神奈川県警察交番等整備基本計画 平成31年3月 (令和6年3月一部更新) 神奈川県警察本部 目次 1 計画の目的・・・・・1 2 計画の期間・・・・・1 3 交番等の設置基準・・・・・1 4 現状と課題・・・・・1  (1) 交番等の役割  (2) 交番等施設   ア 老朽化   イ 狭あい化  (3) 交番等における勤務状況等   ア 勤務形態   イ 交番勤務員数の現状   ウ 交番等勤務員の増員   エ 複数人による勤務の必要性 5 計画の方向性・・・・・3  (1) 複数勤務体制による対処能力の向上  (2) 交番新設時における交番総数増加の抑制  (3) 交番等の適正配置による施設の統合及び建て替えの促進  (4) 治安情勢の維持・向上 6 具体的取組・・・・・4  (1) 交番等施設数 (2) 交番等の必要性に係る考え方  (3) 交番等の建て替え等促進  (4) 交番等の維持管理  (5) 交番等統合時の措置 7 地域住民等の理解促進・・・・・5 神奈川県警察交番等整備基本計画 1 計画の目的   この計画は、交番、駐在所及び警備派出所(以下「交番等」といいます。)を対象に、県内全域の交番等を計画的かつ適正に配置することで、交番等で取り扱う事件・事故等への対応力を向上させつつ、安全・安心のよりどころとなる交番等を持続的に機能させていくことを目的とします。   あわせて、平成29年3月に策定された「神奈川県公共施設等総合管理計画」に基づく警察関連施設の計画のうち、交番等整備に係る個別施設計画の基本方針として位置付けることとします。 2 計画の期間   この計画の取組期間は、令和2年度から令和11年度までの10年間とし、取組の進捗状況を毎年度検証し、必要に応じて見直すこととします。 3 交番等の設置基準   地域警察運営規則(昭和44年国家公安委員会規則第5号。以下「運営規則」といいます。)第15条及び第27条に、交番等設置の基準が規定されています。   神奈川県警察においては、これを基準とし、地域環境や治安情勢、犯罪や交通事故の発生状況、行政区画、面積、人口の実態、都市の形態、道路や鉄道の整備状況、警察署や隣接する交番等との位置関係、交番等用地の確保状況、配置に必要な警察官の数等を総合的に検討し、地域の安全を確保する上で必要であると判断される場所について、交番等を設置しています。   地域警察運営規則    第2章 交番及び駐在所      (設置)     第15条 交番又は駐在所は、昼夜の人口、世帯数、面積、行政区画及び事件又は事故の発生の状況等の治安情勢に応じ、警察署の管轄区域を分けて定める所管区ごとに置くものとする。     2 交番は原則として都市部の地域に、駐在所は原則として都市部以外の地域に設けるものとする。    第4章 警備派出所、検問所及び直轄警ら隊      (警備派出所)     第27条 警備派出所は、繁華街、空港その他特殊な警察対象のある地域において特に必要がある場合に、所管区ごとに置かれる交番又は駐在所と別に設けるものとする。 4 現状と課題  (1) 交番等の役割    交番等は、落とし物や各種相談等の届出を受理する場所であるとともに、事件・事故等にいち早く対応すべく警察官が待機する拠点でもあり、日本の良好な治安を維持するための施設の一つです。    一方で、携帯電話の普及や24時間営業店舗の増加、防犯カメラの整備等、生活環境が変化しており、また、都市開発や交通網の整備に伴い、交番等の設置場所や配置人員等について、見直しの必要性が生じています。  (2) 交番等施設    県警察では、老朽化した交番等の建て替えを行ってきたほか、治安情勢や県民ニーズに的確に対応し、警察力の効率的かつ一体的な運用を目的として、交番等の統合や新設を進め、平成15年当時に631か所あった交番等(交番486か所、駐在所143か所、警備派出所2か所)は、平成30年4月1日時点、610か所(交番472か所、駐在所137か所、警備派出所1か所)となっており、その後、本計画を推進した結果、令和5年4月1日現在、580か所(交番443か所、駐在所136か所、警備派出所1か所)となっています。    しかしながら、次のとおり多くの交番等で老朽化や狭あい化の課題を抱えており、利用者にとって良好な利用環境とは言い難く、また、勤務員にとっても厳しい勤務環境にありますが、年に2~3か所しか建て替えが進んでいない状況から、計画的に建て替え、改修等をしていく必要があります。   