全課員iはいるか  ・現在、相手の家の前にいるがどうしたらいいか 4 12月11日  通話時間 12時49分~12時52分  受理者、電話内容(概要) 不明 5 12月12日  通話時間 4時14分~4時23分  受理者 警務課員r  電話内容(概要)  ・生活安全課員iはいるか  ・被疑者が自宅(被害者の祖母宅)付近をうろついていて怖いので、警察署に電話をした 6 12月16日  通話時間 14時7分~14時9分  受理者、電話内容(概要) 不明 7 12月19日  通話時間 10時10分~10時13分  受理者 地域課員x  電話内容(概要)   午前10時頃に臨港署から電話した、自転車盗の被害届の訂正連絡に対する、被害者からの折り返しの電話 8 12月19日  通話時間 21時52分~21時53分  受理者 不明  電話内容(概要)   生活安全課員i宛て(用件不明) 9 12月20日  通話時間 7時10分~7時12分  受理者 警備課員s  電話内容(概要)   生活安全課員i宛て(用件不明) 12月9日 (被害者からの電話1・2)  12月9日午後6時35分から午後6時54分までの間、被害者から臨港署に電話があり、当直勤務中の生活安全課員iが対応した。  生活安全課員iによると、被害者は、   ○ 被疑者から連絡がくる   ○ 自分が居住している祖母宅の周りを被疑者がうろついていた   ○ 被疑者に対して自分から連絡をした方がいいのかどうか  旨を申し立てたため、生活安全課員iは、   ○ 被害者から被疑者には連絡をしない   ○ 警察から被疑者に注意をしたい   ○ 被害者から話を聞きたいので、警察署に来てほしい  旨を申し向けたところ、被害者は再度連絡する旨申し立て、一旦電話を切ったとのことであった。  同日午後7時7分から午後7時19分までの間、再度被害者から臨港署に電話があり、生活安全課員iが対応した。  生活安全課員iによると、被害者は、   ○ 被疑者に連絡しない方がいいことはわかった   ○ 現在は警察から被疑者に話をしなくていい   ○ 警察署には行けない  旨を申し立てたため、生活安全課員iは、話を聞きたいので警察署に来てほしい旨を再度申し向けるも、被害者から承諾が得られなかったため、同様のことがあれば連絡するよう申し向けて電話を切ったとのことであった。  生活安全課員iによると、電話の内容から、被害者と被疑者の間で何らかのトラブルが発生したと認識したものの、電話での被害者の話しぶりが落ち着いていたことから切迫性はないと認識したとのことであった。他方で、電話の内容を踏まえると、人身安全関連事案に該当する可能性があると認識し、被疑者の行為につき被害者から詳細を聴取する必要があると認識したが、対面での聴取を明確に断られたため、人身安全関連事案には該当しないと判断し、人身安全関連事案として報告しなかったことに加え、電話で相談を受けた内容についても警察相談受理票による記録化(注釈 人身安全関連事案については、県通達A及びBに基づき記録化することとされており、かつ、警察相談に該当するものについては、警察相談受理票により記録することとされている(相談取扱規程第16条第1項)。)を行わなかった。  翌朝、生活安全課員iは、電話の内容及び人身安全関連事案として取り扱わないことを対処副責任者である上司の生活安全課員dに報告したところ、生活安全課員dは、これまでの被害者及び被疑者の対応の経緯を踏まえると、両者の話は短期間のうちに二転三転する可能性があると考え、まず被害者本人から直接詳細を聴取する必要があるとして、報告のとおり、本件電話については人身安全関連事案には該当しないと判断し、人身安全関連事案として取り扱わないこととした。  電話1・2については、署長等に報告されなかった。 12月10日 (被害者からの電話3)  12月10日午前5時6分から午前5時8分までの間、被害者から臨港署に電話があり、当直勤務中の警備課員tが対応した。  警備課員tによると、被害者は氏名を告げた上で、生活安全課員iが在署しているかを尋ねた後、   ○ 現在、相手の家の前にいるがどうしたらいいか  という旨を申し立てたとのことであった(注釈 警備課員tによると、被害者がどのような経緯や理由で、被疑者の家の前に赴いたのかは、特に聞いていないとのことであった。)。 警備課員tは、被害者がトラブルの相手方と接触しようとしているものと考え(注釈 警備課員tによると、前日の生活安全課員iと被害者の電話を隣で聞いていたため、被害者が被疑者とトラブルを抱えていることを認識していたとのことであった。)、被害者に対し、   ○ 生活安全課員iは不在である   ○ トラブルになるので被疑者宅から離れた方がよい   ○ 生活安全課員iに折り返し電話させる  旨を申し向けたところ、被害者はそれを了承し、電話を切ったとのことであった。  時刻不明なるも同日、生活安全課員iが被害者に折り返しの電話をしたところ、被害者は、   ○ 被疑者が自転車を返してくれない   ○ 被疑者を自転車盗で逮捕してほしい  旨を申し立てたとのことであった。  生活安全課員iによると、被疑者が自転車を盗んだか否かが明白でないため直ちに逮捕することはできない旨を申し向けたところ、被害者は被疑者を逮捕するよう何度も申し立て、生活安全課員iと押し問答のような状態となり、最後に被害者が「もういい」旨を申し立て、電話を切ったとのことであった。  すぐに生活安全課員iが被害者に電話するも、被害者は電話に出なかったとのことであった。  生活安全課員iは、話の途中で電話を切られたことから、被害者の真意が判然としないと考え、電話内容等につき、警察相談受理票による記録化を行わなかった。  電話3については、署長等に報告されなかった。 12月11日 (被害者からの電話4)  12月11日午後0時49分から午後0時52分までの間、被害者から臨港署に電話があった。当時電話を受けた可能性のある職員全員に聴取したが、この電話の受理者の特定には至らなかったため、電話の内容も判然としなかった。 12月12日 (被害者からの電話5)  12月12日午前4時14分から午前4時23分までの間、被害者から臨港署に電話があり、当直勤務中の警務課員rが対応した。  警務課員rによると、被害者は自らの氏名を告げた上で、生活安全課員iが在署しているかを尋ねた後、被害者は、   ○ 被疑者とのトラブルで臨港署に相談をしている   ○ 被疑者が自宅(注釈 正しくは被害者祖母宅。以下12月12日に係る記載において同じ。)付近をうろついていて怖いので、警察署に電話をした  旨を申し立てたとのことであった。  