産学官連携によるAIを活用した犯罪・交通事故発生の予測・分析に関する調査研究について



調査研究の目的

神奈川県内の治安状況を見ると、刑法犯認知件数は減少傾向で推移しているものの、特殊詐欺の被害は高止まりの状態が続いているほか、子供や女性が被害者となる犯罪が後を絶たないなど、県民の体感治安が十分に改善されたと言える状況ではない。

神奈川県警察においては、このような情勢を踏まえ、各種警察活動の効率を高め、県民の体感治安を悪化させている犯罪や交通事故を抑止することを目的に、産学官連携のもと、AIを活用した犯罪・交通事故発生の予測・分析に関する調査研究を行うこととした。

調査研究委員会

調査研究に当たっては、犯罪学等が専門である拓殖大学政経学部守山正教授を座長とする6人の学識経験者からなる調査研究委員会を設置し、それぞれが持つ専門的な知見を生かして、精度向上のための方策、学術的な裏付け等について意見をもらった。

調査研究の概要

調査研究の概要は、以下のとおりである。

  • 神奈川県内の犯罪情勢については、特殊詐欺等、深刻な状況にあるものも見られるが、刑法犯認知件数がピーク時の平成14年と比べると約4分の1にまで減少している。しかしながら、過去に行われた世論調査において、強い犯罪不安感が示されるなど体感治安と指数治安が乖離しており、単に犯罪の発生を減らすだけではなく、その周辺行為の問題性にもアプローチし、さらには、物理的無秩序をも改善しなければ、体感治安の向上は望めない。
  • 現在、神奈川県警察においては、犯罪抑止対策として、事件情報を統計学的分析等により見える化する「神奈川版コムスタット」の導入、キャラクター活用による特殊詐欺対策等に取り組んでいる。また、交通事故抑止対策として、通学路の見守り活動の実施等による高齢者と子供の事故防止対策、事業所に対する二輪車安全運転講習等による二輪車事故防止対策、自転車に対する交通指導取締りの実施等による自転車事故防止対策、横断歩行者保護対策強化日の新設等による横断歩行者保護対策等に取り組んでいる。
  • 犯罪予測の定義は必ずしも定まっていないものの、エビデンスに基づく科学的な犯罪分析に根ざす犯罪予測事業を推進することにより、犯罪を未然に防止することは、治安対策に関して多大な効果をもたらすことが可能となると考えられる。具体的には、ホットスポット分析、反復被害分析及びリスク地勢モデリング(RTM)という代表的な犯罪分析・犯罪予測の学説・技法があり、諸外国においてはホットスポット分析を防犯パトロールに活用した研究事例等がある。
  • 人工知能(AI)のアルゴリズムについては、人工知能といえないレベルの単純なアルゴリズムからディープラーニングまで幅広いものの、犯罪情勢分析の高度化、人口減少時代への対応及びワークライフバランスの推進のために人工知能等の技術活用が期待され、アメリカやイギリスにおいて活用例がある。一方、こうした技術の活用に当たっては、個人情報の保護や住民のプライバシーへの配慮が必要となる。
  • 犯罪・交通事故の発生に関する実証実験を行った結果を踏まえると、人工知能が重視した特徴量を確認することにより、大量のデータの中から、今まで人間が考えもしなかった相関関係を示唆してくれるということは、問題解決型警察活動のプロセスにおいても、適切かつ有効に活用することで大きく役立つものとなり得ること、人工知能は、相関関係を探し出すことが得意である反面、その因果関係を見出すことはできないという弱点があるため、人工知能が重視した特徴量について、犯罪や交通事故の発生に因果関係があるのか、それともいわゆる「疑似相関」の関係に過ぎないのかは、最終的には人間が判断する必要があること等が考察される。
  • 今後の方向性として、「神奈川版コムスタット」の強化に向けたシステムの提案等がなされたが、システム開発等に当たっては、住民への情報提供・注意喚起に関しては、情報の提供の有無・方法、内容、単位等について、地域のニーズも含めて慎重に考える必要があること、システムに対する現場の警察官の信頼を獲得する必要があること、個人情報等について各種法令に従った厳格な取扱いが求められること等の課題についても検討する必要がある。

今後の対応

神奈川県警察においては、上記「調査研究の概要」を踏まえつつ、先端技術を活用した犯罪情勢分析の取組が、治安対策の一助となるよう、検討を進めていく。

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