神備発第491号 令和7年9月2日 関係所属長 殿 警備部長 雑踏警備におけるウェアラブルカメラ活用に関する運用要領について(通達)  警戒の空白を生じさせないための組織運営について(令和6年8月1日神務発第797号)において、組織運営として、有限であるリソースを一層効果的に活用するための取組が不可欠であるとされているところ、そのためには、先端技術を積極的に活用・導入し、警察活動の高度化・合理化を推進していくことが急務である。  この点、雑踏警備における現場指揮については、雑踏警備マニュアル(令和6年執務資料第47号)において情報通信部門等と緊密に連携した上で、リアルタイムの映像を確認しながら、的確に指揮を行うこととされている。  こうした中、ウェアラブルカメラは、可搬性に優れ、最前線の状況をリアルタイムに伝送することができるほか、頭部又は胸部に装着したまま撮影できるため、撮影中であっても撮影者である警察官が両手を空けることが可能となることから、円滑な職務執行の観点からも有用性が高いと考えられる一方で、雑踏警備におけるウェアラブルカメラの運用実績が乏しく、その有用性・効率性等について検証する必要がある。  そこで、雑踏警備におけるウェアラブルカメラ導入に関するモデル事業の実施について(令和7年7月24日警察庁丁備一発第136号)において、当県警察がモデル事業を実施する都道府県警察に指定されたことから、別添のとおり雑踏警備におけるウェアラブルカメラ活用に関する運用要領に基づき、モデル事業に取り組むこととしたので、運用上誤りのないようにされたい。 別添 雑踏警備におけるウェアラブルカメラ活用に関する運用要領 1 目的 この要領は、祭礼、初詣、花火大会等における雑踏事故を防止するための雑踏警備におけるウェアラブルカメラ導入に関するモデル事業(以下「モデル事業」という。)で使用するウェアラブルカメラ(モデル事業において、頭部又は胸部に装着し、リアルタイムで映像を伝送する機器をいう。以下同じ。)及びウェアラブルカメラを運用するために使用する機器(以下これらを合わせて「ウェアラブルカメラ等」という。)の利用に関し、基本的な事項を定めることにより、モデル事業の適正かつ円滑な運用を図ることを目的とする。 2 モデル事業実施期間   令和7年9月2日から令和8年9月1日までの間 3 用語の定義 この要領における用語の意義は、高度警察情報通信基盤システム運用要領について(令和6年1月19日神指発第12号)における用語の例による。 4 運用体制  (1) 警察本部   ア 警察本部に総括運用管理者を置き、警備部長をもって充てる。   イ 総括運用管理者は、モデル事業の運用に係る事務を総括する。   ウ 警察本部に本部運用管理者を置き、警備部警備課長をもって充てる。   エ 本部運用管理者は、モデル事業の適正かつ円滑な運用を行うための指導、調整、撮影した映像データの適正な取扱いに関する事項その他必要な事務を行う。   オ 本部運用管理者は、エの任務を遂行するに当たり、警備部警備課課長補佐を本部運用主任者に指定し、その任務を補佐させるものとする。   カ 本部運用管理者は、警察本部における本部運用担当者を指定し、ウェアラブルカメラ等及び映像データの管理に関する事務を行わせるものとする。  (2) 警察署   ア 雑踏警備の開催地を管轄する警察署に警察署運用管理者を置き、警察署長をもって充てる。   イ 警察署運用管理者は、本部運用管理者の指導及び調整の下、警察署におけるモデル事業の適正かつ円滑な運用を行うための指導、調整その他必要な事項を行う。   ウ 警察署運用管理者は、イの任務を遂行するに当たり、警備課長を警察署における警察署運用主任者として指定し、その任務を補佐させるものとする。   エ 警察署運用管理者は、警察署における警察署運用担当者を指定し、ウェアラブルカメラ等の管理に関する事項を行わせるものとする。 5 遵守事項  (1) モデル事業における撮影の目的    モデル事業におけるウェアラブルカメラによる撮影は、雑踏警備に際して適切な指揮を行う目的においてのみ実施することとし、雑踏警備以外の業務においてウェアラブルカメラを活用してはならない。  (2) ウェアラブルカメラ等の管理 本部運用管理者及び警察署運用管理者は、本部運用担当者又は警察署運用担当者をして、ウェアラブルカメラ等の物品の紛失、盗難等を防止するため、施錠設備が備え付けられたロッカーに保管する、ウェアラブルカメラの出納状況を記録するなど必要な措置を講じる。 6 モデル事業の実施に当たっての細目及び留意事項  (1) 準備   ア 他部門等との調整    (ア)総括運用管理者は、警察庁と協議した上で、モデル事業を行う雑踏警備を決定し、警察庁に報告する。    (イ)本部運用管理者は、以下の事項について、関東管区警察局神奈川県情報通信部機動通信課(以下「機動通信課」という。)及び地域部通信指令課と事前に調整を行う。     ○ ウェアラブルカメラ等を接続するデータ端末への接続機器設定     ○ 映像伝送機能を利用するために必要な手続     ○ 十分な同時映像送信数の確保     ○ 複数の所属の警察官が雑踏警備に従事する場合に、複数の所属に映像視聴権限を付与するための措置及び複数の所属に対し、映像伝送承認を行うための措置   イ 警備計画の作成    (ア)本部運用管理者又は警察署運用管理者(以下「運用管理者」という。)は、以下の点等を考慮した上で、ウェアラブルカメラの具体的な活用方策も含めた警備計画を作成し、総括運用管理者に報告する。     ○ 運用管理者から、モデル事業を実施する雑踏警備に関して警察本部に設置された雑踏警備指揮本部又は警備連絡室、警察署に設置された雑踏警備実施本部、警備連絡室及び現地指揮本部で指揮官として勤務する者(以下「指揮官」という。)及び雑踏警備においてウェアラブルカメラ等を装着して撮影を行う者(以下「撮影者」という。)に対して行う指導の内容     ○ 指揮官が撮影者に対して行う指示の内容     ○ 映像送信上限数     ○ ウェアラブルカメラ等を装着した者の配置場所・役割     ○ 伝送された映像を閲覧する者及びその任務場所     ○ 撮影予定時間を勘案した、予備のデータ端末又はモバイルバッテリーの携行要否    (イ)総括運用管理者は、(ア)の警備計画について警察庁に報告する。   ウ 事前の周知 モデル事業を実施する雑踏警備を初めて選定する際は、警察庁と協議した上で、以下の点も含め、当該雑踏警備においてウェアラブルカメラによる撮影を行う旨をウェブサイトに掲載するなどの方法により広報するものとする。また、以降新たにモデル事業を実施する雑踏警備を選定した場合には、その旨をウェブサイト等に追記して周知するものとする。    〇 モデル事業の目的は、雑踏警備における指揮への活用であること    〇 撮影場所及び撮影方法    〇 撮影した映像データが一定期間後に自動削除されること    〇 違法行為が撮影された場合に限り、その映像データを保存する場合があり、その場合には、法令に基づき適正な方法で行うこと    ○ 本要領の内容   エ ウェアラブルカメラ等の準備    (ア)本部運用管理者は、機動通信課から借用する数量及び期間について事前に調整し、ウェアラブルカメラ等を借り受ける。    (イ)本部運用管理者は、撮影者に対し、機動通信課から借用したウェアラブルカメラ等を配布する。      なお、撮影者が警察署に所属している場合には、警察署運用管理者を経由して配布する。   オ 事前の指導・指示    (ア)運用管理者は、指揮官及び撮影者に対し、ウェアラブルカメラ等を適切に使用するために必要な指導を行う。    (イ)指揮官は、撮影者に対し、映像の送信方法について事前に十分な説明を行うとともに、撮影方法、配置場所及び撮影者の役割について指示を行う。 なお、指揮官の指示については、撮影の開始及び終了について撮影者が的確に判断することができるよう、以下の例のように明確かつ包括的に行うことを原則とする。     ○ 指揮官からの指示に従って撮影を行うこと     ○ 現場配置につき次第撮影を開始し、雑踏警備の終了をもって撮影を終了すること     ○ 雑踏警備の外観や流れを撮影することとし、不必要に参集者の容ぼうを撮影しないこと     ○ 撮影する必要性がなくなったときは、指揮官に無線機等で速報し、指示を仰ぐこと  (2) 実施   ア 映像の撮影    (ア)撮影者は、ウェアラブルカメラ等をデータ端末と接続した上で、頭部又は胸部に装着する。      ウェアラブルカメラ等の装着に当たっては、以下の点に留意する。     ○ 撮影を行っていることを外形的に認識できる場所に取り付けること     ○ 撮影を行っていることを外形的に認識することが難しい機種を使用する場合や、装着状況を視認することが難しい暗がり等の場所で撮影を行う場合には、腕章の着用その他の方法により、ウェアラブルカメラによる撮影を行っていることを外形上明らかにする措置を別途講じること    (イ)雑踏警備現場においては、指揮官から事前に受けた指示に従い、映像の撮影並びに伝送の開始及び終了を行う。     撮影に当たっては、以下の点に留意する。    ○ 撮影場所は、公道、イベント会場、駅等といった公共の場所に限ること    ○ イベント会場内や駅構内等の第三者の管理権限が及ぶ空間において撮影する場合には、事前に管理者の承諾を得ること    ○ 雑踏の概観や流れを撮影することを重視し、不必要に参集者の容ぼうを撮影しないこと   イ 映像の受信及び現場指揮     指揮官は、動態管理装置又はデータ端末B(以下「映像受信機器」という。)を用いて映像を受信し、適切な現場指揮を行う。     映像の受信に当たっては、以下の点に留意する。    ○ 別に定めがある場合を除き、運用管理者が指定した者以外は、映像受信機器を操作してはならないこと    ○ 映像受信機器を操作する者は、雑踏警備に際して適切な警備指揮を行うこと以外の目的で映像受信機器を操作してはならないこと  (3) 返却   ア 雑踏警備終了後、撮影者は本部運用管理者に対し、速やかにウェアラブルカメラ等を返却する。     なお、撮影者が警察署に所属している場合には、警察署運用管理者を経由して返却する。   イ 本部運用管理者は、機動通信課に対し、撮影者から返却を受けたウェアラブルカメラ等を速やかに返却する。 7 安全の確保  (1) 運用管理者は、モデル事業実施における安全を確保するため、必要な措置を講じなければならない。  (2) 情報セキュリティ対策 本事業に係る情報セキュリティについては、神奈川県警察情報セキュリティに関する規定(平成17年神奈川県警察本部訓令第4号)等、警察情報セキュリティポリシーの定めによる。  (3) 管理対象情報の分類 モデル事業に係る神奈川県警察情報セキュリティ対策基準(令和5年9月21日 例規第42号、神情発第537号)に規定する管理対象情報の分類については、次のとおりとする。    管理対象情報の分類 ウェアラブルカメラ    機密性 2(中)    完全性 2(高)    可用性 2(高) 8 撮影した映像データの取扱い  (1) 撮影した映像データの利用目的    ウェアラブルカメラで撮影した映像データは、個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)その他の法令に基づく場合を除き、雑踏警備に際して適切な指揮を行うために当該雑踏警備に従事する者が視聴すること以外の目的で利用してはならない。  (2) ウェアラブルカメラで撮影した映像データは、撮影日から1週間後に自動で消去されるものとする。  (3) 撮影した映像データの保存及び提供   ア 映像データの保存・提供の禁止     ウェアラブルカメラで撮影した映像データは、原則として外部記録媒体に保存・提供してはならない。   イ 法令に基づく求めによる保存・提供    (ア)撮影した映像データに違法行為が映っている蓋然性が高く、当該映像データを犯罪の捜査に利用するため、当該犯罪の捜査を担当する所属の長から、刑事訴訟法その他の法令に基づき求めがあった場合には、本部運用管理者は、当該映像データを保存・提供することができる。ただし、保存・提供する映像データは、必要な部分に限ることとする。    (イ)本部運用管理者は、前記(ア)に基づき映像データの保存及び提供を行った場合には、別記様式1に必要事項を記入するとともに、捜査関係事項照会書の写し等を保管する。  (4) 開示請求への対応    個人情報の保護に関する法律第76条又は神奈川県情報公開条例(平成12年神奈川県条例第26号)の規定に基づき、ウェアラブルカメラで撮影された映像データの開示請求がなされた場合は、各法令の規定に基づき対応する。  (5) 関係法令の遵守    ウェアラブルカメラで撮影された映像データは、個人情報の保護に関する法律、神奈川県情報公開条例等及び警察情報セキュリティポリシー、神奈川県警察行政文書管理規程(昭和57年神奈川県警察本部訓令第12号)その他関係規程に基づき適切に取り扱うものとする。 9 報告  (1) 警察庁への報告   ア ウェアラブルカメラの活用結果の報告     本部運用管理者は、モデル事業を実施した雑踏警備の実施日から2週間以内に、別記様式2により、ウェアラブルカメラの活用結果を警察庁に報告する。   イ 7に基づく映像データの保存・提供件数の報告     本部運用管理者は、半年ごとに、7に基づく映像データの保存・提供件数について、別記様式3により、警察庁に報告する。  (2) 警察本部長及び公安委員会への報告   ア 警察本部長への報告     総括運用管理者は、ウェアラブルカメラの活用状況及び映像データの保存・提供件数について、四半期ごとに、警察本部長に報告する。   イ 公安委員会への報告     総括運用管理者は、ウェアラブルカメラの活用状況及び映像データの保存・提供件数について、半年ごとに、公安委員会に報告するとともに、ウェブサイトにおいて公表するものとする。