警務課員rによると、当該申立てを受けて、被害者による過去2回のDV事案に係る相談記録を確認し、被害者と被疑者が11月22日に復縁を申し立て、事案対応が結了されていることを把握した上で、被害者に対し、   ○ 自宅に1人でいるのか   ○ 被疑者の姿は見えるのか   ○ 被疑者はどのような服装をしているのか  を尋ねたところ、被害者は、   ○ 自宅にいるのは1人ではない   ○ 被疑者はうろうろしていたり、たまに姿が見えなくなったりする   ○ 被疑者は黒っぽい服を着ている  旨を申し立てたとのことであった。  警務課員rによると、現に被疑者がうろついている内容の電話であったことから、相談ではなく通報と認識し、生活安全課員fに連絡はしたものの、緊急性や切迫性は認められない事案と判断し、不審者を確保するためパトカーを派遣し、不審者がいた場合は職務質問をして確保する旨を被害者に申し向け、被害者は了承したとのことであった。 (臨港署の対応(自宅付近の警戒))  警務課員rは地域課員に対し、過去にDV事案として取り扱った被害者から、被疑者が自宅付近をうろついている旨の通報があったことを伝え、自宅付近の警戒を依頼した(注釈 被害者からの電話が終了してからパトカーが到着するまで約30分を要している。警務課員rによると、その理由として、被害者の相談歴の確認等に一定の時間を要したとのことであるが、同人は、相談歴の確認等と並行して、速やかにパトカーの派遣を要請するなどの措置を講じなかった。)。同地域課員は、別の地域課員にパトカーで自宅付近を低速で周回させたものの、当該課員から不審者の発見に至らなかった旨の無線報告を受けた。  警務課員rによると、無線報告を受けて被害者に電話し、自宅付近を警戒したものの不審者の発見に至らなかった旨を説明したところ、被害者は謝意を述べて電話を切ったとのことであった。  警務課員rは、不審者が確保されていないことや11月22日に事案対応が結了していたことを踏まえ、人身安全関連事案には該当しないと判断し、人身安全関連事案として報告しなかったことに加え、被害者からの電話の内容や被害者自宅周辺の警戒活動を行ったことについても、警察相談受理票や警察署通報事案受理票による記録化(注釈 人身安全関連事案については、県通達A及びBに基づき記録化することとされており、かつ、警察相談に該当するものについては、警察相談受理票により記録し(相談取扱規程第16条第1項)、警察署通報事案(加入電話等を通じ、警察署通信室に通報される事案で警察措置を要するもの)の措置結果については、警察署通報事案受理票により記録することとされている(運営要領第9条第4項)。)を行わなかった。  生活安全課員fは、被害者からの通報を認知していたが、電話5は、担当者への問い合わせであり、人身安全関連事案には該当しないと判断し、人身安全関連事案として報告しなかったことに加え、警察で相談を受けた内容についても警察相談受理票による記録化を行わなかった。  電話5やその対応については、署長等に報告されなかった。 12月16日 (被害者からの電話6)  12月16日午後2時7分から午後2時9分までの間、被害者から臨港署に電話があった。当時電話を受けた可能性のある職員全員に聴取したが、この電話の受理者の特定には至らなかったため、電話の内容も判然としなかった。 (臨港署の対応(被害届の受理))  12月16日午後4時20分頃、被害者等計3名が来署し、地域課員w及びxが対応した。  被害者らは、   ○ 私(被害者)の自転車が盗まれた   ○ 盗まれた場所は被疑者宅前で、被疑者宅に行く際に自転車を停めた   ○ 自転車を停めた日は交際していたが、その後交際を解消し、自転車を取りに行ったら盗まれていた   ○ 盗んだのは被疑者と思われるので、捕まえてほしい  旨を申し立てた。  地域課員w及びxは、被害者らから被害日時等を聴取し、被害届を受理するも、被疑者が自転車を盗んだ証拠がないと判断し、被疑者の人定事項を聴取しなかった。  また、地域課員w及びxは、被害者らから被疑者によるつきまとい行為に係る申出がなかったことから、人身安全関連事案に関連する事案であるとの認識に至らず、生活安全課に報告しなかった。 12月19日 (被害者からの電話7)  12月19日午前10時10分から午前10時13分までの間、被害者から臨港署に電話があり、地域課員が対応した。  同地域課員によると、当該電話は、午前10時頃に臨港署から電話した、自転車盗の被害届の訂正連絡に対する被害者からの折り返しの電話とのことであり、その後、午後3時頃、地域課員は被害者と直接会い、被害届の訂正に係る手続を行った(注釈 地域課員によると、このとき、被害者から被疑者のつきまとい行為に関する申立てはなかったとのことである。)。  自転車盗の被害届の受理については、署長等に報告された。署長は、被害者に係る被害届であると認識したものの、人身安全関連事案に関連する事案としての認識には至らず、被害者が自転車盗の被害に遭ったという認識にとどまり、特段の指示をしなかった。 (被害者からの電話8)  12月19日午後9時52分から午後9時53分までの間、被害者から臨港署に電話があり、当直員(特定できず(注釈 12月19日当時、当直勤務をしていた職員全員に聴取したが、当該電話の受理者の特定には至らなかった。))が対応した。当該当直員の近くにいた当直勤務中の警務課員は、電話口で話している内容から生活安全課員i宛ての電話であると把握した。  同警務課員は、別件対応のため署から出ようとしていた生活安全課員iに対し、被害者から電話があった旨を伝えた。  生活安全課員iはそのまま署を出発して別件対応に向かい、翌20日午前1時30分頃に帰署し、午前2時40分頃に帰宅したが、この間、生活安全課員iは、被害者に対し、折り返しの電話をしなかった。 12月20日 (被害者からの電話9)  12月20日午前7時10分から午前7時12分までの間、被害者から臨港署に電話があり、当直勤務中の警備課員sが対応した。  警備課員sによると、被害者は自己の氏名を告げた上で、生活安全課員iが在署しているかを尋ねたとのことであり、同じ当直員の生活安全課員fを通して生活安全課員iの在署状況を確認したところまだ出勤していなかった。警備課員sは被害者に対し、生活安全課員iはまだ出勤しておらず、出勤するのであれば午前8時30分以降になる旨を申し向けたところ、被害者はまた後で連絡する旨を申し立て、電話を切ったとのことであった。  なお、12月20日、生活安全課員iは休暇を取得しており、同日以降、警備課員sは、電話9について生活安全課員iに伝えなかった(注釈 警備課員sは、当直中の生活安全課員fには伝えたと述べているが、生活安全課員fは生活安全課員iには伝えなかった。)。  