ア 老朽化     建築後40年を経過している交番等は110か所(18.0%)、30年を経過している交番等は276か所(45.2%)となっていますが、令和6年1月1日現在、建築後40年を経過している交番等は187か所(32.3%)、30年を経過している交番等は305か所(52.7%)となっております。     交番等の構造は、鉄筋コンクリート造、コンクリートブロック造、鉄骨造、軽量鉄骨造及び木造と様々であり、減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和40年大蔵省令第15号)を基準とした耐用年数を超過している交番等は81か所(13.3%)となっていますが、令和6年1月1日現在では、121か所(20.9%)になっております。     特に、昭和56年の建築基準法(昭和25年法律第201号)改正以前の旧耐震基準施設や木造、コンクリートブロック造等もともとの耐用年数が短く、既に耐用年数を経過した交番等施設については、地震のほか、大規模風水害等の発生時には倒壊し、防災活動の拠点となるべき交番等が機能しなくなるおそれもあります。   イ 狭あい化     交番等設置時には想定されていなかった警察事象に対応するための、資機材の増強配備や交番用端末等の設置により施設が狭あい化している状況にあります。     また、女性警察官の職域拡大による女性専用の休憩室やトイレの整備のほか、交番等襲撃事案発生時における勤務員の安全確保方策が求められています。  (3) 交番等における勤務状況等   ア 勤務形態    (ア)交番      交番勤務員は、三交替制(24時間の当番勤務(以下「当務」といいます。)、非番、日勤を繰り返す勤務)により、昼夜を問わず勤務しています。    (イ)駐在所      駐在所勤務員は、原則として、当該駐在所に居住して、駐在制(主に日勤。情勢に応じ夜間帯も勤務。)による勤務を行っています。   イ 交番勤務員数の現状     交番は、運営規則上、一つの交番に原則として1当務3人以上の勤務員(三交替制のため、一つの交番9人以上)が勤務することとされています。     しかしながら、現状の交番勤務員の定数及び交番施設数を前提とすると、全ての交番で1当務3人以上配置することは不可能であり、さらに、業務負担が高い交番へのマンパワーシフト等が他交番の勤務員配置に影響を及ぼし、1当務1人で勤務することを前提とした定数配置の交番が多数あります。   地域警察運営規則    第2章 交番及び駐在所      (配置人員等)     第16条 交番は、原則として1当務3人以上の交替制の地域警察官により運用するものとする。   ウ 交番等勤務員の増員     治安情勢に的確に対応するため、本県警察においては、この20年間で2,000人を超える警察官が増員され、交番勤務員の増員も図ってきたところです。     しかしながら、警察業務も時代とともに変化しており、増加の一途を辿るストーカー事案や児童虐待、DV事案等への対処、オレオレ詐欺を始めとした特殊詐欺の抑止・検挙対策、インターネット社会の進展に伴うサイバー空間における脅威等の治安を揺るがす新たな脅威への対応など、従来の犯罪対策とは異なる対策を求められており、街頭活動を主として行う交番等勤務員に特化して増員を図ることは、困難な状況にあります。   エ 複数人による勤務の必要性     平成30年に富山県や宮城県で交番勤務の警察官を対象とした殺人事件が連続発生した状況に鑑みると、訓練を重ねた警察官であっても、危害を加えようとする強固な意思を持った者に単独で対処するには限界もあることを踏まえれば、警察官の受傷を防止する観点からも、可能な限り複数人による運用としていく必要性が認められます。 5 計画の方向性  「4 現状と課題」を踏まえ、今後の交番等の整備は次の方向性で進めます。  (1) 複数勤務体制による対処能力の向上    地域住民の方々と直に接する交番勤務員自体の総数は減らすことなく、交番等を計画的に整備して複数勤務体制を確立することで、各種活動を充実させるとともに、事件・事故等への実質的対処能力を向上させることとします。  (2) 交番新設時における交番総数増加の抑制    交番等新設要望地区への新設や都市開発、人口集中等に対応する場合であっても、県内全体では交番総数は増加させず、近隣交番の移転や統合などにより対応していくこととします。  (3) 交番等の適正配置による施設の統合及び建て替えの促進    人口動態のほか、事件・事故等の発生状況、110番受理時の警察官到着時間(以下「リスポンスタイム」といいます。)等の客観的必要性に鑑みて交番等を設置し、又は維持していくこととして、施設の統合を進めるとともに、建て替えを加速させ、持続可能な施設運営を行うこととします。  (4) 治安情勢の維持・向上    交番等の統合を進めるに当たっては、地理的要素を踏まえ、一定のリスポンスタイムを確保できる交番等の配置を担保した上で、事件・事故等の発生状況に応じて、拠点となる交番に警ら用無線自動車等を配置するなど、現在の治安情勢の維持、向上に努めます。 6 具体的取組   「5 計画の方向性」を実現していくため、以下のような具体的な取組を進めていきます。  (1) 交番等施設数    交番については、県内の治安情勢、地理的特徴などを踏まえつつも、現在の交番勤務員を効果的に運用し、県民の期待に応える活動を可能とするため、1当務の勤務員を複数人配置することとし、交番施設数は、県内全体でおおむね400か所とします。    駐在所については、山間部等警察署から離れた場所に所在していることが多く、また、交番以上に地域に密着している特性上積極的な統合はせず、老朽化等により建て替えを検討する際に、建て替えのほか、隣接交番又は駐在所との統合や交番への転換も検討することとします。  (2) 交番等の必要性に係る考え方    交番等の統合、建て替え、新設及び公共工事等による移転(以下「建て替え等」といいます。)を要する場合には、次の事項について総合的に検討を図った上で、必要性を判断します。   ア 事件・事故等の発生状況   イ 各種届出等の来訪者の多寡   ウ 駅、繁華街、幹線道路があるなどの地域環境   エ 人口急増や大規模集客施設の建設が予想されるなどの地域情勢   オ 事件・事故等発生時におけるリスポンスタイム(他の警察施設との距離)   カ 施設の老朽・狭あい度合い   キ 地域住民の自治会等の活動区域  (3) 交番等の建て替え等促進    交番等の建て替え等については、持続可能な施設運営を行うことを前提として、当面は、年間10か所程度ずつ推進することを目標とします。    また、交番等の建て替え等の際には、従来型の交番等にこだわることなく、次のとおりコスト面を考慮した柔軟な手法を検討していきます。   ア 自動車警ら隊等の庁舎に併設するなど警察庁舎の多機能化の促進   イ 立地に鑑みた機能重視の建て替え等(警ら用無線自動車の駐留施設の設置等施設の大型化、狭あい地における施設のスリム化、3階建て等)   ウ 他の公共施設等の一部を交番等とするビルトイン方式   エ 長寿命化を見据えた建設手法の導入  (4) 交番等の維持管理    交番等の施設の点検を定期的に行い、ひび割れや雨漏り等不具合が発生する前に予防的改修を計画的に行い、予算の平準化とともに施設の長寿命化を図り、トータルコストの縮減を目指します。  (5) 交番等統合時の措置   ア 段階的な統合     統合される交番等については、統合先の交番等にその機能を吸収することになりますが、治安情勢の変化等に鑑み、統合に当たっては、一定の期間、日勤制交番や連絡所として運用することも検討します。   イ 交番等勤務員の維持     交番等を統合しても、これを理由に交番等勤務員の数を削減せず、地域の治安維持、向上に努めます。   ウ 統合後の治安対策     交番等統合後の治安対策として、統合エリアをカバーすることが可能な警察機能を付加(統合される交番等の管轄区域の重点的な警ら活動等)を検討します。     また、地域住民の方々の安全・安心を高めるための効果的な手法(アクティブ交番の活用等)についても検証を進めていきます。 7 地域住民等の理解促進   交番等の整備を推進するには、地域住民の方々の理解と協力が不可欠です。県警察の現状や統合の必要性等を地域の実情に沿って丁寧に説明していきます。   また、地域の安全・安心を守るのは警察の責務であり、交番等が統合されても治安維持に尽力し、地域住民の協力を得ながら、安全で安心して暮らせる地域社会の実現に向けて全力で取り組んでいきます。