インターネット利用にかかわるトラブルなどの防止 −中・高校生によるサイバー防犯ボランティア活動―神奈川県警察本部サイバー犯罪捜査課  スマートフォンなどを使用して日常的にインターネットを利用する児童・生徒が多くなる中、サイバー犯罪等に巻き込まれる事案、スマートフォンで撮影した不適切な写真や動画の投稿によるトラブル、SNSを利用したネットいじめなどの問題は後を絶ちません。  こうした問題は、利用する機器やサービスの変化とともに複雑化していることから、児童・生徒への情報モラルの指導はますます重要になってくるものと考えております。  そのため県警察では、警察職員による広報啓発活動のほか、サイバー防犯ボランティア活動の支援に取り組んでいます。 【サイバー防犯ボランティア活動とは?】  サイバー防犯ボランティア活動とは、「自分達の利用するインターネットの安全は自分達で守る」というコンセプトの基、安全で安心して利用できるサイバー空間を作るため、「サイバー空間の浄化活動」、「被害防止のための教育活動」、「サイバー犯罪等に関する広報啓発活動」を行う自主的な防犯活動です。  県内では約800人(令和3年4月現在)の方々がサイバー防犯ボランティアとして活動しており、社会人や大学生のみならず、中・高校生が小・中学生を対象としたサイバー教室(被害防止のための教育活動)や県警察のイベントなどでの広報 啓発活動を行っています。 【中・高校生による具体的な取組事例】 ○中学校でのサイバー防犯ボランティア活動の事例  県央地区にある中学校では、生徒会本部役員等の生徒達がインターネットの正しい使い方を自ら学び、学区内の小学校でサイバー教室を行うなどのサイバー防犯ボランティア活動に取り組んでいます。  活動を開始するに当たり、県警察では、サイバー犯罪等の現状やインターネット利用者の心構えなどを学んでもらうために「かながわサイバーポリスサポーター養成講座」を実施しました。  その後、ボランティアの生徒達は、後輩である同校1年生向けサイバー教室と学区内の小学校でのサイバー教室を実施しました。  生徒達は夏休みなどを利用して実施内容の検討と練習を繰り返し、実際に起きた犯罪やトラブル事例、養成講座で学んだインターネット利用者の心構えなどについて、寸劇やクイズを交えながら分かりやすく伝えており、受講した1年生は先輩達の話に真剣に耳を傾け、小学生たちは身近なお兄さん、お姉さんたちの話を興味深く聞いていました。  その後、生徒を指導する先生方の発案で、ボランティア活動の紹介も含め、翌年の新入生保護者説明会においてもサイバー教室を実施しました。  自分のお子さんを通わせる中学校の生徒達からインターネット、スマートフォンにかかわる犯罪やトラブルの事例を聞くことで、保護者の方には他人事ではない問題と捉えていただけたのではないかと思います。  この一連の活動は、当初、小・中学校連携事業の一環として中学生が小学生を対象にサイバー教室を行うというものでしたが、下級生への指導や保護者への啓発活動等にも広がりを見せたほか、生徒自身がインターネットを正しく使うためには何が大切で、それをどのように伝えるかを真剣に考えるなど、自ら学び、考え、行動する機会にもなりました。  現在、この学校では生徒会本部以外の生徒が活動に加わるようになっており、近隣の中学校でも同様の活動が検討されるなど、裾野が広がりつつあります。 ○高校生サイバー防犯ボランティアの活動の事例  県央地区にある中高一貫校では、有志の生徒達がサイバー防犯ボランティアとして、新入生保護者説明会や学校内外での生徒向けサイバー教室、県警察のイベントへの参加、文化祭における広報啓発活動等を行っています。  こうした中、ボランティアの生徒達が実施した同校の教職員を対象としたS N S 教室では、同校生徒への事前アンケートや他校の生徒からの情報を活用し、中・高校生のSNSの使い方や実際に起きたトラブルなどを基に、先生方にグループワークを行ってもらい、先生方の意見と、事前アンケートの同校生徒らの意見を対比させるなど、工夫を凝らした内容となっており、先生方のSNSに関する理解を深める機会となっただけでなく、先生方が把握しづらい細かなトラブルをボランティアの生徒達が把握できている様子もうかがえました。 【中・高校生のサイバー防犯ボランティア活動に期待される効果】 中・高校生がサイバー防犯ボランティア活動に取り組むことで、次のような効果が期待できます。 ○親近感を持てる効果的な指導への活用  大人による指導はどこか他人事のように捉えがちですが、年齢の近いサイバー防犯ボランティアの生徒からの話は、双方の間にデジタルデバイド(情報格差)も少なく、自らの体験に基づく説得力のある内容となり、教わる側が身近な問題として捉えやすくなるため、効果的な指導につながることが期待できます。 ○活動する生徒達の能力向上  後輩達を指導するためには、自分自身が学ぶ必要があるため、活動する生徒達の情報モラルやサイバー犯罪の被害防止の強化につながることが期待できます。  県警察では、活動に必要な知識や技能を習得するための講習を開催するなどの支援を行っています。 ○周りの生徒への好影響  ボランティアの生徒達が、日頃からインターネットやスマートフォンを正しく使うことを心掛けていくことで、周りに手本を示すことができることから、同級生や後輩達によい影響を与えることが期待できます。 ○生徒達と先生方とのパイプ役  ボランティアの生徒達が同級生や下級生の困りごとなどを把握して先生方に伝えることにより、先生方が早い段階で気付けるようになることが期待できます。  また、学校内でスマートフォンなどに関するルール作りを行う際にも、生徒達と先生方とのパイプ役となることが期待できます。  児童・生徒のインターネット利用にかかわるサイバー犯罪やトラブルが多くなる中、これらを未然に防止するために、サイバー犯罪等の知識を身に付けた中・高校生のサイバー防犯ボランティア活動が、県内各地の学校に広がっていくことを期待したいと思います。 サイバー防犯ボランティア活動についてのお問い合せは、神奈川県警察サイバー犯罪捜査課対策係サイバー防犯ボランティア担当まで 電話045(211)1212(代表)