生活安全課員fは、対処要員として、警備課員sと電話を代わって被害者からの電話に応答せず、また、電話9を生活安全課員iに伝えることもなかった。  電話9については、署長等に報告されなかった。   行方不明事案認知後(令和6年12月22日~令和7年4月30日)の対応 【行方不明事案認知時の初動対応(令和6年12月22日~令和6年12月24日)】 12月22日 (臨港署の対応1(窓ガラス損壊及び被害者の行方不明事案の臨場時の対応))  12月22日午後5時22分頃、被害者の親族から「被害者が滞在する祖母宅の窓ガラスが割れている、12月20日から被害者と連絡が取れない」旨の110番通報があり、当直員である刑事課員o及びq並びに地域課員u及びvの計4名が臨場した(注釈 このとき、最初に臨場した地域課員u及びvは、現場には被害者の親族3名がいたと記憶しているものの、被害者の親族は現場に5名の親族がいたと述べている。)。このとき、刑事課員o及びqは、鑑識用資機材を持参していなかった。  刑事課員oらが室内から目視のみにより確認した結果、祖母宅1階の部屋の窓ガラスに数㎝幅の穴(注釈 窓ガラスの割れた穴の大きさについては、12月22日の被害者祖母宅臨場時に、地域課員vが撮影した窓ガラスの写真と、後日実況見分を実施した際に確認した窓ガラスの寸法とを照らし合わせ算出した結果、縦約7センチメートル、横約5センチメートルであった。一方、被害者の親族は、窓ガラスの割れた穴の大きさについて、縦12~13センチメートルくらい、横5センチメートルくらいであったと述べている。)が開いているのを確認し、クレセント錠直下のレール部分に粉のような細かいガラス片があるのを確認したが、鑑識用資機材を持参していなかったため、計測しなかった(注釈 このとき、刑事課員oらは、窓が閉まっていたと記憶しているものの、被害者の親族は窓が開いていたと述べている。)。また、刑事課員oらによると、その他ガラス片は確認されなかったとのことであった 。さらに、室外の状況を目視のみにより確認した結果、割れた窓ガラスの周囲に親指の爪程度の大きさのガラス片が複数あるのを確認し、割れた窓ガラスの直下にブロック片が2個あるのを確認したとのことであった(注釈 被害者の親族は、警察官が帰った後、室内の壁沿いに四角い大きいガラス片(縦10センチメートルくらい、幅5センチメートルくらい)が落ちていたと述べている。)。加えて、室内、室外に足跡は確認されず、窓ガラスを割るために使用した道具の発見にも至らなかった。この間、刑事課員o及びqは、写真撮影や指紋採取等の鑑識活動を行わなかった。  刑事課員oらは、被害者の祖母から、   ○ 12月20日に被害者から買い物に行く旨の連絡があった後に、被害者と連絡がつかず、家に帰ってこない   ○ 22日まで被害者の帰宅を待っていたが、1階の部屋の窓ガラスが割れていることに気付いた   ○ 最近被疑者が自宅周辺をうろついていたので、ガラスを割って被害者を連れ去ったのではないか  旨を聴取した。  地域課員vは、被害者の祖母から、被疑者が被害者の自宅周辺をうろついていたとされる動画(注釈 当該動画の撮影日時については、地域課員vが当該動画の写真撮影等を行っていないため不明であるが、12月24日に生活安全課員iが被害者の祖母から提示を受けた動画(後に12月12日に撮影されたものと判明)と同一のものとみられる。)の提示を受けたが、動画の撮影等は行わず、動画の存在について刑事課や生活安全課に報告しなかった。  刑事課員qは、被害者の祖母に対し、目視のみにより確認した結果を踏まえ、   ○ ガラス片が室内に比べ室外に多く散乱していること等から、室内側から窓ガラスが割れている可能性がある   ○ 内側から割れている場合、被害者自身が何らかの理由で割った可能性がある  旨を説明したとのことであり(注釈 被害者の親族は、このとき、刑事課員qから「事件性はない」とはっきり言われたと述べている。)、刑事課員oが、窓ガラス損壊に係る被害届の提出の意思を確認した(注釈 被害者の祖母は、被害届の提出意思について確認されていないと述べている。)ところ、被害者の祖母は、   ○ 今は提出しない   ○ 被害者がいなくなったことが心配なので、被疑者宅を確認してほしい  旨を申し立てたとのことであった。 (臨港署の対応2(被疑者宅の確認))  同日、刑事課員o及びqは、被害者祖母宅から被疑者宅に向かい、被疑者の同意を得て、2階の3部屋(押し入れを含む。)、納戸及びベランダを確認したが、被害者の発見には至らなかった。1階は、被疑者が、「家族が食事をしているのでやめてほしい」旨申し立てたため、確認しなかった。 刑事課員oらは、被疑者から、   ○ 被害者がどこにいったか知らない   ○ 私の家には来ていない  旨を聴取し、被疑者宅の確認を終えた。  刑事課員oらは、当直主任の刑事課員kに対し、   ○ 内側から外側にガラスが割られており、外側に破片が飛び散っている   ○ おそらく被害者が割ったのではないか   ○ 外からの侵入形跡はなく、その旨を家族に説明し、納得を得ている  旨を報告したが、被害者祖母宅で鑑識活動を実施せず、また、それに伴う必要な捜査書類を作成しなかった。また、刑事課員kは、刑事課員oらの報告を受けて、犯罪行為の可能性は低いと判断し、同人らに対し、鑑識活動の実施の有無の確認をせず、また、被害状況の確認や必要な捜査書類の作成を指示しなかった。  同日午後7時30分頃、生活安全課員dらは、被害者祖母宅を訪問し、被害者の父親及び祖母に対し、行方不明者届の手続について説明した(注釈 被害者の父親は、警察官は来たかもしれないが、行方不明者届に関する説明は受けていないと述べている。)。  窓ガラス損壊事案及び被疑者宅の確認結果については、地域課員が、110番通報のあった事案の処理状況として、その概要を署長等に報告したが、当直主任の刑事課員kは、犯罪行為の可能性は低いと判断していたことから、詳細な対応状況についてc2刑事課長や署長等へ報告しなかった。 (本部人身安全対策課への報告)  神奈川県警察本部地域部通信指令課(以下「本部通信指令課」という。)から連絡を受けて上記事案を認知した本部人身安全対策課員は、生活安全課員dに対し、同事案について問合せを行い、   ○ 窓が内側から外側に割れている   ○ 自分でいなくなった可能性がある  旨を聴取した。本部人身安全対策課員は、積極的・能動的に事実確認を行うことなく、当該聴取結果についてK警部に報告し、その際、K警部は、本件は行方不明者として届出を受ける案件であり、その際に改めて臨港署から報告がなされることになると判断し、同署に対して特段の指導・助言を行わず、C1人身安全対策課長にも報告しなかった。 (本部捜査第一課への報告)  本部通信指令課から連絡を受けて上記事案を認知した本部捜査第一課員は、当直主任の刑事課員kに対し、同事案について問合せを行い、   ○ 窓が内側から外側に割られている   ○ 外からの侵入はできない   ○ 器物損壊や住居侵入には該当しない  旨を聴取した。本部捜査第一課員は、積極的・能動的に事実確認を行うことなく、臨港署に対して特段の指導・助言を行わず、捜査第一課長にも報告しなかった。 12月23日~24日 (臨港署の対応1(行方不明者届の受理))  12月23日午後5時頃、生活安全課員iは、臨港署において、被害者の父親から被害者の行方不明者届の提出を受けた。その際、被害者の父親から、   ○ 被害者の携帯電話の電源が切れている   ○ 12月22日、被害者の携帯の電源が入ったので、私の親族が被害者宛てにSNSメッセージを送信したところ、すぐに被疑者から同親族宛てに電話がかかってきたが、このタイミングで被疑者から電話があるのは不自然な感じがした   ○ 被疑者は、以前から被害者の自宅周辺等をうろついていたが、被害者がいなくなった日から見なくなった   ○ 被疑者は被害者に対し「許さない」旨のメッセージ(注釈 「あいつと付き合うなんて、絶対に許さない」旨のメッセージ)を送信していた  旨を聴取したが、併せて被害者の父親から、被害者が行方不明となった12月20日に、被害者から同人の祖母宛てに「買い物に行ってくる」旨のSNSメッセージが送られている旨の申立てを受けたことなどを踏まえ、被害者が自らの意思で出て行った可能性が高いものと判断し、「特異行方不明者」と判定する必要はないと判断した。  翌24日午前、被害者の行方不明者届について、被害者が「買い物に行ってくる」旨のSNSメッセージを祖母に送信しており、被害者が自らの意思で出て行った可能性が高い旨が署長等に報告され、通常の行方不明者として届出を受理する方針で署長等に指揮伺いがなされた。その際、被害者の父親からの詳細な聴取内容は署長等に報告されなかった。署長は、通常の行方不明者として届出を受理することを了承し、関係者から話をよく聞くよう指示した。 (臨港署の対応2(被疑者宅の確認))  12月23日午後9時頃、生活安全課員iほか1名は被疑者宅に赴き、被疑者から被害者の所在について聴取したところ、   ○ 被害者は家に来ていない   ○ 12月17日までは、被害者の自宅周辺をうろついていたが、被害者の親族に注意されて以降、うろついていない  旨を申し立てた。生活安全課員iらは、被疑者の携帯電話を確認したところ、被害者との連絡の履歴が消去されていたことから、その理由を尋ねたところ、   ○ 被害者に連絡しないようにするため消去した  旨を申し立てた。  また、生活安全課員iらは、被疑者及び被疑者の親族の同意を得て、被疑者宅の2階の3部屋(押し入れを含む。)を確認したが、被害者の発見には至らなかった(注釈 生活安全課員iは、令和6年11月14日に警察官が被疑者宅に来た際、被害者が2階の部屋の押し入れ内に隠れていた旨を被害者が申し立てていた旨を認識していたことから、被疑者宅の2階を確認する必要があると認識していたものの、被疑者宅の1階についても確認する必要があるとの認識には至らなかったことから、被疑者宅の1階の各部屋について、被疑者及び被疑者の親族に対して、確認させてほしい旨を申し向けなかった。)。  翌24日午前、被疑者宅の確認結果については、署長等に報告されたが、署長から特段の指示はなかった。その際、被害者の父親からの詳細な聴取内容は署長等に報告されなかった。 (臨港署の対応3(被害者の父親からの電話))  12月23日午後10時頃、被害者の父親から電話があり、生活安全課員iが対応したところ、   ○ もう被害者は殺されているかもしれないと考えている   ○ 被疑者が被害者の周辺をうろついていた状況を親族が見ており、写真も撮影しているが、何か動いてもらえるのか  旨を申し立てた。  翌24日、生活安全課員iは、当該聴取結果についてb1生活安全課長に報告したが、b1生活安全課長から特段の指示はなく、b1生活安全課長は、当該聴取結果を署長等に報告しなかった。 (臨港署の対応4(被害者の携帯電話への連絡))  12月23日、生活安全課員は、被害者の携帯電話に複数回電話をかけたが、電源が切断されたままの状態であった。 (本部人身安全対策課への報告)  同日、生活安全課員iは、本部人身安全対策課の当直勤務員に対し、行方不明者届について通常の行方不明者として届出を受理する方針である旨報告したが、その際、被害者の父親からの詳細な聴取内容は報告しなかった。 12月24日 (本部人身安全対策課による指導・助言及び臨港署の対応(特異行方不明者の判定))  12月24日午前8時頃、当直勤務員から引継ぎを受けた本部人身安全対策課員は、臨港署に電話をかけ、生活安全課員h(注釈 生活安全課員iが不在であったため、生活安全課員hに対し指導を行った。)に対して、行方不明者届が提出された経緯等について聴取した上で、被害者が過去に人身安全関連事案の相談を行っていることなどから、防犯カメラ調査等を行うとともに、行方不明者を「特異行方不明者(事故遭遇(注釈 事故遭遇とは、行方不明となる直前の行動その他の事情に照らして、水難、交通事故その他の生命に関わる事故に遭遇しているおそれがあること(行方不明者発見活動に関する規則(平成21年国家公安委員会規則第13号。以下「行方不明者発見活動規則」という。)第2条第2項第3号)。「特異行方不明者」の類型として「犯罪被害」、「事故遭遇」、「自殺企図」、「自救無能力」等がある。I警部によると、行方不明に至る原因が判然とせず、明確な事件性を認めることはできなかったことから、犯罪被害ではなく事故遭遇として受理すべきと判断したとしている。))」と判定するよう指導した。その際、生活安全課員hは、本部人身安全対策課員に対し、被害者の父親からの詳細な聴取内容を報告しなかった。  同日午後、本部人身安全対策課からの指導を受け、「特異行方不明者(事故遭遇)」と判定する方針で署長等に指揮伺いがなされたが、その際も被害者の父親からの詳細な聴取内容は署長等に報告されなかった。署長は、その方針を了承したが、その際、特段の指示は行わなかった。  本部人身安全対策課では、臨港署が「特異行方不明者(事故遭遇)」と判定したことについてC1人身安全対策課長まで報告がなされたものの、専決権限を有するA1生活安全部長まで報告がなされなかった(注釈 署長は、行方不明者届を受理した時は、速やかに、本部長に報告することとされている(行方不明者発見活動実施要綱)。なお、決裁規程第11条及び第12条において、特異又は重要な行方不明者等の手配及び保護に関する事務は生活安全部長が、その他の行方不明者等の手配及び保護に関する事務は人身安全対策課長が専決することとされている。)。  また、本部人身安全対策課は、臨港署が「特異行方不明者(事故遭遇)」と判定した事実について、本部捜査第一課に情報共有を行わなかった(注釈 本部捜査第一課から本部人身安全対策課への問合せも行われておらず、両課が連携した形跡は認められなかった。)。 【初動対応後の行方不明者発見活動(令和6年12月24日~令和7年4月30日)】 12月24日 (臨港署の対応(被害者の親族からの聴取))  12月24日午後1時30分頃、生活安全課員iは、被害者祖母宅に赴き、被害者の親族から、   ○ 12月16日に、被疑者が被害者祖母宅の近くにいたのを見かけたので注意し、翌17日にも、再び被疑者が被害者祖母宅の近くにいたという話があったので注意した   ○ 12月20日に、被疑者が被害者の勤務先の周辺をうろついていた  旨を聴取した。  また、生活安全課員iは、被害者祖母宅とその付近住宅に設置されている防犯カメラを確認したが、防犯カメラの映像は確認できなかった。  さらに、生活安全課員iは、被害者の祖母が保存していた、被疑者と思料される男性が被害者祖母宅付近を歩き回る動画を、デジタルカメラで撮影した。その際、生活安全課員iは、被害者の祖母に対し、動画の撮影日時を確認したが、日時を特定できなかった(注釈 このとき、生活安全課員iは、当該動画は被害者の祖母により撮影されたものではないことを認識したが、実際の撮影者や撮影日時について掘り下げて確認しなかった。その後、4月になって、当該動画は被害者の友人が撮影したものであることを確認し、所要の捜査の結果、動画の撮影日時が令和6年12月12日であることを特定した。)。  同日午後3時頃、被害者の父親から電話があり、生活安全課員iが対応したところ、   ○ 12月19日、被疑者は被害者に対して「許さない」旨のメッセージを送信している  旨を申し立てた。  当該聴取結果については、署長等に報告された。その際、署長は、関係者からよく話を聞くよう及び被害者の携帯電話に繰り返し電話をかけ、その状況を記録化するよう指示した。  当該聴取結果については、本部人身安全対策課に報告されなかった。 12月26日 (被疑者のうろつき行為の自認【特異情報1】)  12月26日午後0時30分頃、被疑者から電話があり、生活安全課員iが対応したところ、   ○ 12月12日、被害者から別れようと言われた   ○ 12月12日から同月17日まで、被害者の自宅周辺等をうろついていたが、17日に被害者の親族に注意されて以降、うろついていない   ○ 12月19日、被害者に対し「許さない」旨のメッセージを送信した  旨を申し立てた。 (特異情報1を受けた臨港署の対応)  特異情報1については、署長等に報告された。その際、署長は、被疑者の供述の裏付けのため防犯カメラの確認を行うよう指示した(注釈 当該指示を受け、令和7年1月9日に、被害者祖母宅に設置された防犯カメラの映像について再度確認(令和6年12月24日に確認済み)するも、映像は確認できなかった。)。  特異情報1については、本部人身安全対策課に報告されなかった。 12月24日~同月31日 (被害者の携帯電話の電源断【特異情報2】)  12月24日から同月31日までの間に、生活安全課員は、被害者の携帯電話に複数回電話をかけたが、いずれも電源が切断されたままの状態であった(注釈 その後も、令和7年3月18日まで、被害者の携帯電話に断続的に何度も電話をかけたが、いずれも電源が切断されたままの状態であった。)。 令和7年1月7日 (被疑者の自殺企図事案の認知【特異情報3】)  令和7年1月7日午前8時30分頃、被害者の父親から電話があり、生活安全課員iが対応したところ、   ○ 1月3日に被疑者が自殺を図った旨、被疑者の親族から聞いた  旨を申し立てたことから、生活安全課員iは、神奈川県川崎警察署から、被疑者の自殺未遂に関する報告書類を入手した。 (特異情報3を受けた臨港署の対応)  特異情報3については、署長等に報告されたが、署長から特段の指示はなかった。  特異情報3については、本部人身安全対策課に報告されなかった。 (窓ガラス損壊事案に係る被害届提出要望【要望1】)  同日午後3時頃、被害者の親族の知人から臨港署宛てに電話があり、生活安全課員dが対応したところ、同知人は、被害者に関する事件の捜査状況と捜査が進んでいない理由を聞きたい旨申し立てた。  同日午後5時30分頃、生活安全課員d及び刑事課員oは、被害者祖母宅に赴き、被害者の親族等から聴取を行ったところ、同人らは、   ○ 窓ガラス損壊事案(令和6年12月22日認知)について、当時、警察官から「ガラス片が室外にあるため、外側から割られた状況は考えにくい」と説明を受けたが、ガラス片が室内にもあった   ○ 警察が鑑識活動や防犯カメラの確認を行わなかったのは納得できない   ○ 今日は被害届を提出する   ○ 被疑者が被害者を連れて行き、どこかにかくまっている   ○ 行方不明事案ではなく事件として対応すべき  旨を申し立てた。  これを受け、生活安全課員dは、同人らに対し、   ○ 行方不明事案は事件ではない   ○ (被疑者と窓ガラス損壊との結びつきについて)何も証拠がない   ○ 12月22日に指紋等の採取を行わなかったのは職務怠慢ではない   ○ 被害者祖母宅付近の防犯カメラを確認している  旨を説明した。  その後、被害者祖母宅に臨場した地域課員は、被害者の祖母から窓ガラス損壊事案に係る被害届を受理し、刑事課員oは、指紋採取等の鑑識活動を実施したが、割れた窓ガラスは既に交換されていた。 (要望1を受けた臨港署の対応)  窓ガラス損壊事案に係る被害届の受理については、刑事課内で情報共有がなされ、c3刑事課長まで報告がなされた。  また、当該被害届の受理については、翌朝の当直報告等を通じて署長等に報告されたが、署長から特段の指示はなかった。 (要望1を受けた本部人身安全対策課の対応)  窓ガラス損壊事案に係る被害届を受理したことについて、I警部に報告された。  報告を受けたI警部は、積極的・能動的に事実確認を行うことなく、特段の指導は行わず、C1人身安全対策課長にも報告しなかった(注釈 1月9日、被害者の父親からの本部広報県民課への申出をC1人身安全対策課長まで報告した際に、併せて当該被害届の受理についてもC1人身安全対策課長まで報告した。)。 1月9日 (被害者の父親による本部広報県民課への申出【要望2】)  1月9日午前11時30分頃、被害者の父親から本部広報県民課に電話があり、   ○ 被害者が被疑者からストーカーの被害に遭っており、現在、行方不明になっているが、臨港署が動いてくれない   ○ 窓ガラス損壊事案も、警察は「事件性がない」と調べもせず帰ってしまった   ○ 1月7日に再度警察に連絡したところ、被害届を受理してくれたが、被害者の行方不明については何も動いてくれず、既に殺されているのかもしれないので、臨港署に早く動くよう伝えてほしい  旨の申出を受けた。当該申出は、本部広報県民課において課長まで報告の上、「要望・意見等」として扱われ、同日、臨港署、本部人身安全対策課及び本部捜査第一課に回付された。 (マンション敷地侵入事案に係る被害届提出要望【要望3】)  同日午後1時30分頃、被害者の父親から電話があり、生活安全課員dが対応したところ、   ○ 被疑者が被害者姉宅のマンションの敷地に侵入した事案(令和6年10月31日認知)について、被害届を提出したい   ○ 勝手にマンションの壁を乗り越えており、住居侵入である  旨を申し立てた。  これを受け、生活安全課員dは、   ○ マンション敷地侵入事案については、刑事課と事件化について相談する  旨を伝えた(注釈 同日午後4時40分頃、生活安全課員dは、被害者の父親に電話をかけ、マンション敷地侵入事案の被害者は、マンション管理者となることから、同人から被害届の提出を受けることとなる旨説明し、被害者の父親は、「マンション敷地侵入事案の事件化が難しいなら、私の家や被害者祖母宅に被疑者が侵入したことについて被害届を出す、そのときは連絡する。」旨申し立てた。)。生活安全課員dは、要望3についてb1生活安全課長に報告した。 (要望2・3を受けた臨港署の対応)  同日、b1生活安全課長及び生活安全課員dは、要望2・3を踏まえ、窓ガラス損壊事案及びマンション敷地侵入事案について、c3刑事課長及び刑事課員jに対し、事件捜査としての対応ができないか相談を行った。  c3刑事課長及び刑事課員jから、   ○ 窓ガラス損壊事案については、被疑者の犯行であることを示す証拠がないことから事件捜査としての対応は難しい   ○ マンション敷地侵入事案については、被害者はマンションの管理者となることから、マンションの管理者から被害届が提出されなければ事件捜査としての対応は難しい 旨の説明を受けた。  これを受け、b1生活安全課長は、要望2について、c3刑事課長の決裁を受けた上で、署長等に報告した。その際、署長等は、行方不明事案として取り扱い中であることから、引き続き適切に対応するよう指示した。要望3については、署長等に報告されたが、署長から特段の指示はなかった。  要望3については、本部人身安全対策課に報告されなかった。 (要望2を受けた本部人身安全対策課の対応)  同日、要望2についてC1人身安全対策課長まで報告したが、臨港署に対して、積極的・能動的に事実確認を行うことなく、特段の指導・助言は行わなかった。また、要望2を受けて、本部人身安全対策課と本部捜査第一課が情報共有等をした形跡は認められなかった。 (要望2を受けた本部捜査第一課の対応)  同日、要望2については、L警視まで報告されたが、臨港署に対して、積極的・能動的に事実確認を行うことなく、特段の指導・助言は行わなかった。 1月10日 (被害者の友人からの情報提供【特異情報4】)  1月10日午前11時頃、生活安全課員iは、被害者の友人宅に赴き、同人から聴取したところ、   ○ 12月23日まで、被害者のSNSアカウントとメッセージのやり取りをしていたが、24日からは一切連絡が取れなくなった   ○ 被害者がいつもメッセージの語尾に使う癖が、23日から一切使われていないので、別人がなりすましてメッセージを送っていると思う  旨を申し立てた。 (被疑者による自己のSNS履歴等データ消去の判明【特異情報5】)  同日午後2時頃、生活安全課員h及びiは、被疑者及び被疑者の親族に対し、臨港署への来署を求め、同人らから、被疑者の自殺企図事案等について聴取を行ったが、その際、被疑者の携帯電話のSNS履歴等のデータが消去されていることを確認したため、その理由についても、併せて被疑者から聴取したところ、被疑者は、   ○ 死ぬ前にリセットしたかったので携帯電話のデータを消した   ○ (自殺企図は)自分が力を入れていた音楽活動が終了してしまったことや、仲の良い友達が死んでしまったことによるもので、被害者のこととは関係ない  旨を申し立てた。  当該申立てを踏まえ、生活安全課員hは被疑者を追及したが、被疑者は被害者の行方不明事案への関与を否定した。 (特異情報4・5を受けた臨港署の対応)  特異情報4・5については、署長等に報告されたが、署長から特段の指示はなかった。  特異情報4・5については、本部人身安全対策課に報告されなかった。 1月11日~15日 (被害者の父親による警視庁に対する申出【要望4】)  1月11日午後1時30分頃、被害者の父親は、警視庁本部の警察官に、   ○ 12月20日に被害者が行方不明になったが、被疑者に連れ去られたのではないか   ○ 1月3日に被疑者が自殺を図ったことが判明し、いよいよ被害者の安否が心配になった   ○ 地元署に何度も相談したが、生活安全課に回され、行方不明者届を取られただけで、相手にしてくれていない感じがする   ○ 何か良いアドバイスはないか  旨の申出を行った。  要望4については、1月14日に警視庁生活安全部人身安全対策課から本部人身安全対策課に、同月15日に警視庁刑事部捜査第一課から本部捜査第一課に、それぞれ情報提供がなされた。 (要望4を受けた臨港署の対応)  1月14日午後6時30分頃、本部人身安全対策課から臨港署に対して、要望4の内容が伝達され、その際、本部人身安全対策課員から、被害者の行方不明事案の対応状況について問合せを受けた生活安全課員dは、   ○ 被害者はメールで、家に帰りたくないなど(注釈 本部人身安全対策課員は、生活安全課員(名前は覚えていない)から「行方不明後、被害者が友人宛てに「家に帰りたくない、働いている店にも行きたくない」旨のメールを送っている」旨説明を受けたと述べている。一方、生活安全課員dは、本部人身安全対策課への報告内容の詳細について明確に記憶していない旨述べている。)と言っている   ○ 被害者祖母宅の窓ガラスは内側から外側に割れている  旨を説明した。  要望4については、署長等に報告されたが、署長は、警察の不作為を問われることがないように注意するよう指示した。 (要望4を受けた本部人身安全対策課の対応)  1月15日、本部人身安全対策課内の会議(注釈 C1人身安全対策課長のほか、管理官、課長補佐等が出席して情報共有等を行う会議で、原則毎日開催している。)において、同課員らが、要望4とともに、被害者の行方不明事案の経緯の詳細(特異情報1・2・3・4、要望1・2・3を含む。)について報告したが、C1人身安全対策課長等の幹部から特段の指示はなかった。  また、J警部は、要望4及び被害者の行方不明事案の経緯について、A1生活安全部長に報告したが、A1生活安全部長からの指示はなかった。 (要望4を受けた本部捜査第一課の対応)  1月15日午後3時頃、L警視は、要望4の内容について、旧知の警視庁捜査第一課員から情報提供を受け、M警部を通じて、刑事課員jに対応状況を確認したところ、   ○ 生活安全課が主体となって対応している   ○ 被害者祖母宅の窓ガラスについては、内側から外側に割られている  旨の報告を受けた。  L警視及びM警部は、臨港署に対し、積極的・能動的に事実確認を行うことなく、特段の指導は行わず、捜査第一課長及びB1刑事部長への報告も行わなかった。 1月14日 (被疑者の親族からの情報提供【特異情報6】)  1月14日正午頃、被疑者の親族から電話があり、生活安全課員dが対応したところ、   ○ 被疑者が被害者を殺しているかもしれない   ○ 被疑者は、年末年始一切外出せず、うつのような状態だった   ○ 被害者のことで、被疑者を厳しく問いただすと、落ち着かない様子だったり、SNS履歴等を削除していたりと、怪しい行動しかない  旨を申し立てた。 (特異情報6を受けた臨港署の対応)  特異情報6については、署長等に報告されたが、署長から特段の指示はなかった。 1月15日 (被害者の父親による本部広報県民課に対する申出への対応【要望5】)  1月15日午前10時10分頃、本部広報県民課は、被害者の父親の来訪を受け、   ○ 令和6年12月20日から被害者が行方不明になっているが、臨港署の対応に不満がある   ○ 窓ガラス損壊事案について、事件性はないと判断された   ○ 令和6年12月19日に被疑者が被害者に対して「許さない」旨のメッセージを送信していることについても、臨港署は事件性がないと言って対応してくれない   ○ 被害者の行方不明については事件性があると考えており、生活安全課ではなく刑事課で動いてほしい   ○ 今後、どのように対応してもらえるのか連絡がほしい  旨の申出を受けた。本件申出は、本部広報県民課において課長まで報告の上、「要望・意見等」として扱われ、同日、臨港署、本部人身安全対策課及び本部捜査第一課に回付された。 (要望5を受けた臨港署の対応)  要望5については、署長等に報告された。その際、署長は、引き続き適切に対応するよう指示するにとどまった。 (要望5を受けた本部人身安全対策課の対応)  I警部は、要望5についてC1人身安全対策課長まで報告した。その際、C1人身安全対策課長から特段の指示はなかった。 (要望5を受けた本部捜査第一課の対応)  M警部は、要望5について刑事課員jに対応状況を確認したところ、   ○ 生活安全課が主体となって対応している   ○ 被害者祖母宅の窓ガラスについては、内側から外側に割られている  旨の報告を受け、それをL警視まで報告した。  L警視及びM警部は、臨港署に対して積極的・能動的に事実確認を行うことなく、特段の指導は行わず、捜査第一課長及びB1刑事部長への報告も行わなかった。 (臨港署の対応(被疑者宅裏の空き家の確認))  1月16日午前1時10分頃、b1生活安全課長らは、これまでの発見活動を通じて把握した、被疑者宅の裏の空き家について、本部人身安全対策課に相談した上で、被害者の所在確認のため、空き家の管理者から預かった鍵で開錠して屋内に入り、屋内の確認を行ったが、被害者の発見には至らなかった。 (本部人身安全対策課の対応(被疑者宅裏の空き家の確認))  b1生活安全課長らから、被疑者宅の裏の空き家から、被害者の発見に至らなかった旨の報告を受けたI警部は、b1生活安全課長らに対し、被害者の出入国履歴の確認等、これまで実施できていない調査の実施を指示した。 1月17日 (成人式後の同窓会に被害者が欠席した事実が判明【特異情報7】)  1月17日午後6時頃、生活安全課員e及びgは、被害者の友人と面接し、   ○ 12月に被害者から「1月13日の成人式後に開かれる中学校の同窓会のSNSのグループに入れてほしい」旨の連絡があった   ○ しかし、被害者は同窓会に来なかった  旨を聴取した。 (特異情報7を受けた臨港署の対応)  特異情報7については、署長等に報告されたが、署長から特段の指示はなかった。  特異情報7については、本部人身安全対策課に報告されなかった。 1月21日 (臨港署の対応(被害者の父親からの電話【特異情報⑧】))  1月21日午後4時50分頃、被害者の父親から電話があり、生活安全課員dが対応したところ、   ○ 被害者の友人が、「被害者から、「12月20日に被疑者がうろついているのを見つけた」旨のメールが届いた」と言っている   ○ 被疑者は、12月17日以降、被害者の周辺をうろついていないと嘘をついている   ○ 被疑者が被害者を匿っているか、殺しているかもしれない  旨を申し立てた。 (特異情報8を受けた臨港署の対応)  生活安全課員dは、特異情報8についてb1生活安全課長に報告したが、b1生活安全課長からは特段の指示はなく、b1生活安全課長は、同情報を署長等に報告しなかった。  特異情報8については、本部人身安全対策課に報告されなかった。 1月24日 (臨港署の対応(被害者の自転車の発見))  1月24日午後3時10分頃、被害者の父親から電話があり、生活安全課員iが対応したところ、   ○ 被害者の自転車が発見された   ○ 付近の防犯カメラを確認すれば、誰が自転車を置いたのか分かるのではないか  旨を申し立てた。当該聴取結果は署長等に報告され、b1生活安全課長ほか5名で、被害者の自転車が発見された場所に赴き、付近の防犯カメラを確認したが、録画機能が作動している防犯カメラの発見には至らなかった。  同日、生活安全課員iは、被害者の自転車を含む放置自転車3台を発見し通報した者から聴取したところ、当該通報者は、   ○ 放置自転車は3台あり、うち2台は昨年12月前から、残り1台は12月中旬くらいから放置されていた  旨を申し立てた。当該聴取結果については、署長等に報告されたが、署長から特段の指示はなかった。 2月19日 (臨港署の対応(被害者の父親からの電話と写真の確認【特異情報9】))  2月19日午後2時頃、被害者の父親から電話があり、生活安全課員iが対応したところ、   ○ 12月20日に被害者が被疑者を目撃した際、その状況を写真撮影して、親族に送信しており、その写真を入手した  旨を申し立てたことから、被害者の父親に対し、臨港署への来署を求めた。  同日午後2時30分頃、被害者の父親が来署し、同人からSNS履歴に係る資料の提示を受け、   ○ 12月19日午後9時50分頃、被害者が、被害者の親族に対して、被疑者と思料される者から被害者宛てに送信された「あいつと付き合うなんて、絶対に許さない」旨のメッセージのスクリーンショットを送信していたこと   ○ 12月20日午前7時頃、被害者が、被害者の親族に対して「被疑者がうろついているのを見つけた」旨のメッセージ及び被疑者と思料される者が自転車に乗車している状況の写真を送信していたこと  を確認した(注釈 令和7年4月21日、被害者の親族から、本件について聴取するとともに、SNS履歴の写真撮影等を実施した。)。 (特異情報9を受けた臨港署の対応)  生活安全課員iは、特異情報9についてb1生活安全課長に報告したが、b1生活安全課長からは特段の指示はなく、b1生活安全課長は、同情報を署長等に報告しなかった。  特異情報9については、本部人身安全対策課に報告されなかった。 3月12日 (臨港署の対応(被害者の出入国履歴の照会))  生活安全課員iは、被害者の出入国履歴の照会を実施したが、同月24日、令和6年12月20日から令和7年3月18日までの間、被害者の出入国履歴はないことが判明した。 3月13日 (臨港署生活安全課長の交代)  臨港署の生活安全課長が、人事異動により、b1生活安全課長からb2生活安全課長に交代した。 3月25日 (臨港署の対応1(被疑者のうろつき行為の自認))  3月25日午後2時頃、生活安全課員hは、被疑者に臨港署への来署を求め、事情聴取したところ、   ○ 12月17日以降、被害者に会いに行っていないと説明したのはうそ   ○ 最後に被害者に会いに行ったのは12月20日で、この日は被害者に会えなかった  旨を申し立てた。当該聴取結果については、署長等に報告されたが、署長から特段の指示はなかった。 (臨港署の対応2(被害者の父親からの電話))  同日午後3時頃、被害者の父親から電話があり、生活安全課員hが対応した際、同人から被害者の公開手配について提案したところ、被害者の父親は、   ○ 被害者の公開手配を希望する  旨を申し立てた。当該聴取結果については、署長等に報告されたが、署長から特段の指示はなかった。  b2生活安全課長は、被害者の公開手配の要否について本部人身安全対策課に相談したところ、   ○ 行方不明者の公開手配は、自救無能力者や山岳遭難者等の場合に家族負担でチラシを作成するなどして行うもの   ○ インターネット上に記録がいつまでも残るもの  旨の助言を受けた。  当該助言を受け、翌26日、生活安全課員hは、被害者の父親に電話をかけ、当該助言内容を伝えたところ、被害者の父親は、   ○ 公開手配がなじまないのは分かった  旨を申し立てた。 4月3日 (臨港署の対応(被害者の親族による被害者通話履歴の提示))  4月3日午後1時30分頃、被害者の親族4人が臨港署に来署したことから、生活安全課員hが対応したところ、被害者の親族らは、12月9日から同月20日にかけて、被害者が臨港署に対して9回電話をした通話履歴を提示するとともに、   ○ 12月20日午前7時頃に臨港署に電話をかけたのが最後になっているが、記録はあるのか   ○ これ以外にも数回警察署に電話をしているが、その内容を知りたい   ○ 窓ガラス損壊事件の連絡がいつまでもこないのはおかしい   ○ 被疑者はアメリカに逃げようとしているので、アメリカに行かせないようにしてほしい   ○ 被害者が死んでいたら、臨港署を許さない  旨を申し立てた(注釈 生活安全課員hは、このとき、被害者の親族から、12月20日の被害者からの臨港署への電話内容について尋ねられ、あくまで記憶の範囲である旨を断った上で、「自転車の件ではないか」旨を説明したと述べているが、被害者の親族は、生活安全課員hから「電話を受けた人間から確認した」と言われたと述べている。)。 4月8日 (臨港署の対応(被疑者の渡米事実の認知))  4月8日午前10時30分頃、被害者の親族から電話があり、刑事課員が対応したところ、   ○ 被疑者が国外逃亡したので、犯人に間違いない  旨を申し立てた。  同日午後3時40分頃、生活安全課員hは、被疑者の親族に電話をかけ、事情聴取したところ、   ○ 被疑者の親族がアメリカに住んでおり、4月2日にそこに行かせた  旨を申し立てた。  当該聴取結果については、署長等に報告されたが、署長から特段の指示はなかった。 4月9日 (臨港署の対応(告発状の到達及び臨時幹部会議の開催の提案))  4月9日、弁護士から、   ○ 被害者は令和6年12月20日に行方が分からなくなったが、被疑者が被害者を連れ去り、監禁や殺害をしているおそれがある   ○ 一刻も早くストーカー規制法違反の捜査や傷害又は殺人の可能性についての捜査をするよう告発する  旨の告発状が臨港署に届いた。  同日、b2生活安全課長は、告発状が届いた事実を、署長等に報告する(注釈 4月15日、b2生活安全課長は、告発状を提出した弁護士に対し「現時点の告発状では、犯罪事実が特定されていないため、受理することはできない」旨を連絡した。)とともに、被害者の行方不明事案の対応の検討を行うため、臨港署内で幹部会議を開催することを提案し、4月11日に開催することが決定した。また、本部人身安全対策課員に対し、令和6年12月16日及び同月20日の被疑者のつきまとい行為等について、ストーカー規制法を適用して事件化を行うことに関する指導・助言を求めた(注釈 4月11日、本部人身安全対策課から、ストーカー規制法での事件化が可能である旨の回答があった。)。 4月11日 (臨港署の対応(臨時幹部会議))  4月11日、署長、a2副署長、b2生活安全課長、c4刑事課長らによる臨時幹部会議を開催し、b2生活安全課長が、被害者の行方不明事案のこれまでの経緯等や、本部人身安全対策課からの指導・助言を踏まえた、ストーカー規制法の適用に関する方針等について説明を行った。その結果、ストーカー規制法違反で被疑者宅の捜索を行うことなどを目的とした、署員10名体制のプロジェクトを立ち上げることとなった。 4月30日 (臨港署の対応(ストーカー規制法違反での被疑者宅の捜索の実施))  4月11日以降、被疑者によるストーカー規制法違反の事実(注釈 令和6年12月16日及び同月20日の被疑者のつきまとい行為)を特定するために必要な各種捜査を実施し、同月30日、臨港署は、同事実の捜索差押許可状に基づき、被疑者宅の捜索を実施した結果、御遺体を発見した。  当該捜索結果は、A2生活安全部長及びB2刑事部長に報告され、翌5月1日に本部長に報告された。  なお、当該報告により、令和6年12月22日に被害者の行方不明事案等を認知して以降、本事案が刑事部長や本部長に初めて報告された。